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(回答先: <8・15社説から>「戦後レジームからの脱却」を批判し憲法9条の理念にもとづく戦後価値観を称揚する地方紙A(神戸新聞) 投稿者 gataro 日時 2007 年 8 月 19 日 10:36:53)
http://www.shinmai.co.jp/news/20070815/KT070814ETI090003000022.htm から転載。
終戦の日 「戦後」の意味を問い直そう
8月15日(水)
「終戦の日」が今年もめぐってきた。
「戦後」とは何なのか−。62回目の今年はこの問いがこれまでにまして、切実な形で私たちに突き付けられている。
その理由は、安倍晋三首相の言動にある。首相は「憲法を頂点とする戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げて、参院選に臨んだ。そして大敗した。
それなのに「基本路線は多くの国民の理解をいただいている」と言い張る。メールマガジンでは「私が進めつつある改革の方向性が、今回の結果によって否定されたとは思えないのです」とも言う。
「戦後レジームからの脱却」路線をこれからも突き進む−。そんな意思表示とも読み取れる。
こういうとき大事になるのが、国民一人一人の姿勢である。おびただしい犠牲と引き換えに、われわれは何を得たか、そして守ってきたのか。「戦後」の意味をあらためて問い直しつつ、政治に向き合いたい。
<62年を重ねて>
あの戦争が終わって62年が過ぎた。「戦後レジーム」は62年間、続いてきたことになる。
日本の近現代史の中で、この62年間は国民にとり、全体としては「いい時代」だった。そのことをまず、確認したい。
戦前、戦中と違って、政府の方針と反対のことを言っても構わない。信教の自由は保障されている。憲法の三原則、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重は、実態面では不十分さを残しながら、考え方としては社会に定着している。
自衛隊は海外で一度も武力行使していない。したがって、戦後日本に戦死者は一人もいない。若者が徴兵を心配することもない。
こうした社会のレールを敷いたのは憲法だ。歴代の政権は大筋では憲法の定めるところに沿って、政治をかじ取りしてきた。「吉田ドクトリン」とも言われる軽武装、経済重視の路線が代表的だ。
この路線を修正しようとする政治家もいた。安倍首相の祖父、故岸信介氏はその一人である。岸氏が目指したのは、九条だけでなく、天皇を元首にし、労働者の団結権や言論・出版の自由も見直す復古色の濃い改憲だった。
その岸氏について首相は「国の将来をどうすべきか、そればかり考えていた真摯(しんし)な政治家」と著書で書いている。
<「脱却」するものなのか>
安倍首相がいうように、戦後体制は「脱却」すべきものなのか。日本人が戦後、憲法を踏まえて営々重ねてきた取り組みは、否定されるべきなのか。
そうではあるまい。一人の戦死者も出さず、豊かさを享受している日本人の今のこの暮らしが、そのことを証明している。
「武力による威嚇または武力の行使」を慎め。国連憲章は加盟国に対しそう命じている。世界人権宣言(1948年)は「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」とうたう。
戦後日本の歩みは、戦争をなくし、人間一人一人の権利が尊重される世の中をつくろうという世界の人々の願いを踏まえている。日本の憲法は決して、世界の常識から外れた“変わり者”の憲法ではない。憲法が制定され、日本社会に定着していったプロセスをたどれば、「押しつけ憲法」との見方は一面的すぎることも分かる。
日本の戦後レジームは、第2次大戦後の世界システムと一体のものである。日本は戦後世界システムから、最も多くの恩恵を受け取ってきた国の一つだ。
そうした中で、日本の首相が「戦後レジームからの脱却」を唱える。世界の人々から見れば、何とも理解しにくいことだろう。
首相は、憲法の三原則は順守することを繰り返し表明してはいる。だが、憲法順守と戦後レジームへの懐疑的まなざしがどう両立し得るのか、分かりにくい。
首相が唱える脱却論は、ひとつ間違えば、戦前回帰の危険な動きと受け取られかねない。
<やり残したこと>
日本を破滅に導いた戦前、戦中の超国家主義体制を批判し続けた政治学者丸山真男は、1964年、著書「現代政治の思想と行動」でこう述べている。
「私自身の選択についていうならば、大日本帝国の『実在』よりも戦後民主主義の『虚妄』の方に賭ける」。戦後民主主義を「占領民主主義」などと攻撃し「虚妄」とおとしめる、一部論者への反論である。
「戦後」を否定しようとする政治家は安倍首相のほかにもいる。〈この憲法ある限り 無条件降伏続くなり〉とうたう「憲法改正の歌」を作った中曽根康弘元首相も、その一人に数えていいだろう。
戦争責任の明確化をはじめ、私たちは多くをやり残してきたと考えざるを得ない。日本社会はまだ、あの戦争を清算し切れていない。
「戦後」とは何か、あの戦争は何だったのか−。この問題に引き続き、真剣に向き合い続けたい。
それは、戦後民主主義を時代に合わせて強化し、新たな力を吹き込む作業になるはずだ。
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