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漂流世論<上> 国民軽視 反発招く 首相はなぜ支持を失ったのか
【東京新聞】2007年8月14日 紙面から
七月二十九日の参院選は日本の政治風景を大きく変えた。このドラマの主役は、民主党の小沢一郎代表ではなく、ましてや安倍晋三首相でもない。一票を投じた国民だ。有権者は、二年前の「郵政選挙」では小泉自民党を圧勝に導き、今回は安倍自民党を突き放した。漂流しているようにみえる世論の底流には、何があるのだろうか。参院選から半月たった今、あらためてその心理を掘り下げてみる。
昨年九月、70%近い内閣支持率で華々しくスタートした安倍政権。それが今は各種世論調査で軒並み20%台まで落ち込んでしまった。参院選に与えた影響も小さくない。
本紙がインターネットで募集した五百人のモニターを対象にした調査によると、参院選で投票の決め手となったのは「首相や党首の資質、能力」がトップで23%あった。「政治とカネ」(19%)、「年金問題」(16%)、「閣僚の一連の失言」(16%)よりも「党首力」が重視されたことは、安倍首相への不安、不満が自民党惨敗の最大の要因と考えてよさそうだ。
漂流する民意の分析は、十カ月足らずで首相はなぜ国民に見放されたのか、から始めてみたい。
内閣発足時は「ご祝儀相場」で支持率が高めに出て、二、三カ月すると下降カーブを描き始めるのは、どの政権でも同じだ。しかし、安倍内閣のように一気に転げ落ちるのは珍しい。
特に、支持率が下降しても何度も持ち直し、50%前後を維持した小泉内閣との違いは際立っている。六割近い支持を得てスタートしながら最後は「消費税率並み」の支持まで落ちた竹下内閣の曲線に似てはいるが、竹下内閣は発足から退陣まで約一年半を要している。その約半分の期間に同じような曲線を描いたのは、やはり前代未聞だ。
田中愛治・早稲田大教授は、安倍政権の性格そのものに問題があったと指摘する。昨年、盤石な党内の支持を得て成立した安倍政権は、党への気配りさえしっかりしていれば長期政権が可能だとみられていた。その結果「知らず知らずのうちに国民に目を向けない内閣になってしまった」というのが田中教授の分析だ。
党内基盤が弱いため、国民に目を向けるしかなかった小泉純一郎前首相とは正反対だ。その小泉氏のもとで行われた二〇〇五年衆院選での自民党圧勝が、安倍政権の基盤を強くし、安倍首相が国民を軽視する遠因になったとすれば皮肉な話だ。
シンクタンク「政策過程研究機構(PPI)」が参院選期間中、二十代、三十代を対象に行った意識調査によると「現在の首相に欠けている資質、能力は」との質問に対し、「言動の一貫性」「話の分かりやすさ」が突出して高かった。
年金記録不備や、閣僚が絡んだ一連の「政治とカネ」の問題に対して、安倍首相が国民への説明責任を果たしてこなかったことへの不満がここからも感じ取れる。問題が生じるたびに、国民は首相の「一貫性のなさ」「話の分かりにくさ」にいらだちを覚え、それが参院選での「反乱」につながっていったのだろう。
蒲島郁夫・東京大教授は、さらに「安倍首相の憲法改正、集団的自衛権の容認などの前のめり姿勢が、これまで自民党を支持してきた戦争を経験した世代に危うく映った」と指摘。首相が掲げる「美しい国」や「戦後レジームからの脱却」路線が、旧来の自民党支持層からも違和感を持たれたとみる。この見方が正しいとすると、安倍首相は就任時に政権構想を示した時点で、既に支持を失う布石を自ら打ってしまっていたことになる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007081402040831.html
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