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(回答先: 「まともな裁判官に出会うまで闘う」西山太吉氏 記者会見(ビデオニュース・ドットコム) 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 3 月 28 日 10:50:18)
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200703281300_02.html
【東京】「想定していた中で、一番イージーな判決だ」―。二十七日の沖縄返還交渉をめぐる「密約訴訟」の判決で、東京地裁は密約の有無を判断せず、政府高官の「密約否定発言」の違法性も退けた。政府の外交姿勢を厳しく批判してきた元毎日新聞記者の西山太吉さん(75)は怒りと落胆をあらわにした。主文朗読から閉廷までの所要はわずか十秒ほど。司法は沖縄返還時の日米交渉に横たわる「闇」から目を背けた。「結論ありき。司法の自殺行為のような判断だ」。西山さんは控訴審で真実の追求を続ける。
午後二時すぎに東京地裁内の司法記者クラブで始まった記者会見。西山さんは上下グレーのスーツ姿で現れた。
「司法が日本にないことを証明するような判決だ」。両目をつり上げ、鋭い眼光で心境を語った。口調は落ち着いていたが、時折唇を震わせ、目を潤ませる場面もあった。
約二年の法廷闘争。西山さんは約八十の証拠を提出、検察官や政府高官らに二十四の違法行為があったと指摘した。しかし、地裁は二十年で損害賠償の請求権が消滅する「除斥期間」を盾に、密約の有無の判断を避けた。
西山さんは支援者との集会で「除斥期間という武器で何でも抹殺できる」と無念さを強調。「これが国家機密裁判だ」とこぶしで机をたたいた。
昨年二月には、沖縄返還交渉を担当した元外務省アメリカ局長の吉野文六さん(88)が密約の事実を明らかにした。
風向きが変わるかに思えたが、西山さんは「吉野証言で、裁判所のガードがさらに固くなった」と法廷で逆風に働いた面があったと明らかにした。返還交渉を知り尽くすキーマンの証言を突きつけても、動かぬ厚い壁。
「提訴からの二年が無に帰したとは思わない。これからも闘い、訴え続けることに意味がある」。権力に屈せぬ“ジャーナリスト”は、上級審で再び政府と対峙する。
◇ ◇ ◇
メディア姿勢に批判
沖縄返還密約訴訟が問うたのは、歴史の真相だけではなかった。次々に要求を突き付ける米国。対等な交渉ができない日本。何も知らされない沖縄がそのはざまで翻弄され、基地が固定化される構図は、今も変わらない。強権と懐柔策を巧みに使い分ける権力に、メディアはどう対峙してきたか。三十五年前の課題は、未解決のまま積み残されている。(社会部・阿部岳、安里真己)
権力側の学習
日本のジャーナリズムが権力に抵抗できなくなり、今日に至る重大な転換点。一九七二年の事件当時、週刊誌記者だった亀井淳さんはこう見る。「西山事件は『沖縄のことには目をつぶっていろ』というメッセージ。それは今も生きている」
むしろ事態は深刻さを増している。「メディアは退廃を深め、今回の訴訟でも大手の対応は鈍い。沖縄の基地の現状も東京からは目隠しされて、見えない」と話す。
雑誌「噂の眞相」元編集長の岡留安則さん。「事件当時は検察がゴシップに世論を誘導したが、今は誘導しなくてもメディアが勝手に権力寄りの情報を垂れ流している」と批判する。米軍再編でも「政府が言うまま報道され、再編そのものへの批判的論調がない」と、いら立ちを隠さない。
西山太吉さんをドキュメンタリー番組で初めて取り上げたジャーナリストの土江真樹子さんは、「権力はこの間非常に良く学び、対策を取ってきた」と見る。
新聞記者に情報を漏らした疑いで自衛官が強制捜査された事件を挙げ、「政府はすぐに『知る権利の問題ではない』と打ち消した。一方のメディアは、本質と違う方向に流される傾向が変わっていない」と嘆く。
今回の裁判を「西山さん個人の問題ではなく、沖縄、メディアの問題。皆が当事者と感じてほしい」と話した。
問題は「外見」
「先生、日本は戦争に負けたんですよ。限度があります」。毅然とした対米交渉を求める元衆院議員、上原康助さんの居室で、外務省高官はよくこう口にしたという。
「米国は密約で、表面だけを繕う外務省の体質を知った。再編でグアム移転費用を再び日本に負担させるのも、当然の成り行きだった」。上原さんは「米国は高笑いしている」と悔しがる。
七二年の国会で暴露された外務省の極秘電信文にあった「問題は実質ではなくアピアランス(外見)である」との一文は象徴的だ。SACO合意を究明する県民会議の真喜志好一さんは、「復帰のうたい文句だった『核抜き本土並み』も米軍再編の『負担軽減』も、まさに同じ見せかけだ」と憤る。
米軍が六〇年代に作成した名護市辺野古沿岸の基地建設計画を発掘。現在の普天間代替施設案との類似点を挙げ、「いずれ実現するという日米密約があったのではないか」と指摘している。「後で密約の存在を知って悔しがっても遅い。真相を探り、計画を止めたい。それが西山さんのかたき討ちにもなる」と語った。
口つぐむ司法・田島泰彦
国民の権利擁護 果たさず
今回の判決は、沖縄返還交渉の密約についてまったく議論しないまま、除斥期間という形式的なレベルにとどめてしまい、中身に対する司法判断が下されなかった。極めて残念な判決だ。
近年、密約の事実を示す米国の公文書が二度にわたり公開された。また、沖縄返還交渉当時の日本政府事務方の最高責任者だった外務省の吉野文六・元アメリカ局長が、勇気をもって密約の存在を認めた。にもかかわらず、裁判の前提である日米間の密約という重大な疑惑について、正面から判断がなされることはなかった。本丸に到達することなく、入り口で終わってしまった。
密約を報じた西山太吉氏は国家公務員法違反で起訴され、高裁、最高裁で有罪とされたが、その有罪を支える根拠は正当だったのか。密約の事実があったとすれば、それ自体が憲法違反であり、西山氏を有罪とする根拠そのものがなくなるが、極めて重要なその事実が裁判を通して明らかにされることはなかった。
沖縄返還協定に反する密約があったとなると、政府は国会や国民を欺いたことになる。重大な憲法違反行為であり、きちんと正さなければいけないが、国民の権利擁護の役割を果たすべき司法は、口をつぐんでしまった。現在の司法の暗い現実の一端が表れている。このままでいいのか、あらためて問わずにいられない。
西山氏の当初の事件を通し、国民の「知る権利」への関心が高まり、その後の情報公開の仕組みにもつながった。しかし、その「知る権利」は十分に生かされているだろうか。沖縄が現在直面している問題を見ても、米軍再編について膨大な国費が使われる根拠を含め、十分な説明はなされていない。
また、裁判を通してこの国のメディアの状況をみると、一部のメディアは吉野証言を引き出すなどの成果があったが、全体としてみると、果たして密約の真相を厳しく追及できたか。事実に迫りきれていたか。課題は残されている。(談)(上智大学教授、「沖縄密約訴訟を考える会」世話人)
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