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なぜ「事実」に触れない―「沖縄タイムス」社説
http://www.asyura2.com/07/senkyo32/msg/667.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 3 月 28 日 18:06:43: 2nLReFHhGZ7P6
 

(回答先: 知る権利、門前払い;解説―「沖縄タイムス」 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 3 月 28 日 17:57:41)

http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20070328.html#no_1

社説(2007年3月28日朝刊)

[沖縄返還密約訴訟]

 なぜ「事実」に触れない


司法も責任を放棄するのか


 沖縄返還交渉の取材をめぐり国家公務員法違反(秘密漏えいの教唆)罪に問われた元毎日新聞記者・西山太吉氏(75)が、新たな証言などを提出して国に謝罪と慰謝料を求めた訴訟で東京地裁(加藤謙一裁判長)は原告の訴えを棄却した。

 判決は「除斥(時効)期間の経緯により(西山氏の)請求権が消滅した」と判定。米公文書や当時の吉野文六外務省アメリカ局長の証言で「密約は証明された」とする西山氏側の主張には一切踏み込まなかった。

 この裁判で西山氏が問うてきたのは、米国との密約はなかったとする政府の姿勢である。

 換言すれば、沖縄返還協定にはない「税金(四百万ドル)」を、裏金として負担した政府の犯罪であり、国民に対する説明責任である。

 憲法で保証された「知る権利」にも深くかかわる問題なのに、判決はそれも無視した。腑に落ちない。

 言うまでもないが、知る権利は民主主義の根幹をなす。であれば、返還協定をめぐる政府の姿勢を法律で見つめ直し、問いただす責任が裁判所にはあったはずだ。

 二〇〇〇年と〇二年に見つかった裏金の存在を証明する米公文書や、協定作成に直接かかわった吉野元局長の証言(〇六年)もある。

 なのに、国家公務員法による起訴(一九七二年)時点から算定した「排斥期間(二十年)の経過」で断じたのは、司法に対する信頼を失わしめる行為と言うしかない。

 県民の疑問は、これまでに明らかになった「密約」について、なぜ法的判断を下さないかということだ。

 国が国民を欺いてきたのは間違いない。そこに司法の目を向けないのは、民主主義国家の崇高な理念を捨て去ったとみられても仕方あるまい。

 西山氏が指摘するように、返還密約は今に至る日米同盟強化の始まりといっても過言ではない。

 だからこそ密約が(1)どのような性格なのか(2)返還協定は日本にとってどのような意味を持つか―を明確にすることは極めて重要な意義がある。


すべての根源に返還密約

 国民にとって何が真実で、なぜ国はをついたのか。地裁はこの疑問を明らかにすべきだったのであり、そこに踏み込まなかった責任は極めて重い。嘘 判決後に西山氏が強調したのは、沖縄の返還は「南海の楽園が日本に返ってきたということではなく、(返還後も)米軍によって自由に基地が使えるようにしたということ。その根が密約」ということだ。

 確かに返還時の「5・15メモ」を検証すれば、復帰という美辞で沖縄の基地問題を覆い隠し、実際には基地施設を自由に運用できるようにしていることが分かる。

 今回の裁判で西山氏が提出した証拠は約八十。その中で「検察官や政府高官らに二十四の違法行為があった」とも強調している。

 だが、この指摘にも東京地裁は「除斥期間」を盾に踏み込まず、西山氏は「除斥期間という武器で何でも抹殺できる。これが国家機密裁判だ」と振り返っている。

 わずか数秒の判決言い渡しは、「まず結論ありき。想定していた中で、一番イージー(安易)な方法」(西山氏)と断じざるを得ない。同時に沖縄返還に伴う根源的問題だということを考えれば、「棄却」で済まされる問題ではないということを肝に銘じる必要があろう。


時効でも不問に付せない

 「密約」問題は決して過去のことではなく、私たち一人一人がしっかりと認識すべき問題だ。

 また当初の訴訟時に、検察が「密約問題」を「男女問題」にすり替えたことで、「国家による詐欺事件」(西山氏)が単純なスキャンダルに変わったことの責任は新聞はじめすべてのメディアにあることも忘れてはなるまい。

 今回の判決は「仮に不法行為があったとしても」と指摘しながら、時効を理由に密約に踏み込まなかった。

 しかし、国による不法行為があったとする吉野元局長らの証言は重要である。国民の知る権利を守る意味からもこのまま不問に付すわけにいかない。

 たとえ時効が成立しても国民を欺いた事実があるのなら、私たちはそのことを「歴史の事実」としてきちっと検証していく責任があるからだ。

 それが国による問題のすり替えに翻弄されて、“真実”の隠ぺいに加担したメディアの使命と考えたい。

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