★阿修羅♪ > ニュース情報5 > 631.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://www.sankei.co.jp/sports/sports/070820/spt070820001-1.jpg
□夢は8秒台、現実は9秒6? 人類は100メートルを何秒で走れるか [産経新聞]
http://www.sankei.co.jp/sports/sports/070820/spt070820001.htm
夢は8秒台、現実は9秒6? 人類は100メートルを何秒で走れるか
大阪市で25日開幕する世界陸上の注目は、世界記録保持者のアサファ・パウエル(ジャマイカ)とタイソン・ゲイ(米国)が対決する男子百メートル。世界新記録誕生の期待も高まっている。ところで、人類は百メートルをどれだけ速く走れるのだろう。専門家や用具の開発担当者が語る記録の限界値や、記録更新のための条件は−。(特集部 神田さやか)
百メートルの現在の世界記録はパウエルが持つ9秒77。1912年の手動計測の記録10秒6を電気計測に補正した10秒84と比べると、約100年間で1.07秒縮めた計算になる。
百メートルの記録はもう限界値に来ているのだろうか。
早稲田大学人間科学学術院の鈴木秀次教授は、過去の記録の伸びを基に計算すると、スパイクやトラック素材に技術革新が起き、画期的なトレーニング方法が誕生すれば、2050年に「9秒55」まで記録が伸びると予想する。走者の条件として(1)瞬発力が高い速筋の割合が多い(2)空気抵抗を受けない小柄な体格(3)動物的本能で無心で走る−の3点を挙げる。(1)と(2)は遺伝的要素が強く、選手の登場を待つしかないが(3)は改善の余地があるという。
走る動作を科学的に分析すると、走り始めは太ももの前後の筋肉が交互に収縮している。だが、トップスピードに乗ると「もっと早く走らなければ」との意識から、脳が筋肉に出す指令のリズムが速くなり、両方の筋肉が同時に収縮する「共縮」現象が起こる。鈴木教授は「共縮で体がこわばり、スピードダウンにつながる」と指摘する。最後まで筋肉を交互に収縮させるのが(3)だが、そのために神経と筋肉の機能を高めるトレーニング方法が最近、日本で考案されたという。鈴木教授は「条件のそろう選手がこのトレーニングをやれば、記録更新は夢ではない」と話す。
一方、明海大学の岡野進教授は、これまで最大とされるカール・ルイスのストライド230センチと日本人選手の1秒間4.7歩という速いピッチの両方を持つ「超人」が現れたと仮定して、9秒25という数値をはじき出したうえで、最近の記録の推移を考慮して「9秒60〜65が限界だろう」と推測する。
岡野教授は、記録更新の条件の1つに、ストライドが伸びる走路の登場を挙げる。今大会の会場となる長居陸上競技場は「高速トラック」と評判だ。この走路を開発、施工した大阪市の建設会社は「走る際に足が受ける衝撃を利用している」と語る。
足が着地する際、2回の衝撃がある。1回目は着地した瞬間の衝撃。2回目は、着地した衝撃でへこんだ走路が戻るときの衝撃(反発力)。足が離れる瞬間と反発力のタイミングがぴたりと合えば、足を押し上げ、前へ進む手助けをするという仕組みだ。走路はポリウレタン製で通常、硬い層と軟らかい層の2層構造だが、中間に調整層を設けることで「高速トラック」を実現させた。
スパイクも重要な要素だ。カール・ルイスや末続慎吾らに靴を提供してきたミズノのスパイク企画・開発担当者、アスレティック事業部の河野光裕氏は「1歩で1000分の1秒縮める設計を目指している」という。百メートルは40〜50歩で走るので約0.05秒縮める計算だ。選手の主観的な感覚と科学を駆使した客観的なデータを融合して開発していくが、河野氏は「今後は、空気抵抗が少なく、軽いシューズが課題。進化の余地はある」と語る。
鈴木教授の計算では、技術革新が起き続けるとすれば、2360年以降に8秒99が出ることになるが、果たして人類が8秒台で百メートルを走る日はやって来るのだろうか。鈴木教授は「種が変わるなど地殻変動が起きないか限り無理」と言い切る。人類は、過去に10秒の壁を乗り越え、不可能だとも言われた薬物を使用のベン・ジョンソンの記録9秒79も塗り替えてきたのだが…。
(2007/08/20 07:48)