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“マガジン9条”誌上での作家で昭和史研究家でもある半藤一利氏へのインタビュー記事から憲法に関係する箇所を《抜粋》し、3回に分けて転載させていただきたく思います。個人的に私は戦争の実相を語るものとして1920年代生まれあるいは戦前の生まれで兵役や戦争体験のある方の話に大へん興味を持っています。否、それ以上に人々の体験から発する“思い”や“見識”には真摯に耳を傾けなければならないと思っています。さらに、それが今日のおいて何故戦前への憧憬を懐き、また回帰しようと志向する人達が存在するのか、そこに潜む蒙昧性も含めた原因を解明していくための鍵を与えてくれるような気がするのです。尚、興味のある方は是非“マガジン9条”にアクセスして全文を読んでみてください。
また、会いましょう。
マガジン9条 半藤一利さんに聞いた その1 2007年3月14日 http://www.magazine9.jp/interv/hando/hando_1.html
<半藤さんの著書を読む経験によって、歴史を知り、当時のことを想像してみることの面白さに開眼した読者も多いのではないでしょうか? まずは、半藤さんご自身の「戦争体験と終戦直後の思い出」についてお聞きしました。>
(◆:半藤氏,<>:編集部)《以下抜粋》
◆率直に言って、憲法の前文、九条を読んだときには、本当にこれで日本は良い国になると思いましたね。戦争をもうやらない国なんだ、ということは、新しい日本の生き方だと心底思いました。
<周りの友だちの反応はどうだったですか?>
◆どうだったんでしょうね。今になると、はっきり分かれますよね。「あれは良いものだ」という者と「あんなモンだめだ」という者と。戦争体験なんて簡単に言いますけど、同じ戦争の中にいたって、場所によって違います。感じてない人はまったく感じてない。まったく無自覚な人間もいるわけだら。
<戦争の中にいても感じない?>
◆そう。私なんか子どもだったけど、戦争体験、いやっていうほど持ってますよ。そういう戦争体験をたくさん持っている人は、たいてい今でも「日本国憲法は良い憲法だ」と言います。ところが、安穏と暮らして戦争について何も考えなかった人たちは違うんだな。それからね、軍隊に行ったからって戦争体験じゃないんですよ。
<軍隊と戦争体験は違う、と?>
◆そう。僕に言わせれば、ある種の軍隊は一番安全なんだ。メシはちゃんと食えるし防空壕は完備してるし、武器だって持ってる。都会で空襲に晒されていた一般市民よりよっぽど安全なんだ。例えば占領後のシンガポールなんかでノンビリしてた将校や下士官なんて、戦争体験なんかまるでしてないでしょ。とにかく、場所によるってことだけど。
<場所や部署や地位によっては、軍隊は楽なところだったんですね。>
◆過酷な体験なんか一つもしないで、軍隊暮らしを満喫したようなヤツに限ってバカなことを言うんだ。「憲法改正」だとか「アメリカから貰った憲法だ」とか言うヤツをよく見ると、不思議はないんだね。恐ろしさも悲惨さも感じてないんだから。私なんか、子どものころは物凄くいい憲法だと思っていましたからね。そういうのを読んだり聞いたりすると、すごく腹が立つんですよ。
<そういう話を、お友だちとはしなかったんですか?>
◆中学生のとき? うん、あまり喋った記憶がない。でもね、長岡だって空襲で随分やられてて、同級生で一家全滅で自分だけ生き残ったとか、そういうのたくさんいましたから、話はあまりしなかったと思うけど、私も周りの人も含めて、新しい憲法に対して不快感を持った人なんていなかったんじゃないかなあ。
<一般国民は圧倒的に新憲法を歓迎していた、と。>
◆そう思うなあ。日本政府はGHQにせかされて「松本烝治案」という憲法案を提出します。これがとんでもない代物で、明治憲法とほとんど変わっていない。この草案をウチの親父が新聞で読んで「何だこりゃ、前の憲法と何も変わってねえじゃねえか」と怒ってましたね。「万世一系の天皇をいただく我が大日本帝国は不敗の国」なんてのを、このときの政府の連中はまだ後生大事に持ち続けていたんですね。もしもこのとき、業を煮やしたマッカーサーが「松本案」と「GHQ案」を両方国民に示してどちらを選ぶかを問うたら、国民は圧倒的にGHQ案を支持したと思いますね。そういう平和への想いが満ちてましたから。