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(回答先: 住友電工がOpenOffice.orgを全社で活用,推奨ソフトに設定しサポートや講習(IT Pro) 投稿者 こげぱん 日時 2008 年 5 月 21 日 22:14:00)
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/info/magazine/1186581_1214.html
アシスト「新春の集い」より -
*独占から共生へ*
数年間、「新春の集い」では石油ピークや環境問題をテーマにお話をさせていただいた。
原油は今また少し下がっているが、年初に1バレル100ドルに高騰したので、今年は話より
も現実に直面することになるのではと思っている。環境問題はもう少しスパンが長く、お
そらく子どもたちや孫の時代になるだろうけれど、産業界も政界も口先ばかりで今の利益
を優先する方針は変わらないようである。
本題に入る前に、少し日本政府のことを話したい。政府は国連常任理事国になりたいらし
いが、なったところで米国政府の発言力が強まるだけだと中国や韓国は難色を示してい
る。それを如実に示すのが、駐日米国大使館の借地料未納事件だ。東京赤坂の約3,900坪
の米国大使館の借地料は年間わずか250万円、坪当たり年640円にしかならなかった。1997
年、日本が値上げを要求したところ米国は翌年から10年間支払いそのものをストップし
た。昨年暮に、ようやく未納分を1年あたり700万円支払うことで合意したらしいが、貧し
い国でも高い地代を払って東京に大使館を構えているのに、日本政府は米国だけ特別扱い
をしている。日本政府は頑張って交渉して借地料を値上げしたというが、それでも2008年
から2012年まで年間1,000万円、2013年〜2027年が1,500万円と、民間水準に比べたら微々
たる値段だ。こうした米国にへつらう日本政府の実情が報道されても、ほとんどの人は興
味がないようなので、このくらいにして本日はソフトウェアの話をしたい。
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■ アシスト流ビジネスのやり方
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こう言うとアシストの社員は嫌がるが、私はよくアシストは計画性のない会社だと言う。
なぜならこれまでを振り返ると、自社内で綿密に企画したというより、ユーザを訪問し
て、お客様が求めていることを伺い、それに応えるために頑張ってきて、今日があるからだ。
28 歳の時、私は市場調査のために来日した。米国のソフトウェア開発会社から派遣さ
れ、日本市場を全く知らなかったため、とりあえず大手企業を訪問し、システム部門の方
々にお話を伺った。そこで、米国で誕生したパッケージ・ソフトというものを日本に紹介
したら商売になるかもしれないというアドバイスを受けた。私の当時の勤め先はソフト開
発で日本に進出したがっていたので私は会社を辞め、簡易言語のパッケージを自分で見つ
けてアシストを設立したのである。
その後も、データを管理するソフトがないか探して欲しいと言われたり、あるいはどの
メーカーのコンピュータでも動くソフトウェアが欲しいと言われてその要求に応えるな
ど、継続してお客様の要望に沿う形で商売を続けてきた。オンラインの作業が増えた80年
代後半、あるお客様からダム端末ではなくパソコンを使いたいけれど、パソコン用のワー
プロや表計算ソフトが高くて、パソコンをクライアントとしたクライアント/サーバ型を
実現できない、パソコン・ソフトは安くならないか、と相談を受けた。当時ロータスは
98,000円、一太郎が58,000円だった。調べたところ、同様のソフトを、ソフトを作った人
に印税を払って、あとはコピーして簡単な資料を付けて流通網に流せば1万円以下で提供
できることがわかったので、平成元年、アシストワード、アシストカルクといったソフト
を9,700円で販売開始し、かなりの市場シェアをとることができた。しばらくしてロータ
スや他のソフトウェア・メーカーも価格を15,000円くらいに値下げした。そしてWindows
の時代になり、Windows版の低価格なソフトが流通し始めたため、パソコン・ソフトの価
格を引き下げるというアシストの役割は終わったと判断し、パソコン・ソフト事業から撤
退したが、パソコン・ソフトの低価格化により、クライアント/サーバの普及にアシスト
は貢献できたのではないかと思っている。
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■ オープンソースの到来
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今から5年ほど前、お客様から、オープンソース、フリーソフトと呼ばれる無料のソフト
があるので調べて欲しいと言われた。その時は、アシストはOracle やFOCUSを売っている
のに、無料ソフトなんてとんでもないというのが私の率直な感想だった。その後、別のお
客様からも言われるようになると、これは調べないとまずいのではないかと思うようにな
り、調査を開始した。
フリーソフトの“フリー”とは、無料だけでなく自由という意味だ。オープンソースのオー
プンも同様の公開という意味である。インターネットからダウンロードして誰でも使うこ
とができて、改良しても良いがその部分も公開しないといけない、というような程度の決
まりはあっても使用における条件はほとんどない。もうひとつのメリットは、ソースが公
開されていて中身が透明であること。トロイの木馬のようなものが入っていないかどうか
もわかるし、ソースが提供されているので自分のニーズに合わせることも容易にできる。
オープンソースやフリーソフトを調べるほど、私は心配になってきた。なぜならアシスト
は37年間も有料ソフトの販売だけを行ってきたが、無料のソフトで自分がやりたいことが
間に合うのなら、なぜ有料でかつ色々な制限が付いていて、さらにソースコードが公開さ
れていない不透明なソフトを使う必要があるのか、と考えるようになったからである。
オープンソースにはサーバ側とクライアント側で動くものがあり、サーバ側のソフトは基
幹業務や大勢の人に影響が出る。そこで私はまずクライアント側、パソコン用のソフトを
自分で試すことにした。オフィス・ソフトはOpenOffice、ブラウザはFirefox、メール・
ソフトはThunderbirdといったオープンソースを試したところ、十分用が足せることが判
明した。そして2006年5月、社内に公開ソフト事業推進室を作った。
OpenOfficeを社員に使わせることは大変だった。それは技術的な問題よりも、たとえオー
プンソースを使っている人でも会社ではMicrosoft Officeが当たり前という先入観だっ
た。2007年1月、トップダウンで全社でMicrosoft Officeをアンインストールし、
OpenOfficeを使うようにした。全社で使う上で問題はあった。Accessで作られたプログラ
ムは動かないのでAccessのランタイム版(無料)を使用し、またマクロを多く使っている
アプリケーションは2人月かけて書き直した。実際に使ってみて大きな問題はそれくらい
だった。国際標準であるISOを取得している企業は多いと思うが、OpenOfficeのODF(オー
プン・ドキュメント・フォーマット)は ISOの標準フォーマットでもあるので、ISO導入
企業は、特定のベンダー製品に依存せずに文書を開けることも今後重要になるだろう。外
部とのデータのやり取りもMicrosoft Office形式で保存することで問題なく行うことがで
きる。現在アシストでは、取り扱い製品の検証やサポート用にMicrosoft Officeが必要な
社員以外、OpenOfficeを標準としている。
今回の経験で言えることは、無料で、無条件で、中身が透明なソフトで間に合うのに、な
ぜ有料で、条件付きで、不透明なソフトを使うか、ということだ。ソフト業界は常に最新
機能、最高機能を宣伝文句に製品を売るが、多くのお客様にとってソフトウェアに限らず
商売に必要な道具を買う時に、一番機能の多いものと、自分の仕事に十分間に合う機能の
ある道具だったら、間に合うもので良いという場合も多いのではないか。売り手から見れ
ばたくさん機能があるほど広い市場を対象にできるが、売り手と買い手では立場が違う。
また一般に高機能で複雑になるほど、再教育の負担やコンピュータへの負荷は高まる。新
機能も場合によっては欲しいが、選択権は自分の手に持ちたいというユーザもいるのでは
ないだろうか。
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■ 人類の進歩に逆行
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もうひとつ、道具が向上すると人間の能力が劣ってくると言える。高度な道具のせいで技
術のある大工さんが減っているというし、医学の分野でも、機械や写真ばかり見て患者の
顔も見ないような医師が増えている。道具が高度になるほど、反比例の影響が人間に出る
のではないだろうか。そう考えると、より能力を発達させるには、一番機能の多いもので
はなく仕事に間に合うものを使うことが、人間にとって良いのではないかと最近思っている。
オープンソースは機能的にも優れているが、考えてみればそれは当たり前だと思う。なぜ
なら文化の発展は常に改善によってなされてきた。シェークスピアは素晴らしい作品を書
いたが、彼がギリシャやローマの作品の影響を受けたことは間違いない。科学の進歩も同
様である。オープンになるほど、われわれはすでにあるものに手を加え、洗練させること
ができる。ところが知的所有権の時代になり、自分のものは秘密にして誰にも使わせない
ようになった。これは自分の儲けのために進歩を止めるようなものであり、社会全体がそ
れによって利益を得るよりも自分が儲かる方が良いという考え方だ。
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■ 危うい不透明さ
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また知的所有権に守られたソフトウェアはソース・プログラムを見ることができないの
で、中にスパイ機能やトロイの木馬が入っているかどうかわからない。英語で「バックド
ア」という単語があり、インターネットで検索すると記事が出てくるが、米国は外国に対
して様々なスパイ活動をしており、このバックドアもそのひとつである。実際、米国企業
はソフトウェアを輸出する時、64ビットのうち24ビットをアメリカ国家安全保障局
(NSA)のためにとっておかなければならない。Microsoftのソフトの中にNSAKEYという名
称が見つかった時は、NSA専用のバックドア・キーではないかと大騒ぎになったことがあ
る。もちろんNSAは否定し、Microsoftもノーコメントだった。こういったことが日本では
報道されているかどうかは知らないが、米国がスパイ行為を行っていることはCIAのホー
ムページにも書かれている。
冷戦が終わり役割がなくなったCIAはその情報収集能力、つまりスパイ機能を米国企業の
ために使い始めた。これは米国では秘密でもなく、講演もしているし議会からはそのため
の予算ももらっている。911以後は盗聴しても良いという法律もできたし、通信キャリア
の設備の中にはNSAの部屋が用意されていて米国経由の通信は盗聴されていると思っても
いい。このスパイ活動で、例えば米国のボーイングとフランスのエアバスが競合していた
らエアバスの情報を傍受してボーイングに有利にしたり、べクテルに受注がいくようにし
てきた。だから米国と仲が悪い、中国、キューバ、ベネズエラなどの政府はWindowsから
Linuxへ移行している。また、フランス、ドイツ、デンマークといった国の政府、地方自
治体もオープンソースへ移行し始めている。フランス政府がブラックベリーという携帯端
末を公務で使用するのを禁止したのも、メールが米国とイギリスのサーバ経由のため政府
情報が盗まれるのを防ぐためであった。日本企業が同じことをされない保証はないと私は
思っている。
アシストはOpenOfficeの支援サービスを開始した。アシストがやっていることを妨害する
か、またはオフィス・ソフトを大幅に値下げすることはできるかもしれないが、無条件で
透明性のあるソフトを提供することやオープンソースの概念をつぶすことはできないだろ
う。今、私個人はパソコンのOSも WindowsからUbuntuというLinuxに切り替え、中身の透
明なパソコン・ソフトしか使っていない。社内でUbuntuに切り替えた社員はまだわずかだ
が、今年はクライアントにおけるオープンソースの利用を社内で推進していきたいと思っ
ている。
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■ 知的所有権の今後
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ソフトウェアに限らず、知的所有権が濫用されるようになったのは近年のことである。大
企業の地位を確立した会社は、今ほど知的所有権が強くない時代に成長した。自分が大き
くなり、今度は知的所有権を理由に他の会社が伸びないようにしているとしか思えない。
例えば19世紀、オランダに知的所有権はなく、フィリップスはGEから電球の技術をコピー
して売っていたが、今はフィリップスは知的所有権の保護にこだわっている。知的所有権
を主張する側の言い分は、それで守られていないと革新ができない、先行投資ができな
い、というが現実はそうではない。今日の技術進歩を見ると、オープンになればなるほど
技術は改善される。逆に秘密を増やすと進化は遅くなる。特に米国でそのことは顕著で、
知的所有権の概念がない、または弱い国が米国企業の薬を真似て安く製造し貧しい国で販
売すると、米国の製薬会社はその国を相手に裁判を起こしている。その一方で、米国の製
薬会社の経営者は普通の人の500倍以上の給料をもらっている。言っていることとやって
いることは全然違うのだ。
かつて、日本社会では作った人の儲けよりも、使う人の利益の方が大事だった。病気の治
療や社会の発展に役立つものは一部の人が大儲けするために知的所有権で守られるべきで
はないが、米国では過去20年間、国家の政策として知的所有権の保護をどんどん主張し
て、日本もその影響を受けるようになった。しかしここに来てそれも変わりつつある。市
場としての米国の力が弱まり、比較的オープンなEUの市場が拡大しつつある。また米国の
裁判所も、行き過ぎた知的所有権保護にストップをかける傾向が出ている。ITに限らず、
様々な技術が働く人や社会全体の利益になることは望ましい方向であるし、われわれのお
客様の求めていることもそこにあると私は思っている。
▽参考
アシストが社内通常業務をMicrosoft OfficeからOpenOffice.orgへ全面移行(ITpro)
http://www.asyura2.com/0601/it09/msg/527.html
投稿者 こげぱん 日時 2007 年 3 月 17 日 12:04:44: okIfuH5uFf.Lk