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※ちょっと古い記事ですが、残しておくべき記事だと思ってまとめて投稿いたします。
http://news.cabrain.net/article/newsId/13390.html
翻弄される医療(消える病院・全5回の1)
新シリーズ 社会保障が危ない〜「改革」の真相4
第2部 消える病院〜検証「医療崩壊問題」
上 翻弄される医療
「医療崩壊とは、健康な時、普段は気づかなくても、いざ自分や家族、大切な人が病気や怪我で本当に困った時に適切な医療にアクセスできない状態を意味する。例えば、産科では、どこにも産めるところがない。救急では、どこも受け入れてくれないことだ。このようなことが全国でドミノ′サ象のように起きている」
こう語る埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏さん(外科医)は、「病院から医師が逃げ出し、地域から病院が姿を消している」深刻な実態を告発するために、「誰が日本の医療を殺すのか」という著書を今年9月に出版している。本田さんは「今後、団塊の世代が高齢化し、入院患者増が必至となる爆発的な医療需要期を迎える。このままでは、医師不足で医療は崩壊し、大量の医療難民≠ェ発生するだろう」と危機感を強める。
では、医療崩壊をくい止めるには、どうすればいいのか? その道筋をたどった。
(山田 利和)
関連記事「国策と地域医療(中の1)」
勤務医は過労死寸前
京都府・舞鶴市民病院(236床)「副院長の退職を機に内科医が大幅退職、続いて全員退職〜公募による公設民営の予定」
北海道・江別市立病院(408床)「平成17年8月に12人いた内科系医師が、平成18年9月までに全員退職」
新潟県・阿賀野市立水原郷病院(408床)「常勤医師の半数11人が退職〜1次救急の停止、内科の診療制限」
愛知県・高浜市立病院(130床)「18年度末までに医師18人全員退職〜公設民営で受け入れ先を公募中」
スライドに映し出される「地域医療崩壊事例」―。
今年11月23〜25日に東京都内で開かれた医療の質・安全学会主催「第2回学術集会&国際シンポジウム」のプログラムの1つ「岐路に立つ医療−『崩壊』から再建へ」で示された。発表したのは、全国自治体病院協議会会長の小山田惠さん。「地域医療が崩壊している」というテーマで、全国各地で進む医療機関の閉鎖や診療科縮小の問題点などを訴えた。
1つの医療機関から医師が全員退職した例もあるほどの異常事態≠ェ、地域医療を担ってきた自治体病院で起きている…。
背景について、小山田さんは「医師の絶対数不足が根源にある」と説明した。OECD(経済協力開発機構)30カ国で人口に占める医師数を比較すると、日本は27位にもかかわらず、なお止まらない病院からの医師の脱出=B最大の要因が「病院勤務医は過労死寸前の過重労働に置かれていることにある」と指摘した。 2004年の統計で、日本の医師数は25万7,000人。うち病院勤務医は16万4,000人を占める。勤務医の週平均労働時間は63.3時間、時間外労働は過労死ライン80時間を超える月93.2時間に及ぶ。小山田さんは「医師の過重労働からの解放。医師に人並みの生活、患者の権利と同時に医師の生きる権利を守ることが喫緊の課題」と訴え、勤務医の最低限度の労働条件として、24時間連続勤務後の休暇▽当直回数の限度▽医療以外の医師業務軽減−などを挙げ、強調する。「このような施策を実施するには、健全な病院経営が成り立つ財政的支援の確保が前提となる」
地域間の医療格差も
自治体病院は、民間の医療機関では取り組みにくい高度・先進・特殊医療や僻地(へきち)医療、救急、精神、リハビリテーション医療など不採算部門といわれる分野を担ってきた歴史を持つ。現在、全国に約1,000病院あるが、その3分の2以上が赤字経営になっているという(日本自治体労働組合総連合調べ)。
自治労連によると、自治体病院が財政難や医師確保の困難などで苦しい経営を余儀なくされている要因として、相次ぐ診療報酬の引き下げや政府の低医療費政策に加え、不採算医療を担っていることに対する国の財政措置の削減が影響している。
一方、政府・総務省は、自治体病院など公立病院の経営構造を改革≠キるために、「経営効率化」・「(病院の)再編・ネットワーク化」・「経営形態の見直し」を柱とするガイドラインを07年内に策定し、08年度から自治体などに実行を求める計画を進めている。
自治体病院の再編・ネットワーク化は、一つの医療圏で中心となる病院(中核病院)に医師を集約化して医療機能を充実させる反面、周辺の病院では医療機能を縮小して後方支援&a院・診療所にするという狙いがある。また、経営形態の見直しでは、自治体が財政難等のため赤字病院を支えきれないことから、現在の病院を地方独立法人化することをはじめ、運営主体を民間の法人に移す民営化などを差す。
こうした動きについて、自治労連は「住民に必要な医療の提供を使命とする自治体病院の効率最優先への傾斜は、医療への国と自治体の責任・役割の後退、住民への負担増や医療水準の低下をもたらす懸念がある」と指摘。再編・ネットワーク化で、身近な病院がなくなる可能性にも触れ、「中核病院のある地域の住民には恩恵を与えるが、病院が縮小される地域の住民にとっては医療水準の後退となり、地域間の医療格差を助長することになる。地域医療のビジョンを住民とともに考えることが不可欠」と訴えている。
借金の犠牲になる医療
財源問題を理由に、国は財政措置を削減し、自治体も赤字病院を支えきれない悪循環に陥っている日本医療。では、国や地方の財政問題は、医療(社会保障)に原因があるのか? 言い換えると、医療が国や地方の財政難を招いたのだろうか?
医療崩壊は、地方だけではなく首都圏でも進んでいるとして今年9月に開かれた「病院医療が危ない! 都市部に求められる地域医療を考えるシンポジウム」で、コーディネーターを務めた東北大学経済学部長の日野秀逸さんが、「国の借金」論の中身を解説した。
日野さんは、小泉内閣発足前の01年に368兆円だった国債発行残高が、06年の3月末には537兆円となり、国の借金は差し引き169兆円も増えたと説明。現在の借金残高は約540兆円で、その3分の1が小泉内閣の下で増大したことになり、「過去のどの5年をとっても170兆円も増えた時はない」と、「構造改革」を強力に進めた小泉内閣時代に最も財政赤字が増加している皮肉≠ネ事実を示した。
その上で「日本の財政が悪化した主な原因は、公共事業などの浪費による歳出の増加にある。加えて90年代以降は、大企業・金持ち減税で税収が落ち込んだ。さらに、小泉改革によるリストラ促進や社会保障改悪など誤った経済政策によって国民所得が伸びないことも税収が増えない原因になっている。こうした原因をつくり出した政府・与党の悪政に財政悪化の責任がある」と批判した。
国や地方の財政悪化に関しては、80年代に行われた「日米構造協議」で、アメリカから内需拡大を強く求められた日本が91年度から00年度までに430兆円の公共投資を行う約束をしたことが要因の一つになっている。当時、国は中曽根内閣以降の「臨調行革路線」で民営化や歳出抑制による「増税なき財政再建」を進めており、アメリカとの約束は主に地方に押し付けられた。その結果、国に加え、地方も膨大な地方債(借金)を抱えることになった経緯が複数の文献等で既に報告されている(この430兆円の公共投資は、その後の村山内閣で630兆円にまで膨れ上がった)。
現在の財政難は、医療とは無関係な事態から生じたにもかかわらず、そのツケを医療が肩代わりする矛盾した構造になっていることが分かる。ルールがないといっても過言ではない国の施策のままでは、医療はどうなって行くのだろうか…。
その象徴的な実例に迫るため、本州最北端の青森県・下北半島に向かった―。
更新:2007/12/05 キャリアブレイン