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(回答先: マスコミへの登場も多い経済評論家の山崎元氏も、ベーシックインカム支持派のようだ 投稿者 最大多数の最大幸福 日時 2007 年 12 月 29 日 15:24:48)
五人国家のベーシックインカム(アンカテ)
2005-09-19
ベーシックインカム(以下BI)については、いろいろな反応がありましたが、まず「ほんとうに実現可能なものかどうか?」が気にする人が多いようだし、私自身も気になります。
そこで、国民が五人しかいない国を想定して、そこでBIを導入するとどうなるか考えてみます。
所得格差がない場合
A B C D E 計
所得 500 500 500 500 500 2500
5人が500万円の所得があるとして、ここに平均年収の30%のBIを導入してみます。
A B C D E 計
所得 500 500 500 500 500 2500
BI給付 150 150 150 150 150 750
計 650 650 650 650 650 3250
なんと、年収が650万円にもなりました!
しかし、喜ぶのはまだ早い。この費用を皆で負担しなくてはなりません。これをどう分担するかが問題ですが、このモデルでは全員が同じ所得ですから、割り勘にするのが適切です。そこで、この費用を均等に割り振ってBI税として徴収してみましょう。給付額は合計で750万円ですから5で割って、一人あたり150万円になります。
A B C D E 計
所得 500 500 500 500 500 2500
BI給付 150 150 150 150 150 750
BI税 150 150 150 150 150 750
計 500 500 500 500 500 2500
あらら、ものすごい税金を引かれて元に戻ってしまいました。年収アップはつかのまの夢でした。
よく考えると当然の話で、BIは、何かを新しく生産するわけではなくて、配分するだけですから、全体としてはBI総給付=BI税合計になります。もし、これを均等に割り振るとしたら、以下のようになります。
BIの平均収入との比 = BI税率
所得格差が無い場合には、結局、BIを実施しても何も変わることがありません。
BIは、非常に過激で実現不可能な政策のように見えますが、このようにマクロの収支で見る限りは、それほど非現実的なものではないのです。劇薬というよりプラシーボに近いと言ってもいいかもしれません。
平均所得に近い人にとっては、以下のモデルでもほぼ同様の結果となり「結局、何も変わらない」ということになります。
所得格差がある場合
では、所得格差のあるモデルを見てみましょう。
A B C D E 計
所得 100 300 500 700 900 2500
まずは、単純に、こういうふうに年収がバラついている場合について考えてみます。BI給付は、前と同じように平均所得の30%、負担は均等割としてみます。
A B C D E 計
所得 100 300 500 700 900 2500
BI給付 150 150 150 150 150 750
BI税 30 90 150 210 270 750
計 220 360 500 640 780 2500
100万円から900万円にバラついていた収入格差が、220〜780の間に縮まりました。つまり、BI(+均等割での負担)とは、貧富の差のカーブをなだらかにするものであると言うことができます。
・平均所得以上の人は、BI給付より税の方が多く収入減
・平均所得以下の人は、BI給付より税の方が少なく収入増
・平均所得の人は変化なし
年収900万円の人が差引120万円の負担をするというのは、大変大きな負担ですが、全くあり得ないほど大きい負担ではありません。また、年収100万円の人が倍以上になるわけですから、低所得者層に対する効果はかなり大きいと思われます。
ですから、この五人国家のモデルの中では、ある程度、現実的で大きな効果を及ぼすモデルを作ることができるようです。
仮にAさん、Bさん等と同等の人が、2000万人づついるとしたら、これは1億人の国家でも同じように成立ちます。あるいは、平均年収がAさん、Bさん等と同じになる、5つのグループに階層化できるとしたら、やはり同じようになりたちます。
極端な所得格差がある場合
次に、少数の勝ち組と多数の負け組になるモデル(森永卓郎モデル)でやってみましょう。
A B C D E 計
所得 100 300 500 700 900 2500
BI給付 150 150 150 150 150 750
BI税 0 90 90 90 480 750
計 150 360 360 360 1270 2500
失業者(収入ゼロ)のAさんにとって150万円の給付は不十分なものですが、なんとか生きていくことはできそうなので、自暴自棄になって犯罪に走る可能性はかなり減ります。
負け組のB〜Dさんにとっては、60万円、月額5万円の手当を、趣味や勉強にかけるお金と考えると、スキルを高め、自分の可能性を発掘して、雇用の流動性を高める要素になります。
勝ち組のEさんから見ると、差引330万円というかなりの負担となるわけですが、犯罪率が減り、自分が雇用する人材の質が上がることと引き換えと考えると、なんとか我慢できる金額になると言えると思います。
世帯を含めたモデル
ここまでは、国民=勤労者=単身世帯というモデルで子供がいないモデルです。ここで世帯を含めたモデルを考えてみましょう。
A B C D E 計
所得 250 500 0 500 500 1750
AさんとBさんが結婚して、Cさんを生んだとします。Aさんは、子育てをしながらパートで働いているので、年収が半分です。
Dさん、Eさんは単身者です。
このモデルでは、GNP(所得計)が減るので、BIも減らして、平均所得の30%を保つようにします。平均所得が350万円になるので、BI給付は105万円になります。
A B C D E 計
所得 250 500 0 500 500 1750
BI給付 105 105 105 105 105 525
BI税 75 150 0 150 150 525
計 280 455 105 455 455 1750
この場合は単身者のDさん、Eさんにとっては55万円の負担増になります。
Aさん、Bさん、Cさんの三人家族を世帯単位で見ると、計750万円の税引き前の所得が、計840万円になって、110万円の補助を受けることになります。
実は、BIを誰に給付するかというのは、いろいろな考え方がありますが、基本的な方法は、子供も含めた国民全員に等しく給付することです。このモデルのようにそれを実施すると、単身者から子供のいる世帯への所得移転の効果を持つことになります。
しかし、Dさん、Eさんが高齢化して収入が低下した頃には、Cさんが(比較的)高所得者となって、二人のBIを負担することになります。
このように、BIは、児童手当や年金のような、条件付き給付や積立年金と同じような効果を、もっとシンプルな手段によってもたらすものであるとも言えます。
ただ、それだけに、「誰に」「どれだけ」給付するかという技術的な設計の中に、思想的な理念を含むという性質もあります。
まとめ
もちろん、これは非常にアバウトなモデルですから、いかなる意味でも、この数値が今の日本にそのままあてはまるものではありません。ただ、これが全く非現実的なものではないことは、これによって理解できると思います。
また、以下のことは、ほぼBIの基本的な特性や効果と考えてよいのではないかと思います。
・平均所得以上の人は、BI給付より税の方が多く収入減
・平均所得以下の人は、BI給付より税の方が少なく収入増
・平均所得の人は変化なし
・森永卓朗モデルには適する
・設計によっては児童手当や年金等の過去の制度を代替する
(かなり強力で強引な所得再分配効果がある)
また、私は一貫して、BIの負担を税率一定の所得税に求めました。この考え方は、BI自身とは独立の私自身の考えを反映したものです。BIの負担方法は、給付方法と独立に議論されるべきものですが、よほど極端な手段を用いない限りは、実質的な負担としてはこれと似たようなものになるのではないかと、私は考えています。
モデルの作成にあたっては、下記エントリで取り上げた「自由と保障」を参考にしました(があまり参考にはなりませんでした)。
(9/20 追記)
若ハゲ無職さんのご指摘により、計算ミスの部分を訂正しました。ありがとうございます。
水平線を目指してさんが、これを元に二点考察されています。大変、興味深い考察なので、ぜひこちらもご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/Hattivatit/20050919#1127148984
ひとつは、借財がある場合(所得がマイナスの場合)について。これは私もどうなるかわかりません。「自由と保障」にも触れられてなかったと思います。
もうひとつは、数学的基礎付け。
ベーシック・インカムが税率に応じて国民の所得の分散を小さくする制度であることが解る。税率が大きくなると分散は 0 に近づき、課税がない状態ではもともとの所得の分散に等しくなる。
つまり
BI+フラットタックス=所得分散制御装置
ということですね。導入後に、BI税率を政策課題として調整し続けるという前提で導入するのがいいかもしれません。各政党は最適な所得分散の値を政策目標として掲げるとか。
http://d.hatena.ne.jp/essa/20050919/p1