★阿修羅♪ > 議論25 > 424.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
=2007/03/23付 西日本新聞朝刊社説=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20070323/20070323_002.shtml
基準見直しで広く救済を 原爆症認定
国の定める原爆症の認定基準が、被爆者が受けた被害の実態を直視せず、病気と放射線の因果関係を機械的に判断していると批判する司法判断の流れが定着したといえるだろう。
東京地裁は、原爆症認定をめぐる集団訴訟で、大阪、広島など地裁4件の判決に続き、現行の認定方法を根幹から批判した。
広島や長崎で被爆した原告30人のうち21人については病気と放射線との因果関係を認め、国の処分を取り消した。残る9人は請求を棄却し、損害賠償については全員認めなかった。
国は、被爆者支援政策の見直しを迫る司法判断が相次いで示されている事態を真剣に受け止め、認定基準を抜本的に見直す必要がある。
原爆症の認定基準は、爆心地からの距離で被ばく放射線量を推定する算定方式「DS86」に加え、性別や被爆時の年齢などで発症確率を示す「原因確率」によって判断する。
この認定基準の妥当性について、国は一貫して「科学的」だと主張している。
だが、判決は「科学的根拠を厳密に求めることは被爆者救済が目的の被爆者援護法の趣旨に沿わない」と批判した。
さらに、認定基準について相応の合理性を認めながらも、機械的な運用が放射線リスクの過小評価をもたらす恐れがあると踏み込み、あくまで総合的判断の1要素として考慮されるものと判断した。
そのうえで、被爆者一人一人についての被ばく状況や被ばく後の行動、生活状況などを総合的に検証する必要があることを促した。
東京地裁の判決は明快である。先の仙台地裁判決は、原告に関しての医療の必要性にまで踏み込んだ判断として評価される。
全国に約26万人が被爆者健康手帳を所持しているが、原爆症と認定を受けている人はわずか0.8%の約2000人にすぎない。この数字は、多くの被爆者が認定を受けられないまま、放置されている実態を突きつけている。
東京訴訟の原告30人のうち、4年前の提訴から既に11人もが命を亡くしている。高齢化している被爆者たちの救済は、一刻の猶予も許されない。
原爆の放射線が人体に及ぼす影響は、現在の科学では十分に解明されていない。形式的な適用だけで放射線起因性を否定してはならない。申請者ごとに被害の実態を踏まえ、医学的に否定されない限り認定すべきではないか。
国は、これまでの集団訴訟判決を不服とし、控訴し続けている。これ以上、被爆者対策を後退させてはならない。
国は裁判所の判断を尊重し、控訴を断念するとともに、原爆症認定行政を抜本的に改めることが不可欠だ。一連の司法判決が、政治の決断によって解決を促していることは言うまでもない。
2007年03月23日00時02分