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企業減税の愚について
今の時点おいて企業減税を優先することは本末転倒である。為政者は自分たちの失敗を失敗と思っていない証拠である。それほど彼らはデフレを理解していないのだ。なんら反省せずにただ単に今までのやり方を踏襲しているに過ぎない。小泉政権下における経済政策は、主に金融政策であったが、銀行合併による銀行の資本充実の名の下に、貸し剥しのしやすい体質を作り、民間企業から資金を回収し、低金利金融緩和策は、内需を増やすなんらの効果もないため、内需を主に頼りにしている企業になんら貢献せず、多くの大企業は内需をあきらめ、あるいは国内市場から逃げ出して、外需に頼る有り様になってしまった。幸運にも日本のデフレによって刺激された中国の日本への輸出は、中国市場の急激な成長を促し、2008年の中国のオリンピックと重なり、中国の国内市場が大きく形成されたのであった。その外需に日本企業の多くが飛びつくことになったのである。これとて日本の政策が良かったわけではなく、失敗が功を奏したに過ぎないのである。
以前行われた企業減税は、なんら効果を上げなかった。その理由は、国内の需要に頼る企業は利益がほとんど上げられないか、又は赤字の企業なのである。もともと赤字の企業において減税を実行してもなんら得な物ではない。内需振興させるには無意味な物であり、余計な税金の無駄使いと言えよう。このデフレで資金が少ない時に、確実に資金をデフレ解消に使わなければならないのに、なんという愚かなことをするのだろう。
企業減税は何を日本にもたらしただろうか。皆さんも既にお分かりのように、輸出企業の大攻勢をもたらし、設備投資もほとんど外需を目指した物になっているのだ。確かにその設備投資が増えた分国内のメーカーは潤っているが、内需向けではない、国内素通りの投資なのである。これが内需指向の大企業であってもなお苦戦をし続ける理由である、電鉄関係や百貨店、スーパー、ホテルなどの大手でもである。国内は循環的に資金が減少傾向に有り、付加価値を思うように付けられない環境なのである。それに対して外需は、デフレではない正常か又はインフレに近い状態なので、付加価値が付け易く、儲け易いのである。外国に企業がシフトするのは当然であろう。それが輸出関連企業、主に大企業の好業績に現れている。このように企業減税は、内需振興に役に立たず、輸出関連企業と内需主体の企業群との間に大きな格差を生むのである。これはデフレ特有の格差の一つと言えよう。このような格差をさらに維持し、広げる政策が企業減税のなせるわざなのである。
それでは
企業減税はなぜデフレを解消できないのか。デフレにおいて企業を優遇し商品開発を積極的に行わせることは、企業間競争をより激しくする事になる。それはある産業においては、価格引き下げ競争になり共倒れを生じさせるかもしれない、また他の産業では、1企業の商品開発が功を奏し、一人勝ちになり他の企業の淘汰を招き、余計な失業者が増えるかもしれない。なぜならデフレというのは、貯蓄以上に資金が減っている現象だからである。言い換えると貯蓄以上に資金がへるところからデフレが始まるとも言える。この辺のところは拙著「デフレインフレの一般理論」の3、4、5章辺りを参照していただきたい。貯蓄がない状況では、生産量を増やしても、売上が伸びないのである。
買うお金が無い人達に、生産物を押し付けても支払えないのである。これは正常な経済すなわち貯蓄がある経済において、生産量を伸ばせば、消費が増え売上が伸び、結果所得が伸びるのとは大きな違いである。
ここのところを勘違いしているのである。正常な貯蓄がある経済の場合、供給サイド側に投資をしたり、研究開発を促すことは、消費者側を刺激することになり財布の紐を解き放し易いのである。これが正常な経済において、企業側に政策の重点を置く理由である。
聞くところによるとアメリカの1930年の大恐慌において、ニューディール政策は結局成功せず、戦争による特需によるまで景気は回復しなかったと聞く。
これはケインズの公共投資による赤字有効需要創出政策が効果が無かったことを意味していると思う。
すなわちアメリカの大恐慌はデフレであり、資金が貯蓄以上に減っていたことによるだろう。ケインズの言うデフレ、インフレギャップは正常な経済の中での投資と貯蓄の差を表しているに過ぎず、貨幣の価値が変わるほどの状況の物ではないのである。それ故彼の分析した経済理論をデフレに応用してもうまくいかないのである。
それ故デフレ下における大規模な公共投資も、市場に資金を十分に増やす事なく終わったのである。デフレ下では、公共投資はさらなる連鎖的な消費を生まないのである。このようなデフレ特有の現象は、全体での貯蓄が無く、資金が不足しているために起こるものである。この資金不足のデフレ下において、供給側に刺激を与え優遇することが如何に無意味であるか、は拙著3章、4章辺りを読まれたし。理論的に証明していると思う。
さらに日本の政策自体がこれを既に実証している。デフレ下において何度も行った補正予算を組んだ公共投資の数々、しかしこれは景気を回復させる事なく、ただ単に国民に大借金をもたらしただけであった。また企業減税や低金利金融緩和政策は消費者側を明らかに犠牲にした政策であったが、それが効果があればまだしもなんら効果が無いのである。今少し潤っているように見えるのは、中国の外需に支えられた僥倖によるものに過ぎない。この外需による利益が失敗を覆い隠しているに過ぎない。軌道を外れたロケットが、あまりの失敗から結局元の地球にたどり着いた猿の惑星のようなものだ。だから多くの国民やメディア関係者が勘違いしているのである。実際は日本は輸出と輸入に頼る、内需の無い発展途上国へと変わりつつあるのである。今やるべきことは、外需で稼いだもので、内需の消費を刺激して国内の所得を形成すべきなのである。この辺の下りは次の機会に述べるとしよう。
企業減税を実施するとどのようになるか。
先ず多くの国内の需要を頼みとする企業は赤字のため
なんら利益を受けない。またギリギリ利益のある企業は、内需が良くないので国内に投資をせず、貯蓄にするか、外需用に資金を回すであろう。よしんば内需用の研究資金に回し、画期的なものができたとすれば、それはより競争を招くだけである。これに対して輸出で稼げる企業は黒字の分をより多く使え、ますます外需用に設備投資をすることになる。彼らはますます儲けることになり格差が拡大して行く。内需の拡大には一義的には貢献しないのである。また企業減税しなければ、外国との競争に勝てないという意見があるが、国内の需要がしっかりしていれば国内で十分稼げるのでそんな意見は出ないはずである。国内をないがしろにして輸出で稼ぎたい輩の暴言である。先ず国内を潤しその余剰で輸出するのが本筋である。第2次世界戦前の日本は内需が少なく外需で稼がねばならない状況に合ったと思われる。しかしそれは結局国を滅ぼすもとになるのである。
このように企業減税は、内需減に苦しむ多くの企業を助けるものにならない。今一番力を入れなければならない内需の拡大によるデフレからの脱出には、悪手である。理由は、中国の需要がさらに拡大し、アメリカが世界恐慌から立ち直るのに要した世界戦争に匹敵するぐらいの需要の拡大が必要であるからである。もしそこまで行かなければ失敗に帰するであろう。危険な手である。またそれは中国市場に対する日本企業の深入りを招くだろう。これはどこの国でも起こる現象であるが、当然不買運動や、日本に対する圧力行動が出てこよう。1国への深入りは、経営者にとっても、また政治家にとっても避けるべきことである。特に今の為政者は、好景気を演出したいばかりであり、日本の
おかれている現在の先行き不安定な状況より、見かけの成長率に浮かれているのが現状だ。
日本の政治家や役人は、この中国特需による僥倖をうまく日本のデフレ解消に役立たせることができないようだ。参照http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/