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日本における農業とエネルギー
−21世紀の食料事情を考える−
© 2001, Antony F.F. Boys (アントニー F.F. ボーイズ)
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/pdf_files/tombo.pdf
より。p.73〜75から抜粋。※カッコ内は私の補完です。
3 まとめ
第1 部(化石燃料とその他のエネルギー源)で見てきたことをまとめると:
日本は海外からの石油に大きく依存している。
現在石油は日本だけでなく世界のほとんどの国にとって欠かせない重要なエネルギー
源である。
原油埋蔵量が現在どの程度かは正確にわからないが、次のことは言える:
石油のほとんどがすでに発見されていることは、ほぼ確かである
石油の可採量の半分近くは既に産出されており、21 世紀の最初の10 年間に年間石
油産出量はピークを迎えるだろう
石油産出ピークが近づいていることを示す現象として、石油産出国が一定の価格を
上回らないようにと自由に産出を増加させることが困難になったことがあげら
れる。これは現実に2000 年8 月に起こったことである
石油産出ピークは、価格の安い石油と高い石油の明暗界線である
石油価格が高騰一方になった時点から、現在の経済システムは根本的に変質する
現在石油は世界の一次エネルギー供給の約40%を占めている。他のエネルギー源への
切り替えには時間がかかるので、石油供給の混乱や中断に対処するためには、石油価
格高騰が起きる数年前より徐々に始める必要がある
石油の完全な代替物はない。他のどのエネルギー源も効率が低く、簡便性に欠け、コ
ストが高い(たとえばエネルギー利益率という観点から見て)など欠点がある
有限資源は文字通り枯渇する運命である。天然ガスや石炭を使って2050 年まで現在の
ような経済システムが維持できるとは考えにくい
「再生可能な」あるいは「新」エネルギー源なら、21 世紀後半まで使える可能性はあ
るが、いくつかの難点がある:
石油のようなエネルギー利益率は望めない
一般的に言えば、これらはローカルで分散型のエネルギー供給であり、高密度の中
央集中型のエネルギー供給には向かない。現在の産業システムを維持していくこ
とは無理だろう
「再生可能な」エネルギー源の設備(太陽光発電パネル、風力発電のタ−ビンなど)
は、現在の工業システムの製造能力がなければ生産できる可能性は低い
現在の工業システムに近い産業構造でなければ、近代的な食料生産システムを維持す
るための機械類、化学製品や燃料などを供給するのは困難だろう。(これが北朝鮮の食
料不足の主な原因である)
今後の化石エネルギー不足は現実であって、錯覚や蜃気楼などではないだろう。私たち
の生活に予測できない変化をもたらす、石油産出における根本的かつ質的な変化が近づい
ているのを否定することは、ますます難しくなってきている。世界の石油エネルギー供給
における重大な変化や混乱に対して備えることが得策だろう。再生可能な「新」エネルギ
ー源は役にたつかもしれないが、石油や天然ガスの代替物にはならない。ただ一つ残され
た選択は、今とは違って「商業的」エネルギー源の果たす役割がはるかに小さく、主に太
陽エネルギーによって営まれる社会への準備に着手することである
世界の最後の審判の日はまもなく来るのである。
この日に備えない国は激烈な苦しみを覚えることになるだろう[218]
第2部(21世紀初頭における日本のエネルギーと食料農業事情)で見てきたことをまとめると:
日本の食料自給率は40%程度である
世界の人口は増えており、少なくとも2040 年まで増え続けるだろう
一人当りの食料生産量の点では、世界の人口を養う能力は停滞ぎみで、改善される可
能性は低く、21 世紀初頭から次第に悪化するだろう
穀類の生産量が落ちる中で、世界市場での競争が原因の価格上昇と、その他の政治・
経済のファクターによって、今後日本は希望するだけの食料を輸入することは難しく
なるだろう
日本の人口は現在増え続けており、2006 年前後にピークを迎えるだろう
同時に、日本の耕地面積は減少している。原因は耕作放棄、あるいは宅地、工場用地、
道路などへの転用である
日本の食料自給率は低く、凋落の一途をたどっている。しかも米の消費は、減反せざ
るを得ないほど落ち込んでいる
日本の食生活は過去70 年間にかなり変化しており、これが食料自給率の低さの大きな
ファクターである。食生活をより適切な方向へ変化させることが、食料自給を達成す
る第一歩である。
農家人口は減少し高齢化している。食料生産を直接体験したことのない日本人がます
ます増えている。
日本では、食料の生産、輸送、パッケージング、加工、調理に大量のエネルギーを消
費している。輸入エネルギーに頼っている現状で、これは危険なことである。そのエ
ネルギー消費の仕方にも問題がある。例えば:
超窒素過剰国にもかかわらず、化学肥料を使っている
農機具類の投資が過剰な割りに、稼働率が低すぎる
生命維持に関係のない食品のパッケージングへのエネルギー投入が過剰である
日本の食料廃棄量は膨大である。消費者の意識改革により早急に問題を解決すべきで
ある
日本は、豊富な自然環境が提供する再生可能な資源に恵まれているが、それらの適切
な利用には社会の再組織化が必要である。それには相当な年月を要するので、今から
計画を始めるべきである。幸運にもまだ時間はあると思われる。
日本の本当の再生可能な自然資源とは:
肥沃な土壌。収量を維持するのに化学肥料が必要だという主張は神話である。本当
の持続可能な循環型農業に早く移行し、大量の化学肥料投入を止めるべきである
豊富な水。日本における水の循環を維持するためにあらゆる努力がなされるべきで
ある。とくに、森林の保護、持続可能で良心的な森林の管理をすべきである
広大な森林地帯。国土の3 分の2 は森林で、これが日本の主な再生可能な資源と言
える。森林を保護し育成する政策が緊急の課題である
農耕用家畜は国内にほとんど存在しないが、将来必要となるだろう。家畜を育てるに
は年月がかかるので、すぐにも着手すべきである
日本人は、将来の日本社会のビジョン、その実現化のためにとる行動について、直ち
に考え始めるべきである
「軟着陸」シナリオの準備は、少なくとも問題が起きる10 年前には考え始めるべきであ
る。準備を延期すればするほど、危機は深まり、痛みはひどいものになる。人々は生活様
式の変化に備える(例えば精神的に)必要があることを意識すべきである。今後数10 年間
において、生存のカギとなるものの一つは、今とは異なる社会や生活様式を想像する能力
であると思う。それによって私たちは、どのような社会を作って行くのかを考えることが
でき、私たちの生活と社会が危機の波に破壊されることなく、目標に向かって人々と協力
していける。それでこそ、自然の恵みに見合った、築き上げようと思う社会に合った食料
生産のシステムや、エネルギー生産システムとその使用レベルを作り出すことができる。
将来の状況の変化に応じて、私たちはそれまでとは違った方法で物事に対処する必要があ
る。先見の明と想像力を欠いた従来の行動パターンを、盲目的に繰り返すことは決してし
てはならない。例えば、今後十年間に起こる出来事によって私たちはこれまでの生活様式
を大幅に見直す必要が出てくるというのに、2050 年に向かって電力需要カーブを延長して
その時どれだけのエネルギーが必要かと推測したり、そのような未来しかないと錯覚した
りするのは、まったく意味がないのである。
北朝鮮のように突然の食料とエネルギー危機が起これば、国内の森林を破壊から守るこ
とはできなくなる恐れがある。もしそうなれば巨大で悲惨な生態系的災害が訪れるだろう。
それを防ぐには、今から「中間的」再生可能エネルギー源(太陽光発電、風力、海洋エネ
ルギー、水力発電、地熱発電)と集約的な有機農業を発展させることが重要課題である。
食料とエネルギーの危機が長引けば、それが収束するまで、また人口が減少するまで、基
本的な食料とエネルギーを供給するよりどころとなるのは、この再生可能なエネルギー源
と有機農業だからである。究極的な悲劇となる日本の森林の破壊を防ぐにはこの方法しか
ないかもしれない。
第1 部に示した化石エネルギーの危機が起こりうるという証拠に直面して、政府に期待
することは上記の通りである。政府は公表しないだけで、実はひそかに検討しているのか
もしれない。このようなことを公然と討議しない事情がいくつかあることは、筆者も十分
理解しているつもりである。しかし、食料とエネルギーに関する問題を市民に教育する場
合、政情不安を招かない程度に、現在よりは積極的に行なっても差し支えないだろう。一
般の組織、市民団体、個人などは当然社会に対して自由に情報を提供したり、生活様式の
変化に自由に対応することができる。付録4には個人が実行できるような例をいくつかあ
げた。徹底したものではないが、未来を憂慮する人同士が知り合って共に活動する程度に
は役立つかもしれない。
結局、未来は世界の動向によって形づくられるのだろう。しかし、上述したように、人々
が集まり未来の社会に関して現実的な考え方を討論すれば、その社会の青写真、つまり討
論の基盤となるものが次第に出現するだろう。そのような青写真があれば、世界の動向に
流されず、目的地に向かって進むことができるのである。今後の論文のテーマは、この21
世紀後半の日本社会の青写真ということになりそうである。
以上
以下、ピークオイルに関連する私の投稿です。
ピークオイルと人類の運命
http://asyura2.com/0601/war77/msg/926.html
ピークオイルの後は「終りの無いオイルショック」それは世界経済の終りの始まり
http://asyura2.com/0601/war77/msg/967.html
ビルトッテン氏より「ロシアはピークオイルがシオニストの嘘だと証明した」への
コメント頂きました。
http://asyura2.com/0601/war77/msg/991.html
「2050年は江戸時代」石川英輔著(2010年ピークオイル⇒終りの無いオイルショック⇒世界経済崩壊⇒世界恐慌⇒日本食糧危
http://asyura2.com/0601/war78/msg/106.html