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(回答先: 公立病院の治療代未払い急増 低所得者の増加など影響 (asahi.com) 投稿者 彗星 日時 2006 年 4 月 09 日 07:51:12)
「払わない」のか、「払えない」のか――。治療代の滞納が急増している実態が朝日新聞社の調査で明らかになった。制度改革で重さが増した医療費負担に耐えきれない人が、一定収入のある会社員らにも広がっており、「格差社会」の一端をうかがわせる。病院を運営する自治体側は、こうした未収金の徴収に躍起だが、「努力は限界。未払いを生まないような制度改定を」と訴えている。(石前浩之、尾崎千裕、永田豊隆)
「おなかが痛いんですが」。神奈川県にある病院の外来に昨年6月中旬、50代の会社員が訪れた。腎炎、高血圧、糖尿病、肝障害を併発しており、即入院となった。
地元の東海地方で事業に失敗。借金と妻子を残して上京した。給料は額面17万円。家賃と生活費でほぼ消える。自覚症状はあったが、我慢していた。「治療費はどれくらいかかるだろう。貯金がほとんどないんだけど」。病床から、ことあるごとに、病院に勤める社会福祉士に尋ねていた。1カ月の入院で自己負担は約18万円。03年4月より前の、サラリーマンの自己負担が2割の時代ならば、この3分の2程度で済んでいた。
わずかな蓄えを集めて3万円を支払った。分割払いにし、残り10万円まできた昨年9月に失踪(しっそう)した。月1回の通院が欠かせない体は今、大丈夫なのか。医師らは心配している。
岡山市のタクシー運転手(61)は昨年7月、自宅で急性心筋梗塞(こうそく)の発作に襲われた。自分で救急車を呼び、緊急手術で命はとりとめた。10月にも発作があり、入院は2回で1カ月半に。医療費負担は計29万円に上った。だが、これまでに約7千円を払っただけで、残りは今も未払いだ。
入院費が高額になったのは、医療費負担の上限額を定める高額療養費制度が改定され、負担額が引き上げられた影響もある。この男性のケースで試算すると、00年までなら計22万7千円で済んでいたが、年々上がり、今の29万円になった。
独り暮らし。02年、持病の心臓疾患が悪化して長距離トラック運転手を辞め、タクシー会社に勤め始めた。正社員ではなく、嘱託。歩合制もあって給与は月約7万円にしかならない。月3万8千円のアパートの家賃や食費、光熱費の支払いさえ追いつかず、昨年、年金担保融資を受けたため、月約11万円の年金は全額返済に消えている。
「少しでも払いたいが、払えない。治療を続けないと命にかかわると言われていたが、病院には顔を出せない」
堺市の病院で約15年間、患者から相談を受けている医療ソーシャルワーカーの女性は嘆く。「『年収300万円以下・貯蓄ゼロ』の世帯で病気になると、生活保護世帯よりも大変なことになる。そんなケースが珍しくなくなった」
●徴収側も強く言えず 自治体、工夫も限界
公立病院を運営する自治体では近年、様々な防止、回収策に乗り出している。
01年度からの3年間で未収金が倍増した千葉県は今春までの1年間、二十数年間にわたり税務畑を歩み、主に徴収を担当してきた職員を県病院局に送り込んだ。
最初の3カ月で未収金の「防止・回収マニュアル」を作成。各病院の職員らとともに、回収が困難な約200戸を訪問。夜は午後9時ごろまで電話での督促に当たった。
ただ、所得や資産に対応する税金と違い、治療代の滞納者の中には支払い能力がない生活困窮者が相当数いた。「年金で生活している人に月10万も20万も払えとは言えないが、ゼロでいいとも言えない。もっと福祉制度が充実していればと思った」と話す。
全国最高となる総額9億1652万円の未収金を抱える沖縄県。04年度以降、支払い約束日ごとに患者の一覧が表示される台帳システムを独自に開発し、約束した当日に患者へ間髪を入れず電話している。04年度には、未収発生を約9千万円抑える効果をあげた。
公立病院ならではの難しさもある。民間病院では入院に際し、「保証金」名目で一定の金額を預かり、未収を防いでいるところが多い。だが、経済力の乏しい患者を排除することにもなりかねないため、公立病院では導入は少ない。
◇ ◇
◆各自治体の未収金対策
【支払い督促、少額訴訟】
岩手、山形、東京、新潟、石川、三重、大阪、奈良、鳥取、高知、沖縄など
【コンビニエンスストアでの徴収】
新潟、香川(06年度中に実施予定)など
【クレジットカード決済】
横浜市、群馬(検討中)など
【徴収の専門職員などを配置】
宮城、山形、千葉、神奈川、福井、兵庫、鳥取、大分など
【時間外診療時などの預かり金制度】
山形、広島、香川、長崎など
【台帳システムなどの整備】
滋賀、沖縄、堺市など
※地名のみは都府県。政令指定都市には「市」の表記をつけた。
http://www.asahi.com/paper/national.html