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2月16日 05年32号 ◆ レバノン前首相の暗殺と米国の不正義
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◆ レバノン前首相の暗殺と米国の不正義
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◇◆ レバノン前首相の暗殺と米国の不正義 ◆◇
14日の夕方レバノンの友人から電話があった。「悲しいニュースだ。ハリーリ前首相が暗殺された」。電話口で話すその声は暗く、重かった。テレビをつけてみた。まだどこもニュースを流していない。そのうちCNNが流した。夜になって日本のテレビも流し始めた。間違いなくハリーリ前首相は死んだのだ。
なぜ私がこのニュースに衝撃を受けたか。それは一年余り前までレバノンに大使として勤務していた私が、当時の首相だったハリーリ氏と親しかったと言うだけではない。彼ほどの大物政治家でさえ、権力の不正義に前にあっさりと命を奪われる国際政治の非情さをあらためて見せつけられたからだ。
日本の新聞の中で16日付の読売新聞だけがこの暗殺の首謀者がレバノンの隣国シリアであることを仄めかす記事を書いている。レバノンの政治を少しでも知っているものは誰でもシリアがレバノンを不法に支配している事を知っている。しかしそれを公言することはタブー視されてきた。レバノンの内戦に乗じて国際平和軍として介入してきたシリアは、シリアの撤退を叫ぶレバノンの政治家、軍人、宗教指導者などあらゆる者をことごとく暗殺してきた。内戦が1990年に終わって10年以上もたつというのに、このシリアのレバノン支配は終わるどころか広く、深く、巧妙にレバノンの隅々に浸透している。その結果レバノンに残った指導者たちは誰もシリアに面と向かって物を言わなくなった。そんな中で国民的支持を得てシリアに抵抗していた大物政治家の一人がハリーリ前首相であったのだ。
かつて私はハリーリ首相に聞いたことがある。「あなたのような大金持ちが、なぜ生命の危険をおかしてまで抵抗を続けるのですか。外国に移り住んでいくらでも優雅な生活が出来るはずなのに・・・」。この愚かな私の質問に彼は答えずに笑うだけだった。彼は今ならこう答えるに違いない。「レバノンの復興を誰にも邪魔させるわけにはいかないのだ」と。
シリアはいつものように自らの責任を一切否定している。それどころかハリーリ前首相がサウディアラビアのファハド国王に可愛がられていたという周知の事実を利用して、サウディアラビア王制の腐敗に反抗するイスラム過激組織の仕業に仕立て上げようとしている。これに対し国際テロ組織アルカイーダ系のグループは直ちに関与を否定する声明を出した(16日付産経新聞)。
シリアのレバノン支配は到底容認できない国際法違反である。なぜそれが許されてきたのか。ここに米国の中東政策の不正義がある。シリアのアサド大統領はイラクのサダムフセイン大統領に優るとも劣らない国民弾圧の独裁指導者だ。しかしサダムフセインを攻撃した米国が何故シリアのアサド体制の非道を許すのか。それはシリアがパレスチナ過激組織などの反米、反イスラエル抵抗組織を押さえつける力があるからだ。米国にとって利用できる悪だからだ。
そのシリアも、イラクが米国の手に落ちそのイラクに米国の軍事基地をおいて中東全体の民主化を進めようとする米国にとって、もはや用済みになりつつある。今度はシリアやサウディアラビアの反米過激組織を一掃していくであろう。そして最後の反米国家、反イスラエル国家であるイランに照準を当てていく事になるであろう。
アラブ全体が、民主化のためには米国の軍事力による介入でさえも受け入れることになるのか、それとも中東全体が本格的な対立と混乱に突入していくのか、それはアラーの神しかわからない。
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