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「北朝鮮・チベット・中国人権ウォッチ−東北アジアの全ての民衆に<人権>の光を!」
より
11月の日朝実務者協議の際、北朝鮮側から拉致被害者の横田めぐみさんの「遺骨」と称されるものが日本政府の訪朝団に渡され、帝京大学の調査でこの「骨」が横田さんのものとは別人のものであると立証されたとの報が流れるや否や、今度は北朝鮮側から「備忘録」と証する文書などを通じてこの調査結果は「捏造」であるとした声明が発せられ、日本政府も先日この北朝鮮側の主張に「反論」を行うという状況が展開されています。
ところで、この問題について、国際的に有名な科学雑誌「Nature」のオンライン版が2月2日に「日本と朝鮮が拉致を巡って衝突している中、DNAが激しく論じられる」と題した記事を掲載しました。この記事によると、「遺骨」と称されるものが横田さんとは別人のものであると立証した帝京大学の吉井富夫も自分の調査結果が最終的なものではなく、サンプルが汚染された可能性があることなど、調査結果が完全なものではないと認めたということです。
なお、日本政府が昨日に北朝鮮側に送付した「反論」の中では、「備忘録は1200度の高温で火葬するとDNA分析でも個人の識別は不可能としているが、火葬した骨の一部が熱に十分さらされなかったためDNAが残存することはあり得る」(中国新聞 05.02.10より)としているとのことです。
当サイトの開設者(まこと)は医学や生物学は無知に等しく、この「Nature」の記事の内容が科学的に妥当な内容であるのか、そもそも帝京大学の調査結果が適正なものであるかを判断する知識も材料も持ち合わせていません。しかし、国際的にも名の知られた「Nature」誌が日本側の調査結果に疑問符を投げかける記事を掲載するということは、この問題を論ずる際に見過ごすことはできないのではないかという気がします。
というわけで、以下に「Nature」誌オンライン版の当該記事の日本語訳を掲載します。なお、以下の翻訳記事は上述した理由より開設者がその記事内容の妥当性を保証しえるものではなく、あくまで参考情報として紹介していることを付記させて頂きます。
この件に関して、医学や生物学などに詳しい方からのご意見を頂ければ幸いです。
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*「日本と朝鮮が拉致を巡って衝突している中、DNAが激しく論じられる」(「Nature」オンライン版 05.02.02)
記者:David Cyranoski
(Published online: 2 February 2005; | doi:10.1038/433445a)
<概訳:まこと>
・火葬された遺骨は1977年に誘拐された少女の運命を証明することができない。
東京−DNAの検査が1977年に誘拐された日本国民の火葬された遺骨かどうかを立証したということに関して、激烈な論争が日本と北朝鮮の間で勃発した。
この論争は数年の間この2か国の関係を気まずくしているエピソードの中では最近起きたねじれ現象である。1970年代から1980年代の間に北朝鮮は少なくとも13人、そしておそらく100名近い数の日本人をスパイ活動計画の中で使うために誘拐したと考えられている。そして今、この2つの国は拉致された人々のある一人の遺骨から正確にDNAを識別することの実現可能性に関して争い合っている。
2002年の秋、北朝鮮は長年の否認に終止符を打ち、武装部隊が13人の日本人を日本や欧州から誘拐したことを認めた。北朝鮮の指導者である金正日はこの誘拐は軍隊によって政府の許可の無い状況で実施されたと主張した。日本は更に二人の誘拐被害者についての証拠があると言い、さらに多くの誘拐の事実があったと考えている。
生存者を解放した北朝鮮への圧力は、その後家族を伴って日本に帰国する5人の誘拐被害者を見る結果となった。北朝鮮が死亡したとしている他の8人の誘拐被害者に関する情報は(日本側に)伝わるのが遅く、彼らのうち数人は未だ生存しているという推測を導くことになった。
昨年11月15日、日本の政府関係者は北朝鮮が1977年に誘拐された横田めぐみ(当時13歳)の火葬された遺骨であると主張するものを持って平壌での会談から帰国した。北朝鮮の報告書によると、横田は北朝鮮国民と結婚したものの、その後精神病院に入院した後に自殺したという。
東京の帝京大学では遺骨の5つの試料による検査では2人の人間からのDNAを見つけた−しかし、それらのうちいずれも横田の両親によって保存されていた(これは日本ではよくあることである)彼女のヘソの緒から得たDNA配列と合致しなかった。これらの結果は昨年12月に北朝鮮に伝えられたが、北朝鮮政府は1月26日に検査結果に「でっち上げ」の烙印を押す声明を出した。
日本外務省の報道官である高島肇久によると、北朝鮮は検査で使われた手法に疑問を差し挟み、1200℃で熱せられた遺骨は残存DNAを残すことはできないと主張したという。また、北朝鮮の声明は5つの試料を扱った東京の科学警察研究所はDNAを抽出することができなかったのに、なぜ帝京大学はそれが可能だったのかと質した。
・サンプルの残存
日本の法医学専門家である帝京大学の吉井富夫は、彼がどうにか5つの試料全てからDNAを採取することができたことには幾つかの理由があるのだと語る。これらには彼が通常の一回のみDNAを増幅する手法の代わりに2回DNAを増幅するネスティッドPCR(*PCR=ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれる高選択的な調査法を使用したことや、(帝京大学)独自のサンプルが他の研究所のものに比べて良質のものであったという可能性が含まれる。彼はDNAサンプルの扱い方について「誰でも自分自身の検査方法を持っている」と言及した。「(DNAの検査方法について)標準化された手法というものは無い。」
日本では法医学的な分析が火葬された試料に対して行われたことが殆どなく、吉井を含む大半の専門家はDNAが1200℃の火葬の中で残存しているということはあり得ないことだと考えていた。吉井は「私は本当に驚いた」と言った。もし短時間の間だけそのような温度に晒されていた状態ならばDNAは残存することができる。信州大学の法医学専門家の福島弘文は「温度からだけでは何も語ることはできない」と語る。
それでもなお、かつて火葬された試料を扱った経験は無い吉井は彼の検査が最終的なものでは無く、サンプルが汚染された可能性があることを認めている。「骨は何でも吸収する堅いスポンジのようなものだ。もし骨を扱った人物の汗や皮脂が吸い込まれれば、どんなに十分に準備されてもそれらを取り除くことは不可能だろう。」
高島は、北朝鮮が過去に誘拐したものであるとする人物の遺骨を送るものの、後にそれが別人のものであることを認めたことがあると語る。
日本政府は1月26日、北朝鮮の状況への対応が「遺憾である」としてこの出来事に反応した。高島によると、「厳しい対応」は12万5000トンの食糧支援の中止やその他経済制裁を含むかもしれないと威嚇したという。
また、日本の政府関係者は彼らは問題のDNAを再検査したと語る。しかし、吉井は5つのサンプル−もっとも大きなものでも僅か1.5グラム−は彼の検査で使い果たしたと語る。また、評論家たちは(日朝間の)見解の相違が解決される目処は殆どないままであると語る。
・DNA is burning issue as Japan and Korea clash over kidnaps(原文)
http://www.nature.com/news/2005/050131/pf/433445a_pf.html
http://216.239.57.104/search?q=cache:bfA1SI6EjKEJ:www.nature.com/news/2005/050131/pf/433445a_pf.html+%22DNA+is+burning+issue+as+Japan+and+Korea+clash+over+kidnaps%22&hl=ja
*記者:David Cyranoski アジア太平洋特派員・東京
<概訳:まこと>
Davidは2000年に「Nature」でジャーナリズムに転職する前、日本で数年の間働いていた。彼の様々な職歴には半導体製造設備会社での翻訳や外国人交換留学生への歴史の教育が含まれる。Davidはアジア太平洋地域の情報をカバーすることに加え、彼の関心事にはマテリアルや地球科学、知的財産も含まれる。彼はカリフォルニア大学バークレー校で日本の遺伝学の歴史における彼の博士課程を修了するために1年の有給休暇を取得するという夢を抱き、また、いま標準中国語を勉強中である。
http://www.nature.com/news/about/aboutus.html#Cyranoski
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【参考記事】遺骨別人:「へその緒」と「骨」で違い突き止め(毎日新聞 04.12.09)
政府の代表団が持ち帰った「遺骨」は「高温で焼かれており鑑定は難しい」というのが関係者の一致した見方だった。こうした状況で、DNA鑑定を依頼されたのは警察庁科学警察研究所(科警研)と「国内では最高技術を持つ」(警察当局)帝京大学法医学研究室だった。鑑定できなかった科警研と帝京大学で、方法や使用した機器に差はないが、石山いくお帝京大名誉教授は、DNAを抽出できそうな骨を選別する技量の差を強調している。
帝京大は最近10年間、警視庁が外部に依頼する鑑定のほとんどを引き受けたほか、第二次世界大戦で戦死した旧日本兵の遺骨の鑑定も一手に行ってきた実績がある。
今回は、DNA鑑定のうち、ミトコンドリア鑑定法が使われた。ミトコンドリアは細胞内にある小器官で、細胞核とは別に独自のDNAを持っている。一つの細胞に数十から数千のミトコンドリアがあるため、微量の試料を鑑定しやすい。
帝京大の吉井富夫講師らは、遺骨から取り出したミトコンドリアDNAの塩基配列を、めぐみさんのへその緒に含まれるミトコンドリアDNAと比較した。ミトコンドリアDNAは約1万6000塩基対でできている。うち個人差が生じやすい部分(約300塩基対)を比較し、別人と結論付けた。さらに鑑定に使用した骨5片のうち4片の塩基は一致したが残りの1片とは合わず、2人分の骨と判断した。
関西医大の赤根敦教授(法医学)は「骨が焼かれると、DNAが切断され、鑑定は難しくなるが、200対ほどの塩基配列があれば十分可能だ」と指摘している。【工藤哲、山本建】
◆遺骨700度以上の高温で焼かれる
政府関係者によると、政府の代表団が持ち帰った骨つぼ内の骨は700度以上の高温で焼かれており、火葬場などの施設を使用したとみられる。鑑定には、骨つぼに入っていた骨片の中から10片を取りだし、帝京大と科警研で5片ずつが使われた。他に頭頂部と思われる部分もあったが、完全に焼けていて明らかに鑑定できる状態ではなかった。歯やあごに当たる部分はなく、政府関係者は「松木薫さんの遺骨として北朝鮮が提供した骨が、骨相学で下あごから別人と鑑定されたことを考慮し抜き取った可能性がある」とみている。
http://66.102.7.104/search?q=cache:7FOyFMNQXJsJ:www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/photojournal/archive/news/2004/12/09/20041209k0000m040166000c.html+%E9%81%BA%E9%AA%A8%E5%88%A5%E4%BA%BA%EF%BC%9A%E3%80%8C%E3%81%B8%E3%81%9D%E3%81%AE%E7%B7%92%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E9%AA%A8%E3%80%8D%E3%81%A7%E9%81%95%E3%81%84%E7%AA%81%E3%81%8D%E6%AD%A2%E3%82%81+&hl=ja
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/photojournal/archive/news/2004/12/09/20041209k0000m040166000c.html