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民族全滅の危機感がユダヤ教の起源
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投稿者 たけ(tk) 日時 2005 年 1 月 30 日 23:11:15: SjhUwzSd1dsNg

(回答先: ユダヤ人はいつ何時迫害されるかも知れないと思い込まされているのですね。 投稿者 ワヤクチャ 日時 2005 年 1 月 30 日 22:43:26)

『タルムード入門1』(A.コーヘン、教文館)p.35-p.39

民族全滅の危機に対処するために

『ユダヤ人は、自分と異教徒をいつも区別するばかりでなく、自分がユダヤ民族の一員かつユダヤ教徒であることを不断に自分に明示してくれるような宗教を必要とする。ユダヤ人は、その宗旨によってのみならず、生活態度によっても隣人と違っていなければならない、というのである。その礼拝の様式もちがえば、家庭生活も違う、また、日常生活のごくありふれたことがらに関しても、彼のユダヤ人たるとを常に彼に印象づけるような要素がなくてはならない。』

という宗教が成立した。


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紀元前586年、当時のカナンにイスラエル民族の旗を辛うじてかかげていたところのユダ王国は壊滅的打撃を蒙った。エルサレムの神殿は破壊され、神殿での祭儀は終わりを告げ、民族の最優秀な層は捕囚としてバビロンに拉致され、・・(カナンに残された人々の)絶望の叫びを鎮めるのは容易なことではなかった。

これに先立つこと一世紀半、722年にはイスラエル十部族からなる北王国がアッシリア軍によって撃破され、捕虜として連れ去られた住民は、その大多数が、行きついた先で同化してしまったという事情がこの民族的危機を一段と切実なものとした。ユダが直面している危機が同様の結末に至ろうものなら、民族は全滅し、イスラエルという名前は歴史上から抹殺されてしまうことは必定であった。

このような深刻な事態にバビロンにあったユダヤ人の指導者たちは深い危惧を覚え、いかにして民族として生きのびるかの問題に真剣に取り組んだにちがいない。いかにしたならば民族滅亡の危機を回避できるであろうか。・・エルサレムの聖所が破壊され、国民は異国住まいを強制され、強大な異質文化の影響力にさらされているとき、この独自性をいかにして維持できるかを問うた。

この時代・・捕囚地のユダヤ人社会の中心人物は預言者エゼキエルであった。・・

彼らが到達した解決策はトーラーの一語をもって言い尽くせよう。・・異郷の地にあるユダヤ人が、神によって祖国に連れ戻してもらえるそのときまで異質の社会環境のなかでみずからの独自性を守り抜くために必要な唯一の支えであった。・・そうすれば、彼らは、身はバビロンにあってもバビロンの人間ではないわけであり、異質な民族としての地位を守りとおす神聖な義務をになうことを忘れないであろう、というのであった。

・・・

ユダヤ民族の子孫はエジプト、バビロン、ペルシアと各地に散在していたのみならず、ユダヤのユダヤ人に限ってみても、彼らと周辺の異教徒との接触を断つことはできない相談であった。よって、ユダヤ人がその民族としての独自性を維持していくためには、これを『防火線ならぬ燃えさかる信仰の火』によってぐるっととりまく以外になかった。・・ユダヤ人は、自分と異教徒をいつも区別するばかりでなく、自分がユダヤ民族の一員かつユダヤ教徒であることを不断に自分に明示してくれるような宗教を必要とする。ユダヤ人は、その宗旨によってのみならず、生活態度によっても隣人と違っていなければならない、というのである。その礼拝の様式もちがえば、家庭生活も違う、また、日常生活のごくありふれたことがらに関しても、彼のユダヤ人たるとを常に彼に印象づけるような要素がなくてはならない。・・

この視点が十分に把握されるのでない限りは、ラビたちの物の考え方、彼らの行動様式、また彼らの聖書解釈の方法を理解できる望みは皆無である。
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