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(回答先: 都会の死角 自転車事故編 ＜中＞ 【東京新聞】 投稿者 愚民党 日時 2005 年 7 月 02 日 01:22:18)
都会の死角 自転車事故編＜下＞
横浜市南区の女性（７９）は五月二十五日夕方、買い物に行くため横断歩道を歩いていたら、後ろから自転車に追突されて転倒した。自転車はそのまま逃げたが、約二百メートル先で通行人に取り押さえられた。
女性はねんざなどで十日間のけが。自転車に乗っていた無職男（３８）は、酒に酔った状態だったという。横浜地検は男について六月八日、重過失傷害と道交法違反の罪で異例の起訴に踏み切った。「酒を飲んで運転し、逃げた悪質性を考慮した」と説明する。
現場は信号のない交差点。「自転車通行可」の標識がある歩道同士を結んでいる。男は、逃げた理由について「弁償する金がない」などと供述したという。
自転車が絡む事故は、二〇〇四年で交通事故全体の二割を占める。交通事故総合分析センターによると、歩行者との事故は〇三年までの十年で四倍に急増。自転車同士の事故も同じ期間に六倍を超える増え方だ。
〇四年中に起きた自転車対歩行者の事故では、重傷者が二百七十四人、死者が三人。重傷者は十年で二倍強に増えた。自転車側の３７％が経済力に乏しい未成年者だ。
だが、自転車は車のような自賠責保険の制度がない。万が一の備えにも「死角」が潜んでいる。
日本交通管理技術協会（新宿区）は、「自転車安全整備士」の資格を持つ整備士が安全性を点検した自転車に対し、傷害保険と賠償責任保険が付いた「ＴＳマーク」を交付している。保険の有効期間は点検日から一年。自転車の定期的な点検・整備を促す狙いがある。
三種類あるマークのうち、交付数が最も多い赤色マークは、傷害保険が入院十五日以上に一律十万円など。賠償責任保険は今年三月から補償内容が拡充され、死亡・重度後遺傷害（一−七級）で限度額二千万円となった。点検費用（部品、修理代を除く技術料）の目安は新車が五百円、使用過程車が千円という。
しかしＴＳマークの交付数は〇四年で約百万枚にとどまる。自転車保有台数の約八千六百万台と比較して普及しているとはいえない。十年前の交付数約百十五万枚（九五年）と比べても減少している。
協会の担当者は、普及しない原因として「マークの認知度が低いのと、自転車の価格低下で使い捨てるような風潮が高まり、再点検しない人が増えているためでは」と説明する。
ＴＳマークは、「自転車通行可」の標識がある歩道を自転車が通行できるようになった一九七八年の道交法改正を機に、翌年から交付が始まった。八二年から保険付きになり、補償内容は徐々に拡充されてきた。
自転車産業振興協会（港区）が〇三年度に学校など全国約二千カ所で行った安全点検によると、整備不良の自転車は２８％に上った。整備不良のうちブレーキ不良は三割近くに。点検した自転車全体の８％が、安全性を左右するブレーキに問題があったという。
整備不良の自転車を公道から排除しようとしたＴＳマークの浸透は一部にとどまり、付帯保険も主に重大事故を対象にしている。自転車に関する保険はほかにもあるが、加入するかどうかは個々人にゆだねられている。歩行者を守る仕組みはいまも十分といえない。
自転車統計要覧によると、日本は自転車一台当たりの人口が一・五人。世界八カ国で比較すると、自転車王国のオランダ（〇・九人）や、ドイツ（一・三人）に次いで自転車が身近な存在だ。国交省も「日本の自転車保有率は世界的にみても高い」としている。
一方で、交通統計によると、日本は自転車乗車中の死者数が千二百四十三人と、八カ国の単純比較で突出して目立つ。二位の米国と比べても倍の多さだ。
車が自転車をはね、自転車が人をはねる。そんな悪循環の拡大を防ぐには、行政による施策の強化だけでなく、私たち自身が身近な問題として考え直す必要がある。
文・森川清志、佐藤大
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