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少子化対策、何が有効か 政府・与党、意見割れる
主要国の子育て支援
少子化対策には、いったい何が最も効果があるのか――。この難題を前にして、政府・与党間で意見が割れている。政府税制調査会が、税額を減らす新たな方式を検討課題に打ち出したのに対し、与党からは児童手当の対象や金額の拡充策の提言が相次いでいるのだ。子育て支援の施策は海外でもまちまちで、有効性の評価も定まっていない。財政が逼迫(ひっぱく)するなかで、社会保障と税制の一体的な議論が求められるのは、少子化対策も例外ではない。(日浦統、丸山玄則)
日本の子育て世帯の家計に対する支援は現在、現金を給付する「児童手当」と税負担を軽くする「所得控除」の両建てとなっている。
児童手当は、小学3年生以下の子どもが対象で、第2子までは1人年6万円、第3子以降には年12万円を支給している。対象児童は05年度予算ベースで約940万人、支給総額は約6400億円。ただし、夫婦・子ども2人のケースで、年収780万円未満という所得制限がある。
税金を軽減する所得控除もある。0〜69歳までの扶養家族への「扶養控除」(所得税で38万円)と、16〜22歳の子どもに控除額を上乗せする「特定扶養控除」(同63万円)だ。扶養控除には親がかりで働かない成人なども含まれ、両控除の対象は約2577万人、所得税軽減額は総額約1・5兆円にのぼる。
手当、控除とも拡充されてきたが、少子化は止まらない。
政府税制調査会が、今春から検討し始めた「児童扶養控除」は、拡充策のひとつだ。子ども1人当たり一定額を納税額から直接差し引くタイプの控除で、欧米で導入が進んでいる。税率の高い高額所得者が有利になる現行の控除に比べ、低所得者層の恩恵が大きいという利点がある。
日本総研の試算でも中所得者層に「有利」との結果が出た。現行の二つの扶養控除を廃止し、仮に22歳までの子どもに対し、1人当たり年間10万円の税額控除に切り替えた場合、年収400万〜700万円の中所得者層(子ども2人の4人家族)では、現行に比べ4万9千〜9万9千円の減税となるという。
政府税調は、高齢化に伴う歳出増や財政再建をにらんで、近い将来の大幅増税を考えている。このため、「減税感」のある施策をアピールしたいという狙いもある。
だが、政界では依然、児童手当重視の空気が強い。現金を渡す方が有権者に訴えることができるからだ。公明党は、東京都議選対策で、支給対象年齢を小学6年まで引き上げる方針を打ち出した。諸外国に比べ厳しい所得制限の緩和も求める。自民党若手議員の「少子化対策研究会」も3歳児までの児童手当の額を現行の3倍にするなどの緊急提言をまとめた。
●米英独仏、評価は定まらず
「税か手当か」――。日米英独仏の主要5カ国の家計の支援制度を比べると、国によってまちまちで、有効性や評価が定まっていないのが現状だ。
仏は日本のような所得控除と手当の両建て。米国は控除のみ。独は高所得者に有利な所得控除か、中低所得者に有利な手当(税額控除と一体的制度)かを選択する仕組みだ。最も支援策が手厚いのは英国。子どもがいる全世帯に児童手当を支給するほか、低中所得者層にはさらに税額控除を上乗せする。
欧米では最近、納税額を控除額が上回る場合、納税免除だけでなく、逆に差額分を給付する制度も広がっている。実質賃金を引き上げる効果のほか、福祉依存が増えるのを防ぐ狙いもある。
日本総研の湯元健治調査部長は「膨張しがちな手当に比べ、税額控除は一定の抑制が利く」として、税額控除を重視すべきだとの意見だ。
そもそも、日本の子育て支援への財政支出は、まだ欧米に比べて少ない。経済協力開発機構(OECD)が先進30カ国を対象に、01年時点の家族政策への財政支出を比較したところ、日本は対国内総生産(GDP)比で0・6%。上位の北欧諸国は3%超の水準だ。
《山口信夫・日本商工会議所会頭》 国が長期的な観点から財政投入すべきだ
《細田官房長官》 出産後の女性の再雇用や男性を含む育児休業の取得の充実が必要だ
5月10日開かれた政府と経済界・労働界による「子育て支援官民トップ懇談会」では議論はすれ違ったまま。財政危機が深刻化するなか、少子化社会をどうするのか、という官民の知恵は深まらない。
http://www.asahi.com/paper/business.html