現在地 HOME > 政治・選挙8 > 634.html ★阿修羅♪ |
|
---------------------------------------------------------
「月刊現代」2005.03号
NHK番組改変劇「暗黒の5日間」 魚住昭(稿)
番組改変問題をめぐる朝日新聞とNHKの対立が激化している。NHKは朝日の報道を「虚偽報道」と決めつけ、朝日は名誉毀損での提訴も辞さずと強気の姿勢を崩さない。
どちらに軍配が上がるにせよ、その結果は日本のメディアの将来を大きく左右するに違いない。
番組への政治介入はあったのか、なかったのか。真相を探るため私はさまざまな関係者に接触した。NHKの内部資料もいくつか入手した。そうして集めたデータをもとに、四年前に起きた番組改変劇の裏側をこれから再現してみよう。おそらく読者は、巨大な放送局が抱え込んだ闇の深さに驚かれるはずだ。
(略)
これに対しNHKの松尾元放送総局長が会見し、朝日の取材を受けた「NHK幹部」が自分であることを明らかにしたうえで「圧力を感じたことはなく、政治介入があったとは全く思っていない。記事は私の発言をねじ曲げたものだ」と激しく非難。関根昭義・放送総局長も「決して政治的圧力があったから番組が短くなったということはない。もとより自主規制うんぬんということもなかった」と言明した。
だが、こうした幹部たちの言葉を額面通りに受け止めるNHK職員は少ないようだ。少なくとも私が接触した範囲では、ただの一人もいなかった。あるNHKのプロデューサーは匿名を条件にこう語った。
「このところ『ニュース7』で連日、朝日を非難する一方的な情報ばかり流してますよね。あれが始まると、みんな『あっ、またやってるぞ』と言って顔をしかめるんです。いままでひどいNHK報道をいろいろ見てきたけど、あれほどひどいのは初めて。記者会見で幹部が『国会議員への番組内容事前説明は業務遂行の範囲内だ』と居直ったときには、開いた口がふさがらなかった。報道機関の独立性はどこに行ったんでしょう。このままではNHKで働く者たちの誇りが奪われてしまい、組織が内部から崩壊していくような危機感を覚えます」
NHK報道局の記者の一人も言う。
「僕らはつねに政界の圧力を感じながら仕事をしているから、長井さんの内部告発はよく理解できるんです。たとえば政治家のカネにまつわる話を書こうとしても、上からブレーキがかかる。そんなことがここ四、五年、しょっちゅうあるから、記者たちも初めから『こんなニュースは書けないよな』と自主規制してしまうことが多い。だから僕らは長井さんの勇気に内心では拍手を送っている。でも、それを職場で口にしたら、どんな仕打ちをうけるか分からないから、黙っているんです」
この記者の言葉からも分かるように、NHKでは報道や番組制作の現場に不自然な圧力が加わる事態が日常化している。問題の「問われる戦時性暴力」の制作に携わった教養番組部の面面もそれに直面した。内部資料や関係者たちの証言をもとに、放送までの五日間に現場で起きた出来事を改めてたどり直してみると、その異常さがはっきりと浮かび上がってくる。
(略)
--------------------------------------------------------------
番組改変劇の時系列での詳細及び改変の詳しい内容などについて知っておきたいかたは、この『NHK番組改変劇「暗黒の5日間」』を是非一読しておいてください。
あと、同じくこの雑誌に掲載されている『事実か倫理か「無断録音」問題の元朝日記者が沈黙を破る』という手記も是非読んでおいてください。取材現場の緊迫したリアリティが伝わってくる手記です。記事になったあと、「言わなかった」と発言を翻す人は多いということも教えてくれています。