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視点:ライブドア 通信と放送の融合は不可避だ
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050326k0000m070162000c.html
ライブドアとフジテレビの攻防に、ソフトバンク傘下のソフトバンク・インベストメント(SBI)が参戦してきた。フジテレビ防衛のため、ニッポン放送が保有するフジテレビ株を貸し出し、ライブドアの議決権を奪う作戦だ。
新株予約権の発行ほど乱暴ではないにしろ、通常の株式貸借とは違い、議決権の譲渡に近い。再び法廷闘争になるのだろう。
今回の騒動は日本中の関心を呼んでいるが、大方はライブドアに新鮮な魅力を感じている。テレビをめぐってはNHKの不祥事などもあり、もともと厳しい目が注がれていた。そこにネットとの融合を唱えるライブドアが登場した。
フジサンケイ側が、株式市場の否定につながりかねない対抗策までとったのには驚かされたが、背景にあるのは、テレビ局のビジネスモデルの絶対的な維持だ。
テレビ局は放送法と電波法に守られ新規参入が難しい。その中で、特に在京キー局は高収益を享受している。番組はインターネットで流せばいいというライブドアの主張は、テレビの収益構造の破壊につながる。
映像コンテンツ産業の頂点にテレビ局があるのは、番組が電波で送られ、その電波を独占的に利用できるからだ。通信が入ってくると、この図式が崩れてしまう。フジテレビが激しく抵抗するのも無理はない。
しかし、通信をめぐる環境は激変し、光回線によるブロードバンド化が家庭へ広がり始めた。通信回線はすべて光化する方向で、放送局を通じなくても番組を見ることができるようになりつつある。
通信会社も顧客獲得のためメディアに資本参加し、魅力のある映像コンテンツを囲い込むという行動にいずれ出るだろう。ソフトバンクは通信会社でもある。SBIとの連携はライブドアに対抗するためだが、これを機に逆に、通信とメディアの連携が進むことになるのかもしれない。
通信と放送の融合は、映像コンテンツ産業についても大きな意味を持っている。NHKの受信料収入と民放の広告料収入を合計すると年間3兆円近い額になるが、配分権はテレビ局が握っている。
もちろん通信回線を通じた番組では、今のような高視聴率は稼げない。しかし、番組制作への参加が増えコンテンツ産業が厚みを増して活性化すれば、低コストでいい番組が出てくる可能性がある。視聴率競争に明け暮れるテレビ局に配分を任せるより、産業政策上も意義があるかもしれない。
放送のデジタル化も再検討が必要となる。地上波のデジタル化が進められているが、通信回線を使えばいいなら、膨大な国費を投じて全国すべての地域で電波網を整備する必要はない。
ライブドアが開始したメディア買収劇は、こうした問題を私たちに突き付けている。
毎日新聞 2005年3月26日 0時49分