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ニッポン放送問題 識者はこう見る
ニッポン放送に対するライブドアの敵対的買収は、市場をめぐる企業行動の倫理観や危機管理について、さまざまな問題を提起している。こうした敵対的買収は「時代の流れ」なのか、それとも「市場原理主義の暴走」なのか。ライブドアの堀江貴文社長は「新しいタイプの投資家」なのか、それとも「脱法的な若者」なのか。5人の識者に意見を聞いた。
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≪経済アナリスト 森永卓郎氏≫
■市場原理主義の暴走
市場原理主義が暴走している。お金を持っている人が一番偉いという価値観に変わる流れになっている。法に触れなければ、何をしてもよいという社会だ。
ライブドアの時間外取引について、金融庁が早々と「違法ではない」との認識を示したことや、新株予約権の発行差し止めの仮処分が裁判所に認められたことなどの結果をみると、国民が知らない間に、市場原理主義を推し進めようとする勢力が増大しているのだと感じる。世論はライブドアに傾いているようだ。安定した職業につけない若者が増える中、高い給与がもらえるニッポン放送やフジテレビがたたかれているのは、見ていて楽しいのかもしれない。
ニッポン放送は、リスナーに、いかに楽しい番組を提供できるかばかりを考え、株主対策などには興味を示していなかったのだろう。逆にライブドアの堀江貴文社長は、番組作りをしたいということではなくて、利益を手にしたいだけのようにみえる。
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≪東京経済大学教授 若杉敬明氏≫
■金融当局、認識うかつ
フジテレビには二つの弱点があった。一つはグループのメーンでキャッシュを持っているにもかかわらず、より規模の小さいニッポン放送が親会社になっているというねじれ現象があったこと。もう一つはマネジメントが下手で株主を重視していないということだ。
ただ、ライブドアは時間外取引で一気にニッポン放送株の大量取得を成立させたが、株式公開買い付け(TOB)をかけるべきではなかったか。違法の可能性もある。もっと詳しく調べなければならない。
ライブドアの時間外取引の使い方は、TOB制度をあいまいにするものだったが、金融庁は問題が起きた当初に『違法ではない』との認識を示してしまった。金融当局としては、うかつだったといわざるをえない。
堀江社長は『優れた経営者』というより『新しいタイプの投資家』という印象だ。一連の報道はM&Aが経営にスキがあるときに、仕掛けられるということを経営者に教え、緊張感を与えたという点では意味があった。
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≪漫画家 弘兼憲史氏≫
■“無節操な支持”危惧
今回の事態は、ライブドア側がこっそり株を買い占めて提携を求め、フジテレビ側が「応じられない」と断ったところから始まった。
ライブドアは、先に殴って、ひるんだところで仲直りしましょうと言うようなやり方で不公正だ。
「旧体制を打ち壊す若者」という構図ではなく、脱法的な若者が入り込んできただけ。世代間の対決などでは決してない。
ライブドアはM&Aで拡大してきただけで、企業に対する愛着が感じられない。
もっと問題なのは、そういう風潮を支持する人が多いこと。堀江貴文社長のような若者が増えてくることにも危機感を覚える。
プロジェクトXを見て涙する僕らは、モノを作って売ったり、良いサービスを提供することが正しい商売と思っている。
ライブドアの姿勢には働くことの意義が感じられない。
一生懸命に会社を築いてきた人たちから見れば、ずぶの素人が社長になるのは嫌に決まっている。
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≪放送プロデューサー デープ・スペクター氏≫
■単なるマネーゲーム
ライブドアの堀江貴文社長は表向き「事業提携したい」と装い、敵対的買収を正当化しようとしている。それは、自分が放送局より進んだビジョンやノウハウを持っているように思わせようとしているだけだ。
フジテレビの方がやっていることは新しい。ラジオとネットの融合も、ニッポン放送はとっくの昔からやっている。これはマネーゲームに過ぎないと、ようやく世間が気付いてきた。堀江社長を「時代の寵児」と評価したり、「本格的なM&A時代が来た」と解釈するのは誤りだ。
社会は株主ばかり重視し過ぎてはいけない。私も株に投資しているが、株主はもうけようとしているだけで、全然偉くない。
誤解されては困るが、敵対的買収はアメリカで流行しているわけではない。意地汚い人がやることが多く、みんな嫌っている。今回ほど大義や必然性のないM&Aは例がなく、仮にアメリカで起こっても、社会的に認められず、ものすごく非難されるだろう。
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≪東海東京証券 マーケットアナリスト 鈴木誠一氏≫
■経営者と株主の接点希薄
ライブドアの堀江貴文社長は「時代の寵児(ちょうじ)」だと思う。今でこそ奇異な行動にみえるかもしれないが、これから先十年、二十年後には当たり前となることを先駆けてやっている。日本でのM&A(合併・買収)の取り組みは、欧米に比べて遅れているのだから。
今回のライブドアとフジサンケイグループに関する一連の報道については、企業間の市場のルールにのっとった取引上の話を、興味本位的な記事として扱っているのが問題だと思う。マスコミ全体としては、フジサンケイグループ側に寄っているが、世間の見方は、ライブドアの方に寄っているという印象を持っている。
フジテレビとニッポン放送は、いずれも上場企業という立場であるのにもかかわらず、経営者と株主の接点が希薄なようにみえる。フジテレビとニッポン放送には株主を意識して企業価値を向上させる努力が足りなかったのではないか。それが、問題がさらにこじれていった原因に思える。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/20kei001.htm