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ニッポン放送 収益7割グループの力 離脱なら有形無形の損失
ニッポン放送の経営権をめぐるフジテレビジョンとライブドア双方の主張は、同放送による新株予約権の発行差し止めを求めたライブドアの仮処分申請で、初めて司法の場に判断が持ち込まれた。ライブドアがニッポン放送株を買い進めて買収した場合、同放送の企業価値はどうなるのか。業界関係者には「フジサンケイグループ(FCG)から離脱した場合、有形無形のマイナスを抱えることになる」と否定的な声が強い。
フジテレビの境政郎常務は「ニッポン放送の収益基盤は、子会社のポニーキャニオンの収益やグループ事業に支えられており、単体の事業収益は全体の四分の一程度にすぎない」と話す。
同放送の平成十六年三月期連結決算によると、総売上高は千九十四億円。このうち最も大きいのは、ポニーキャニオンによるCD・ビデオ・DVDなどの販売事業で、六百三十六億円と全体の58・1%を占める。
これらの商品は、フジテレビの番組や映画、主題歌などのソフト化で、FCGの一員としてのシナジー(相乗効果)を最大限に生かした結果といえる。
一方、本業であるラジオ放送事業の売り上げは三百八億円(28・2%)。この中にもFCG各社との共催イベントの売り上げなどが含まれており、単体の事業収益はさらに小さくなる計算だ。
ライブドアが経営権を握り、FCGとの連携が断たれた場合、ニッポン放送の収益力は大幅に減少するのは確実だ。
新光証券の瀬川剛エクイティストラテジストは「ニッポン放送がFCGから離脱することになれば、極端な話、放送免許しか残らないことにもなりかねない」と語る。
ライブドアはニッポン放送のコンテンツのほとんどを自前で調達する必要に迫られ、同規模の事業を維持することさえ困難になる可能性が大きい。
一方、堀江貴文社長はテレビ番組で、ニッポン放送について、企業の時価価値を表すPBR(株価純資産倍率)が低いことに触れ、経営陣が株価を上げる努力を怠ったと指摘する。
PBRは株価をベースとした市場の評価額(時価総額)が、会計上の解散価値(株主資本)の何倍であるかを示す指標。株価を一株あたりの純資産額で割って算出する。
株価や純資産の算定基準日によって変化する指標の一つにすぎないが、東証一部上場企業のPBR平均一・七倍(二月二十八日の終値で計算)に対し、ニッポン放送は株価上昇も反映して三・八六倍。堀江社長の主張は、実勢を踏まえているとはいえそうにない。
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■差し止め申請で初審尋
インターネット関連会社のライブドアが、ニッポン放送が決定したフジテレビジョンを引受先とする新株予約権の発行差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁は一日、双方から意見を聞く一回目の審尋を開いた。審尋は非公開で行われ、約一時間半で終了した。
ライブドア側は仮処分申請の際、「予約権発行は、フジテレビによる支配権維持を目的としており不公正」などと主張しており、審尋でも同様の主張をしたとみられる。審尋に出席した熊谷史人取締役は「不公正発行であるという主張をした」と述べた。一方、審尋に出席したニッポン放送側関係者は、やり取りを明かさなかった。これまで亀渕昭信社長が述べてきたように「仮にライブドアが親会社になれば大きく企業価値が下がるため(新株予約権発行の)経営判断は必要」などと反論したとみられる。
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■ライブドア主張検証 ネットと放送事業の融合、著作権など採算疑問
ライブドアが目標に掲げている、インターネットとの融合を通じてニッポン放送とフジテレビジョンの企業価値を高めるという道筋には、高いハードルがつきまとう。すでに放送業界と通信業界は融合を目指す試みを始めているが、採算ベースに乗っているとは言い難い。番組をインターネット上で流すには著作権の問題もあり、専門家の間からは「ライブドアがフジサンケイグループの支配権を獲得しても何か新しいことができるか疑問だ」(野崎茂・元民放連研究所所長)との指摘も出ている。
ライブドアの堀江貴文社長はインターネット上に公開している二月十三日付の社長日記で「ブロードバンド(高速大容量通信)がまだ普及していない時代のAOLタイム・ワーナーはあまりうまくいかなかったけど、今は違う」と放送と通信の融合を急ぐべきだとの持論を展開した。
しかし、すでにNTTグループやKDDI、ソフトバンクなどが放送とブロードバンドを融合したインターネット放送に参入。エフエム東京とNTT東西などは共同で、ラジオとブロードバンドを融合したコンテンツ配信事業を平成十三年夏に始めている。インターネット放送の顧客数は数千人とビジネスベースには乗っておらず、エフエム東京などによるラジオのほうも「三年たって黒字化したものの、経常利益は一億円に満たない」(関係者)という。
また、監督や俳優、脚本家など一人ひとりの権利者の了解を得なければ、番組・映画などをインターネット放送で流せない。例えば、古い番組・映画を流そうとしても、著作権の権利を持つ人が一人でも故人となっていれば、放送は難しくなる。
こうした見方について、堀江社長は二月二十五日の社長日記で「確かに私が言っていることは誰でも思いつくことだし、特段未来の技術を導入して、ということなのではない」と語っている。
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◆ライブドア保有比率42.5%
ニッポン放送株の取得を進めているインターネット関連会社のライブドアによる同放送株保有比率が、2月23日現在で議決権ベースで約42.5%に達したことが1日、ライブドアが関東財務局に提出した株式の大量保有報告書で判明した。発行株式ベースでは39.56%。ニッポン放送の株式の中には議決権のない株式が含まれているため、議決権ベースの方が保有比率が高くなる。
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◆産経新聞社もTOBに応募
産経新聞社は1日の取締役会で、保有するニッポン放送株のほぼ全株について、フジテレビジョンが実施中の株式公開買い付け(TOB)に応募することを決めた。応募株数は7万4640株(発行済み株式の0.23%)。フジサンケイグループでは、すでにサンケイビルが1月31日の取締役会で、保有する77万6960株(同2.37%)全株のTOB応募を決め、申し込みを行っている。
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◆東証、リーマンに事実確認
東京証券取引所の時間外取引を使ったライブドアグループによるニッポン放送株の大量取得について、同取引を取り次いだとされるリーマン・ブラザーズ証券に対し、東証が事実関係の確認を行っていたことが1日、わかった。
今回の大量取得では、一般投資家への情報開示が不十分なまま取引が行われたため、金融庁が時間外取引を規制する検討に入ったほか、東証も運用を見直す考えを表明している。
東証の事実確認について、リーマンは「コメントする立場にない」(広報部)としている。
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◆新株予約権の資料一部訂正
ニッポン放送は1日、2月23日に発表した新株予約権の発行に関する資料の一部を訂正した。調達資金の使途に関する部分で、臨海副都心スタジオ建設に充当する金額を、新株予約権の発行総額と同額の158億7209万320円と明記した。ニッポン放送は訂正の理由について、「より具体的にしたほうがよいと判断したためで、スタジオの整備資金と考えている」としている。
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◆「時間外取得にはやや疑問」
経済同友会の北城恪太郎代表幹事は1日、ライブドアによるニッポン放送株の大量取得について、「法律のもとでできることは何でもできるのか、という価値観にかかわる課題。(ライブドアが)時間外で取得したということに対して言えば、やや疑問がある」と語った。また、双方のとった対応について「それぞれの取締役会の判断が、果たして既存株主の価値を高めるためにどうするか、ということを念頭にしていたのかどうかが不明確」と苦言を呈した。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/02kei003.htm