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「これは、男のやり方だ」。昨年のノーベル平和賞受賞者、シリン・エバディさんが自衛隊のイラク駐留継続について述べたという。多くの子供が学べる多額の資金を「軍」に投じる。その行為に疑問を投げかけた言葉だ。
人間の行動を性差で論ずることには基本的に反対だ。女性性が平和にむすびつくと単純に信じることもできない。
だが、ここではあえて象徴的意味で「男性的やり方」という言葉にこだわってみたい。ひとつには、現実にイラク問題への態度に一貫した性差がみられるからだ。
11月に毎日新聞が実施した世論調査でも、自衛隊の派遣延長を支持する男性は37%。対して女性は18%に過ぎない。ところが、イラク政策は男性中心の集団で決定されている。政治・経済活動における日本女性の意思決定力指数は世界38位。女性の意見が十分反映されていないのは明らかだ。
自衛隊駐留に否定的なのは、力でものごとを解決することへの根本的嫌悪があるからだろう。自分は安全圏にいる為政者が、他人を危険にさらすことへの不快感もあるはずだ。
これを現実を知らない情動的反応というのは簡単だが、では政府の意思決定は現場を十分知った上での分析的・論理的判断なのか。
すでにイラク攻撃そのものの論理が破たんしている。攻撃は情動に左右された決断と見る方が自然だ。非戦闘地域に対する小泉純一郎首相の発言も論理性を欠く。自衛隊駐留継続の意味を納得させる現地のデータも示されていない。
自衛隊をいったん派遣してしまった結果、撤退しにくい雰囲気が醸成されていることも確かだ。そこへ「逃げるのか」「テロに屈するな」といった勇ましい短絡的言葉で追い打ちをかけることは、冷静な判断の邪魔になる。
オランダは、軍の撤退にあたり「イラク人の治安能力を向上させた」と主張している。日本も、イラク人自身の復興力を向上させたのなら撤退の理由になりうる。対米関係が重要だというなら、早期に撤退しつつ対米関係を親密に保つ方策にこそ頭を使ってほしい。
「復興支援」が政府の建前だとしても、イラク人を助けたいと思う気持ちは性別によらない。そうした国民の善意につけこんで、なし崩しに自衛隊派遣を延長することは認められない。自衛隊の活動をイラク人に渡し、力によらない日本らしい支援を考えるべきだ。
今回、日本人はイラクについて何も知らないことを実感したのではないか。他国の文化や宗教、生活ぶりを知らずに人道支援も国際協力もできない。日本の安全も守れない。そのことを念頭におき、自衛隊は現地での体験を報告書として公開し、今後の参考にしてはどうか。男社会の意思決定が世界平和を実現したためしは、これまでないのだから。
毎日新聞 2004年12月2日 0時41分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041202k0000m070160000c.html