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(回答先: 拉致事件についてRENKは再度、警鐘を乱打する ・・・「8人死亡」説は金正日のトリック(奇策)でありトラップ(罠)だ! 投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 11 月 23 日 08:15:38)
北朝鮮マル秘「内閣指示」文書から読み解く飢饉再来の予兆
http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/041106.htm
RENK代表 李英和(関西大学経済学部助教授)
(註)本稿は『北韓』04年11月号(北韓研究所、ソウル)に掲載の拙稿の日本語版。
【1】 北朝鮮内閣はスケープ・ゴート
北朝鮮の政治体制といえば、金正日による個人独裁体制がすぐに想起される。一般に金正日が北朝鮮の全権を掌握(独占)するかのように思われている。実際、金正日は最高軍事指導機関の国防委員会委員長で、朝鮮人民軍の最高司令官を務める。そして、一党独裁の朝鮮労働党総書記として君臨する。だが、金正日が兼務しない(しようとしない)国家機関の役職が存在する。「内閣」がそれだ。
洪水のような北朝鮮報道でも、「内閣」について報じられることはほとんどない。98年の憲法改正で最高行政機関となり、国家の経済事業全般を統一的に指揮監督する権限を持つ。国民生活に直結するであり、現在は洪成南が「内閣総理」を務める。「夜の目も見ずに人民生活向上に心をくだく」はずの将軍様がどうして総理を兼務しないのか。その理由は先代独裁者(金日成)の「遺訓」とされる。「党務と軍務に専念し、経済問題に関わるな」というのがそれだ。
おかげで金正日とは別人が内閣総理の椅子に座る「栄誉」に浴することになる。普通の国なら「内閣総理」(=首相)に就任するのは文句なしの栄誉である。だが、北朝鮮では事情が異なる。私が留学中(91年)に聞いた話では、首相指名を受けるや、その人物は緊急の親族会議を開くという。親族会議に華やいだ雰囲気はない。これから降りかかるだろう災難に一族は沈痛な面持ちで覚悟を決める。誰が首相になったとしても、経済運営が成功するはずはないからだ。ただし失敗の責任だけは確実に回ってくる
憲法改正で形式上は経済政策の決定権が労働党から内閣に移譲されたが、実際には党の指導から自由の身になったわけではない。将軍様はやれナマズの養殖だ、やれダチョウの飼育だ、と相変わらず「天才ぶり」を発揮して内閣と国民を振り回す。ただし、金正日は大所高所から指導するだけで、政策遂行と結果責任は内閣総理が負う。経済不振の責めを問われ、辞職で済めばまだ幸運な方で、へたをすると「炭鉱送り」が待つ。だから誰も首相になりたがらない。だが将軍様の意向は断れない。首相指名の貧乏くじを引かされた者はわが身の不幸を嘆き、災難と諦めるしか術がない。
そんな内閣総理の朴奉珠には少しばかり同情を覚える。だが、本当の意味で災難を被っているのは北朝鮮国民である。金正日式経済改革(02年7月1日施行)以降、国民生活は大混乱に陥った。後述するように、今年は未曾有の猛インフレで経済混乱が極限に達しており、来年には90年代後半の大飢饉の再来が懸念される。それもこれも北朝鮮内閣がろくでもない経済政策を連発してきたせいである。そこで、憤懣やるかたない北朝鮮国民になり代わり、RENKがここに「内閣指示」の秘密文書を公開する。
【2】 「内閣指示」の秘密文書
同文書(二通)を奪取したのはRENK 所属の民主化闘士で脱北青年の金萬鉄氏(34歳、仮名)である。同氏は、98年に飢餓映像撮影に初成功して2001年度のローリー・ペック賞(RORY PECK AWARDS)に輝いた脱北青年の安哲氏(仮名)と並び、日本の言論界では有名な脱北者である。中国潜伏中の同氏はこれまで、数度にわたって北朝鮮へ再潜入し、秘密文書の奪取と内部映像の秘密撮影に成功してきた。2002年10月には「価格と生活費を全般的に改定する国家的措置をよく知り、強盛大国建設を力強く早めよう」と題する「経済管理改善措置(7.1措置)」に関する対内限定文書(「講演及び談話資料」朝鮮労働党出版社、02年6月1日発行)を奪取して全世界に公表した。本年5月末には北朝鮮国内の飢餓映像の撮影に成功し、言論界に衝撃を与えた。この金萬鉄氏が今年10月初旬に奪取したのが「内閣指示」である。
RENK の民主化闘士が二年前から内部文書を連続して奪取してきたせいなのか、北朝鮮当局は最近、文書の管理統制を格段に強めている。おかげで最近は実物の持ち出しがきわめて困難になっている。今回公表する秘密文書は、現物を持ち出す代わりに、写真撮影(接写)を行なった。この方法なら、秘密警察(保衛部)が文書の持ち主を割り出し、民主化闘士と協力者を摘発する事後弾圧の糸口を与えないですむ。
【3】 天井知らずの物価騰貴
右肩に「秘密」と書かれた文書の末尾には「朝鮮民主主義人民共和国内閣」の朱印が押してある。一通はB5版3頁の「内閣指示第58号」(03年11月19 日)で、内容は北朝鮮版の財政再建策である。もう一通は同5頁の「内閣指示第9号」(04年1月31日)で、土地(農地)改革の導入・実施に関するものである。
古今東西、専制王朝が滅亡する原因は主に三つある。役人による不正腐敗の横行、疫病の蔓延、そして物価騰貴(インフレーション)である。金正日体制下の北朝鮮は現在、この王朝滅亡の三拍子が揃いつつある。
役人の不正腐敗は今に始まったことではない。金日成の時代から横行していた。北朝鮮の役人の不正腐敗は「なくならない」のではない。構造的に「なくせない」のである。不正腐敗を見て見ぬふりをしてくれるからこそ、役人たちは労働党を支持する。さもなければ、労働党は強力な支持層を失う。昔も今も国営商店に品物がないのは、品不足というよりは、役人による横取り・横流しのせいである。最近、韓国による支援米を北朝鮮当局が国定価格(1キロ=46ウォン)で販売している事実が問題となった(10月20日付「東亜日報」)。だが、国営商店で売るのなら、まだ良心的な部類に入る。一般市場価格が1キロ=1500 ウォン(9月初旬、咸境北道茂山郡調)なのだから、国営商店から横流し(転売)すれば濡れ手に粟のぼろ儲けができる。
疫病の流行も今に始まったことではない。医薬品不足と栄養失調のせいで、毎年のごとく赤痢やコレラなどが流行する。最近では結核の蔓延がひどい。だが、今年になってもっと深刻な二種類の「社会的疫病」が蔓延し始めている。麻薬(アヘン)中毒患者と自殺者の増加がそれだ。北朝鮮が国策でケシ栽培を奨励し、海外に麻薬を密売している事実はあまりに有名である。だが、自国民のアヘン吸引については厳罰で臨んで来た。に処している。極度の医薬品不足のせいで、ケシ栽培農場の農民が鎮痛剤の代わりにケシ汁を飲むことはこれまでもよくあった。だが、最近は本格的なアヘン吸引が都市部住民の間で急速に広がっている。まるで中国の清朝末期を想起させる。他方で、アヘン吸引と同じく処罰対象となる自殺が、これも都市部を中心に増加している。例えば、北朝鮮有数の港湾都市・元山市では、東海に身投げする老人が増えた。生活難を背景にした入水自殺だが、たぶんに「口減らし」の要素が大きい。麻薬中毒と老人自殺の急増は、金正日体制に絶望した一般国民の強い「厭世気分」の表れといえる。
上記の滅亡の二要因よりも深刻なのが猛烈な物価騰貴である。とくに穀物価格の暴騰ぶりは前代未聞の水準に達している。02年7月の改革でコメ1キロ= 40ウォン(国定価格)で始まったものが、03年12月には一般市場で三倍以上の180ウォン(韓国支援米)に上昇した。これで上げ止まりと思いきや、今年に入ってからは天井知らずの勢いである。3月=300ウォン→5月=500ウォン→7月=800ウォン→8月=1000ウォン→9月=1500ウォンという調子である(咸境北道茂山郡、RENK 調べ)。もちろん一般国民の主食はコメではなくトウモロコシなのだが、トウモロコシを初めとする雑穀の値段も同様の比率で上昇している。労働者の月収が 2000〜5000ウォン(支給された場合だが)なのだから、一般市場(旧農民市場)での食糧購入は絶望的な状況である。おかげで近年影をひそめていた餓死者や浮浪者(児)の姿が再び目立ちはじめている。
まさに殺人的と言うべき物価騰貴だが、それより問題なのは物価騰貴の原因にある。穀物の国内生産量と導入量(輸入+援助)は横這いか微減にある。季節要因によるものなら、収穫期直前(9月)の米価は下落を示す。従来、北朝鮮でもそうだった。ところが今年は逆で、穀物価格は天井知らずの上昇ぶりである。したがって、供給量不足や季節要因による急激な価格上昇は考えられない。考え得る有力なインフレ要因は当局による通貨増発(乱発)しかない。
【4】 金正日式財政再建の真の狙い
十年越しの経済不振のなかで、北朝鮮政府は慢性的で深刻な歳入不足に陥っている。国家予算は90年代前半に比べて半減している。そのなかで軍・党・政の不生産的部門へ継続的に資金供給をおこない、さらに稼働率の著しく低下した生産的諸部門へも資金を供給し続けねばならない。これが通貨増発の主因であることは疑いの余地がない。
歳入欠陥に基礎を置く野放図な通貨増発が破滅的な物価騰貴に至り、やがて深刻な社会不安を招く恐れのあることは北朝鮮当局も当然気づいている。そこでそれである。実施されたのが起死回生を狙った財政再建策である。昨年から本格導入された企業の独立採算制と新税制がそれである。RENKが今回入手した「内閣指示第58号」は、金正日式財政再建の真の狙いと問題点を示してくれる貴重な公式文書である。
北朝鮮経済の根本的問題(構造的病弊)は「経済の四重構造」にあるとさてきた。金王朝とその親衛隊の「第三経済」、人民軍関連の「第二経済」、人民経済の「第一経済」、そして人民経済から漏れ出した闇市場経済の「第四経済」である。国防費(第二経済)は予算の実質30%以上(名目は約15%)を占め、党経済(第三経済)は国家財政の20%以上を吸い上げるとされる。そのうえ、残りの人民経済(第一経済)は闇市場(第四経済)に侵食されてきた。これでは人民経済の産業再生はとてもおぼつかない。したがって、真の財政再建には四重構造の解消、とりわけ第三経済と第二経済の縮小が不可欠となる。最低でも第一経済の優先と、これを担当する内閣の独立・権限強化が必要とされる。
ところが、02年実施の「7.1措置」は上記の課題を等閑視したものすぎなかった。真の狙いは、大飢饉の下で肥大化した「第四経済」を、「第一経済」の下に再吸収しようとすることにあった。要するに、農民市場を国営商店に置き換える試みである。だが、市場原理の前に国営市場があえなく敗退し、ぎゃくに当局が農民市場を公認するはめに追い込まれた。
「内閣指示第58号」はこの失敗を追認する一方で、商人と内職従事者への徹底課税を図る方針を盛り込んでいる。北朝鮮では現在、急速な貧富の格差を背景に新たな階層分解が進んでいる。金萬鉄氏の報告書によれば、「コメの飯と肉の汁を食べる者が3割、トウモロコシ飯を食べる者が4割、トウモロコシ粥をすする者が3割」である。4割の中流層は「市場で少しなりとも金儲けができる者」で、3割の下層民は「半分以上が農民、残りは職場にきちんと出勤して商売もできない労働者とその家族」である。財政再建の柱のひとつが、このトウモロコシ飯しか食えない「新中間層」を狙い撃ちにした収奪である。
この収奪策は税収増を企図するのと同時に、金正日=労働党が抱く「新中間層」への敵意の表れでもある。金正日は01年10月講話で新中間層を次のように指弾している。「これという仕事もせずにごろつき、遊びながら無駄飯を食うようになり、はなはだしくは職場を離脱してうろつき商売をする現象」(「強盛大国建設の要求に合わせて社会主義経済の管理を改善することについて」、『世界』04年11月号所収)と。この新中間層を増税で締め上げる一方、新中間層の抑制と下層民の貧困対策の両方を狙って打ち出されたのが、後述する「内閣指示第9号」(土地改革)である。
だが、歳入不足の主因は、「第58号指示」が述べるように、各種機関と企業所が「自己の特殊性を云々」して「国防費納付金、土地使用料、地方維持金等の国家納付金」を納めずに収益金を流用してきた現象にある。納付金を納めない機関と企業所にもこれまで資金供給と予算支出が実施されてきたことが窺い知れる。その対策として、今後は未納の機関・企業所に「国家予算資金をいっさい支出しないようにする」と述べる。だが、検閲機関と監督統制機関による財務調査について「秘密企業所は除外」としており、新方針の実効性はきわめて疑わしい。
【5】 継続される人民経済への搾取
それよりも問題視すべきなのは「第二経済委員会」の人民経済への介入が相変わらず担保されている点にある。形式上は「国の経済司令部である内閣」が「経済事業を統一的に掌握、指導」することになっている(上掲「講話」)。だが、「7.1措置」も実際には金吉万第二経済委員長の指導下に実施されたとされるように、「先軍政治」の下での財政再建も第二経済委員会の介入から自由の身になったわけではない。その証拠に「第58号指示」には「財政、金融、生活費、価格等」の問題に対処する「非常設国家金融委員会」に第二経済委員会の副委員長と人民武力部の財政局長が委員として加わっている。「7.1措置」と同様、財政再建の目的が疲弊しきった人民経済の産業再生よりもむしろ、軍需産業の維持・発展に関連することを強く示唆するものといえよう。
「第9号指示」は人民経済再生への熱意の欠如をより端的に物語る。金正日は今年4月頃から全国的に「土地改革」を実施した。改革の目玉は各種機関と企業所に農地を分与することにある。これを指して、中国式を上回る本格的な土地(農地)改革と評する向きもある。だが、実態は「改革」どころか「急場しのぎの思いつき」もしくは「悪ふざけ」と呼ぶべきものである。
元来、北朝鮮はれっきとした工業国である。農業に資源を配分して食糧増産(自給)を図るのは邪道(経済的非効率)の極みと言ってよい。本来なら20%程度にまで低下した民生工業部門を建て直し、工業製品を輸出して食糧輸入を図るのが正道である。ところが金正日はこの課題を放棄して、工場労働者を「農民」(兼業農家)に変えようとしている。カンボジアの大虐殺者、ポル・ポト流の時代錯誤の発想である。
金正日は昨年度に新税(土地利用税)を導入した。全土で大規模な検地に着手し、農民の「隠し田畑」にまで課税の網を掛けた。定額の税金を納めれば農民の取り分はかえって増加するとの触れ込みだった。これを真に受けた農民の営農意欲は高まったが、いざ収穫期が来ると当局は様ざまな口実を設けて大半の収穫物を持ち去った。結局、80キロのコメしか手元に残らず、やむなく脱北する農家も出た。露骨な国家的詐欺であり、農民収奪だった。そのせいで、大飢饉のときと違って、農民の窮乏化が近年著しい。
【6】 時代錯誤の農業改革
これに味をしめたのか、今年になって金正日は第二弾の土地改革に乗り出した。それが「内閣指示第9号」である。本来は1月にも実施の予定だったが、各行政単位の準備不足のために実施がのびのびにされていた。それが中国政府の対北コメ禁輸措置(3月24日付)で急遽実施の運びとなったものである。
北朝鮮の民生部門の工場はほとんど稼動していない。ある中堅都市の製紙工場は十年間も動かないままである。原材料と電気の不足が原因だが、それでも従業員は毎日出勤する。出勤簿にハンコを押してもらうことで、国営商店での配給権(国定価格での食糧購入)が得られるからである。だが、出勤しても仕事がないので、午前中は講演会や生活総和に当てられる。午後には退勤して市場で商売をしたり家で内職をしたり、山に入って薪拾いや山菜採りに励む。金正日はこの大量の遊休労働力に目を付けた。企業所単位で山の斜面や荒れ地を分与して従業員に耕作させ、食糧の増産(自給化)を図ろうというのである。その上で、春先に立てた生産目標の約20%を税金として納付させ、残りを従業員に分配する仕組みである。
種子は支給されるが、肥料や農機具などの営農物資は自己調達なので、よく計算してみると利益は大して残らない。耕作地の分与は個人単位ではなく企業所単位で、貸与期間は一年と短いので、営農意欲も投資意欲もわかない。おかげで、従業員の大半は分与された耕作地に見向きもしないのが実情である。このような改革が工場労働者に歓迎されるはずはない。従業員の大半は相変わらず商売や内職に精を出す。この種の従業員を狙い撃ちにして課税強化を図ったのは上述の通りである。結局、商才のない一割足らずの従業員が仕方なく農作業と泥棒対策の見張り番に就く。だが、それでも金正日という大泥棒の前には懸命の見張り番も役立たない。
こうした国民収奪の結果、「食べるという基本的人権が著しく侵害」され、依然として「650万人が飢餓線上をさまよっている」(10月14日、国連人権委員会・ジーグラー特別報告官)。通貨乱発による猛インフレと増税で「食べる権利」を奪い、労働者を農民化するようでは産業再生どころの話ではない。むしろ来年には飢饉再発が懸念される。金正日自身が「講話」で述べるように「誰も食べなくては働くことができない」。そのために中国式の改革開放政策を採るのではなく、金正日は逆方向に舵を切る。「農業生産に集中し、国のすべての食糧の源を漏れなく掌握し、人民に対する食糧供給を一日も早く正常化するよう」(同上)にと講話を垂れる。だが、真の問題は勤労者の「革命的熱意」や「創造的積極性」の欠如などにはない。金正日の時代錯誤にある。