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しかしロシアもなめられたもんだ。ベスラン事件は事実上「ベスラン事変」になっちまう可能性があるな。とんでもないことだ。わが母なるロシアの国境がますます狭くなっていく。辺境からじわじわのロシアの実効支配が弱められていく。でもシベリアにしろ、カスピ海にしろその辺境に油田が集中してるんだからいやになっちまうよ。ユーゴの時にもっと決然とした手を打っておくべきだったんだ。あれで一気にタガが緩んじまったんだ。コソボなんか天然資源の宝庫だったのに一気に「奴ら」に乗っ取られちまった。でもあのときはオレは一介のKGB官僚で何もできなかったしなあ。あの飲んだくれのエリツィンの馬鹿親父の責任だ。死刑だ!
ホドルコフスキーの野郎を逮捕した意趣返しもあるんだろうなあ、ベスランは。いっそのこと監獄でぶっ殺してやろうか。いやいや今はKGBの中にも「奴ら」の息のかかったのがゴマンといるからあぶなくってしょうがねえや。おかしなことしようとすればすぐに暴露されちまう。第一オレ自身の命だって狙われちまう。全くとんでもない世の中になっちまった。今となっては今回の危機を利用してロシア軍の強化につなげてオレの保身を図るしか方法はないだろうなあ。まさかベスランが「奴ら」の謀略だって暴露するわけにもいかねえしなあ。こっちもさんざん汚い手は使ってきたし、逆にこっちのやった謀略も全面的に暴露されちまうだろうなあ。「奴ら」にとってはロシアのメディアでさえ自家薬籠中みたいなもんだからなあ。いわんや米英のメディアは手駒みたいなもんだしな。とても歯が立たねえよ。
まったく困ったもんだ。昔は侵略は100個師団と100個師団の草原の対決って感じで、ずっと明快だった。今は侵略の先兵は「テロリスト」だ。こんな事件の連発で、最後はモスクワ大公国の時代まで領土縮小ってことになっちまう可能性があるな。そうなったらオレはどっかに亡命してスイス銀行の預金金利で食べてくしかないな。英語勉強しといてよかった。