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社説:
学校占拠テロ 独立運動逸脱した残忍さ
ロシア南部の北オセチア共和国で起きた学校占拠事件は1000人を超える死傷者を出す大惨劇となった。
子供たちが捕らわれていた学校で何が起きたのか、どうして爆弾が破裂し、治安部隊の強行突入になったのか。いまだに不明な部分は多い。
証言によれば、武装勢力は多数の子供たちを狭い体育館に詰め込み、水・食料を与えることもなく、抵抗する者を容赦なく殺害した。最後は「神は偉大なり」と叫んで、逃げる子供たちに銃弾を浴びせ、爆弾を破裂させたという。
武装勢力のなかには複数の女性もいたというが、明らかにマインドコントロール下にあり、判断停止の状態にあった。殉教思想を叫ぶ指導部の忠実なコマンド(兵士)として、自爆した可能性が強い。
なぜ子供たちをテロの対象としたのか。抵抗できない弱い子供たちを大量に殺害することでロシア社会を震撼(しんかん)させるという狙いがあったと思われる。
武装勢力の要求はチェチェンの独立とされるが、独立のためには罪のない子供たちを大量殺害しても構わないということなのだろうか。通常では理解できない残忍な考え方だ。人間としての最低限のモラルも破っている。
今回の事件は、チェチェン独立運動が民族独立という大義から逸脱し、狂信的な無差別テロへと変質していることを見せつけた。国際社会の独立運動への支持も大きく減るだろう。
その一方で、なぜ彼らが残忍なテロ行為へと走ったのか、その背景を考えると、プーチン政権の強硬政策とイスラム原理主義の浸透が浮かび上がる。
歴代のロシア政府は民族独立を求めるチェチェンの人々の声には耳を貸さず、独立運動を抑圧してきた。とりわけプーチン政権になってからは「テロには屈しない」とのスローガンを掲げ、一切の対話を拒否した。
独立運動内部の穏健派は力を失い、軍事闘争優先の過激化路線が力を得る結果になった。
軍事優先派はアルカイダなどの国際イスラム原理主義組織の支援を仰ぎ、聖戦思想を受け入れた。イスラム殉教テロが独立運動の前面に大きく出てきた理由だ。
これに対し、チェチェン穏健派はテロを否定せず、テロ思想を容認する態度をとった。
この結果、穏健派とロシア政府は対話の糸口を失い、テロという「鬼っ子」は成長し続けたのだ。
このチェチェンをめぐる状況は特異な例ではない。テロが吹き荒れるユーラシア南部のイスラム地域ではどこでも同じような状況を見いだすことができる。
権力側はテロを生む土壌を改善せず、武力弾圧に走る。権力を批判する側はテロという手段しか考えず、テロ思想を拡大する。
流血は流血を呼び、無実の子供たちが犠牲者となった。
テロを否定し、テロを生み出した背景にもっと目を向けるべきだ。さもなくば、子供たちの悲劇は繰り返されるだろう。
毎日新聞 2004年9月7日 0時28分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040907k0000m070135000c.html