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何を問い掛ける冬ソナ現象
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投稿者 とっぽ 日時 2004 年 8 月 18 日 15:39:46:OhNus5n6NGOT.
 

東奥日報 社説  2004年6月28日(月)

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何を問い掛ける冬ソナ現象

 甘いピアノのテーマ音楽。切なく歌う声。そぼ降る雪。北国の美しい冬景色。雪上を駆ける主人公の男女高校生…。限りなく、どこまでもロマンチックな導入で始まる韓国ドラマ「冬のソナタ」が空前の人気だ。

 多くの日本女性が毎土曜深夜、胸キュン感覚にときめく。団塊世代を中心に、広く日本女性のハートをしっかりつかんだこの「冬ソナ」現象、一体、何を語り掛けようとしているのだろうか。

 多感な高校時代、父親探しの翳(かげ)を引きずる初恋相手チュンサンを突然の交通事故で失うユジン。十年後、うり二つの男性ミニョンと出会う。幼なじみサンヒュクと婚約しているユジンの心は複雑に揺れ動く…。

 舞い散る雪と積雪の白い背景。きれいなBGM。甘酸っぱい初恋の、純情を劇的に描いたこのドラマ。韓国放送公社(KBS)が制作、NHKが衛星第二で昨年四、十二月に放送、この四月から総合テレビで再放送中だ。

 ドラマの一シーン。

 −スキー場で涙をこらえるユジン。ミニョンはさりげなく降雪機の下へ連れていく。

 「泣くにはここが一番ですよ。誰にも聞こえないから」。こぼれ落ちる雪を浴び、泣くユジンをミニョンは遠くで見守る−。

 あくまでも相手を気遣うこんなロマンチックなシーンが相次ぐ。随所に散りばめられた詩的なセリフ。多用される逆光、斜光狙いの撮影アングル。柔らかなタッチ。主人公にピタリの声優…。

 トレンディードラマ流行以降の日本にみられなくなった一途で真剣な純愛が、全編でクローズアップされる。視聴女性は我を忘れ、感情移入し、はまっていく。

 チュンサン、ミニョンの二役を演じたペ・ヨンジュン。ユジン役のチェ・ジウ。ともに来日、女性ファンの圧倒的人気を博した。「ヨン様」と呼ばれる“微笑の貴公子”は、女性ファンのハートをとらえて離さない。

 「日本人男性にない謙虚さ、恥じらい、誠実さがある」(八十三歳女性)「ただ優しいだけでなく、時に強引、時に力強く女性を愛する。相手の幸せを祈って身を引く潔さ。女性があこがれる理想そのもの」(四十代女性)「心が洗われ、昇華する。人生に張りができた」(五十代女性)…。

 ひたむきで純粋な相思相愛。多くの女性が息をのみ、魅せられ、いつしかいやされる。

 「高校時代に戻った気分で気持ちが若返る」「恋は年齢に無関係。純愛に一緒に浸れてうれしい」「雑多な日常から離れて我を忘れられる」…。

 深夜のNHK再放送にしては驚異的高視聴率。20%を超えた地域もある。日本でこれほどヒットした韓国ドラマは例がない。特番編成で休止した時は、その後三日間で三千件以上の抗議電話が殺到したほどだ。

 昨年度のNHK連結決算。一般企業の売上高に当たる経常事業収入は、前年度比九十八億円増の七千四百四十五億円。増収増益に転じた。韓国語学習者が急増、関連本やDVDの売れ行きが大幅に増え、韓国のロケ地は日本人観光客の人気コースになった。

 「(前と違い)今は逆に、日本ドラマにうそっぽい自然さ、自然に見せようとする違和感を覚えている」。ユジンの声役を演じた女優田中美里さんは純な韓国ドラマの素晴らしさを絶賛する。

 恋愛の本質とは一体、何か。「冬ソナ現象」は視聴者だけでなく、ドラマ制作者にも何かを問い掛けてはいないか。

 特定の人気俳優や時流、テクニック、形式、技術に走って本質を忘れてはいけない、と…。人間も、愛も、本質は永遠に変わりないのだから、と…。


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