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(回答先: 「点と線」、北支(中国北部)派遣軍二等兵・白上謙一(1) 投稿者 ジャック・どんどん 日時 2004 年 8 月 15 日 21:58:18)
私はこのごろ、国民の運命を掌中ににぎっている政治家たちが、どこの国においても相当におろかであり、しかもどこの国民も、もっと愚かにも彼らの生命と財産をその人たちにゆだねているのではないかと、不安になってきている。
昨年からの私の病気は治ったのだが、この分ではあまり生きられないのではあるまいかとさえ思う。もっとマジメにならなければならぬ。
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本ができたら是非読んでもらいたいと思う人のひとりに、かつての陸軍兵長、遠藤国夫という人がある。まだ、私が北支(中国北部)派遣軍の一等兵だったころの友人である。
「地方(軍隊以外のこと)にいれば立派な学校の先生のお前が古参兵の洗濯などまでやらされて大変なことだなあ」となぐさめてくれる兵隊さんがたくさんいた。
そんな時よく私は答えたものである。
「大の男が洗濯や掃除をするくらいで食っていけるところは軍隊ぐらいなものですよ」
この答えの痛烈さに気づく兵隊は少なかった。みんな悪賢く、そのくせ驚くほど無知なので底が浅く、彼らは要するに愛すべき本当の日本人であった。
気がついて見ると復員以来、私は標準的な日本人とほとんど付き合っていない。例えば私が日ごろ付き合っているのはたいていは大学の先生であり、「何てこの人は無学なんだろう」などと感じ入る人が実は学位をもっていたりするのである。
軍隊にいた時付き合っていたようなのが本当の日本人なのに。
革命を起こしたり、代議士に当選するためには、そのような日本人とつきあわねばならぬ。
私は娘に軽蔑されながら、時にテレビの画面にボンヤリながめいるのだが、そんなときしか本当の日本人と付き合っていないのではないかと思ったりする。
話が横へそれてしまった。兵隊のとき、私はよくこんなことを言っていた。
「私は生物学専攻の理学士です。擲弾筒の射程から初速度を計算することもできますし、ドベルの『人体寄生アメーバ』を読んだこともあります。しかし、私は現在軍医部所属の本科(歩兵)の一等兵です。わたしをこのような使い方をすることによって、日本帝国は、私から復讐されているようなものです。もちろん、幹部候補生の志願もいたしません」
その時「君は恐ろしいことを言う人だね」と恐怖の色を浮かべた人がいた。それが、はじめに書いた遠藤さんであった。
彼こそは軍のなかで1人の人間として、学徒として遇してくれた唯一の人であった。
復員をいて、生活は苦しく、とりわけ私は彼が認めてくれたほどの学者でないことが恥ずかしく、私は彼から離れてしまった。なつかしい人である。
適材が適所に用いられぬ場合用いられぬ人の不満などは、用いなかった機関がそのために受ける損失、私流に言えば「復讐」に比べればとるに足らぬものである。
1966.9.26
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