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「食 くらし」シンポジウム 輸入・加工食品 農とのかかわり深め 「本物」選択へ一歩を
20041115付 朝刊掲載
http://www.nishinippon.co.jp/news/2004/shoku/shoku5/17.html
「食 くらし」シリーズで輸入・加工食品の実態を取り上げた西日本新聞社は十月三十一日、福岡市中央区のエルガーラホールで、シンポジウム「知らない食を知る―輸入・加工食品 選ぶのはあなた」を開いた。輸入・加工食品の現場の課題や、食の安全性を高めるために検討すべきこと、消費者の食や農への結びつきの必要性―などを討議。パネリストと、会場に詰めかけた約六百五十人の参加者との意見交換も交えて、いまの食生活の中で消費者が取り組めることについて考えた。
▼CONTENTS
■シンポジウム 農とのかかわり深め 「本物」選択へ一歩を
■基調報告 横浜港に見る食の現実 自給率向上は不可欠 奥村芳明さん
■会場アンケート293通の声 知らない怖さを痛感 安さの「裏側」考える
■あなたの行動が未来開く 編集委員 佐藤弘
●パネリスト
奥村 芳明さん 港湾労働組合書記長
城田 知子さん 福岡県栄養士会会長
中山 博友さん 九州惣菜協会会長
下村 明魅さん アトピーの会・無添加 ハウス代表
<コーディネーター>
田中 一彦 西日本新聞社編集企画委員長
佐藤 弘 同編集委員
▲城田知子さん しろたともこ 1960年、中村学園大学短期大学部食物栄養科(旧中村栄養短期大学)卒。現教授。管理栄養士、医学博士。担当は栄養指導論など。64歳。
■危機管理論が必要・城田さん 食材85%は外国産・中山さん 体がリトマス紙に・下村さん
●実態
―輸入食品の実態について、奥村さんの報告を聞いてどう感じたか。
城田 加工食品の添加物の問題はこれまで、かなり勉強してきたが、塩蔵ワラビなどが港に野積みの状態で何年も放置されている。それを塩抜きし、各地の特産品として売られているなどいった実態は初めて知った。こんなことは学生に教え、きちんとした栄養士を育てていかないと。
―学生に食物危機管理論は必要かも。
城田 そう。最近の学生は、魚は刺し身になっているのを買うのが当たり前。食品学はあるが、食と生産の現場を結びつけて考える教科がない。カリキュラムに食品の危機管理論を盛り込む必要があると思う。
―港見学会はいつから始めたのか。
奥村 一九八四年ごろ、韓国米輸入問題が起きたのがきっかけ。港湾労働者としてどう対応するのかと議論したとき、農家や消費者と交流。港の輸入食品を見たいという声が上がり、港湾労働者の案内で輸入食品の実態を初めて見た。これは改善しないと大変だとなり、以来十五年以上、いろんな人々に現場を案内して説明する見学会活動を続けてきた。これまでの参加者は二十万人近くに上る。
―実態が伝わっていないのはなぜか。
奥村 中央の大手新聞社が本格的な報道をほとんどしてこなかった。輸入食品を増やすという立場の報道を基本にし、話題性で輸入食品を取り上げるだけ。マスコミの宣伝不足が大きい。西日本新聞の、食についてのこうした腰を入れた取り組みは大事だ。
会場(福岡県甘木市、五十歳女性) 加工食品で、原産国はどう表示され、何%混ぜれば国産になるのか。どこに問い合わせれば分かるの。
奥村 それは農水省。ただ、検疫所に「輸入食品の検査はどうなってますか」と聞けば、「頑張ってます」と回答されるだけ。善しあしは別にして法的には合法で、原産地表示も法律の範囲内。自主的に専門調査をしている機関と連携するなどして、正確な情報を得るのが大事だ。
―取材を通じて、検疫所職員の悔しさも感じた。「ざる」と指摘されるが、人が少なすぎる。
奥村 そう、人数が全く足りない。厚生労働省も毎年、増員要求をしているが、輸入食品を増やすのが国家方針。輸入食品の安全性を検査する検疫所職員の増員は国賊的な行為とみられている。国民の運動が大切。一回言って駄目でも、あきらめず常に言い続けることが必要だ。
中山 弁当総菜に携わって約三十年。業界の実態を話すと、食材の85%は海外産を使っている。国産はなかなか手に入らない。見た目の良さや保存のために、大量の添加物が使われている。また、弁当には自社加工の品が少なく、ハンバーグとかコロッケなど、大半はどこからか買って詰めている。だから弁当の味もメーカーの味だ。弁当業界では保存料、着色料とかはあまり使わないが、こうして仕入れた材料に入っている。発色剤の亜硝酸ナトリウムはハムの中に、リン酸塩はハンバーグ、かまぼこに入っている。
―リン酸塩はどんな働きがあるの。
中山 リン酸塩はジューシー感を出すために入れる。リン酸塩を過剰摂取すると、リンがカルシウムとくっつき尿と一緒に排出される。
―骨がもろくなる?
中山 それと精神に障害を来す可能性がある。きれやすくなる。
―加工がかなり施された食品は、栄養素的にも生鮮物とは違う。
城田 時間がたてば栄養は落ちる。料理するにしても新鮮な食材、加工度の低い方がよい。
奥村 いずれにしても輸入食品はできるだけ買うのは控えたがいい。見た目は悪くても日本の大地で作ったものを使い食べるという方向に変えていく必要がある。単に値段が安ければいいという時代は去った。より安全、より新鮮、より栄養がある、日本の大地でできたもの、無・低農薬のものが良い。消費者の方からニーズを明確に発することが現状を変えていくのに極めて重要だ。
下村 私は三十二歳まではスーパーのチラシを見て特売を買いにいく主婦だった。が、アトピー性皮膚炎になって以来、添加物などが入っている食品を食べると、かゆみで夜中も眠れなくなった。輸入オレンジを食べたら顔が腫れ上がる。輸入オレンジにはとんでもない物が使われていると分かる。私の体がリトマス試験紙みたいだ。それにしても、塩蔵の輸入食品の大変な実態があるのに、なぜ改善されないのか。
奥村 話は簡単。いまの政治が、日本の農業はつぶしてもよいという方向に進んでいるからだ。消費者も、より安くという宣伝に乗り、輸入食品がいいという方向にいった時期が続いた。やっと最近になって、日本の食料、農業をどう考えるか、自分と子どもの健康をどう守るかという点で関心が高まってきた。実態を変えていくチャンス到来だ。一緒に運動を展開してゆきたい。
▲中山博友さん なかやまひろとも 弁当会社社長に就いた1993年に化学調味料無添加に、98年から食材を有機野菜に切り替えた。地域ぐるみの食育、ごみ減量運動も。52歳。
◇
■添加物抜き目指す・中山さん 産地表示の徹底を・下村さん
●安全性
―総菜業界の課題について。
中山 私たちの産業が大きくなった背景は、有職主婦が増えたこと。その中での料理の作り方が問題。お母さんの手作りの料理を代行して総菜、弁当を作っていたが、数が増えると産業になり、コスト削減が優先されるようになった。季節の野菜を使いたいが、切れたら消費者に見放されるのでは、と不安になる。結局、年中ある食材でないと使えなくなる。
―それは消費者が望んでいるからでは。
中山 そう。弁当という性格上、戸外に持ち出すことがあるので、いたまないように、防腐剤やpH調整剤を入れることになる。それを食べた人は体の中でpH調整されて体調が悪くなる。原材料、調味料の安全性を確認した上で、食品に菌がつかない方法(HACCP=ハサップ)を確立。防腐剤、制菌剤を入れなくていい調理法をすれば、食の安全性は守れる。それでクレームがついたことはなく、こうした製造法を普及したい。お客さまも、自宅で作ったお弁当と同じく、いたみやすいという感覚で扱ってほしい。
―少量なら毒ではないが、食べ続けると体に悪い添加物もある。
中山 複合汚染といって単体ではどうもならないが、発色剤の亜硝酸ナトリウムは胃の中で、肉や魚のタンパク質と化合するとニトロソアミンという発がん性物質を作る。弁当の中の添加物は基準通りに使われていても、違うものを食べると足し算になる。体の中で大量の活性酸素が生じて臓器に異常を来したり、細胞のDNAを傷つけると細胞が突然変異を起こしてがん化したりする可能性がある。
―下村さんは、食品を購入するとき、ラベルを見ますか。
下村 見ないと苦しむから絶対見る。今ではかえってアトピーになってよかったと思う。症状が表面に出ないといつか、がんになったり、動脈硬化になったりするかもしれないから。値段は高くても安全な食材を買っている。その分、子どもにも良い食材を与えられる。加工品の原産地表示はきちんとすることを望む。そうでないと私たちは身を守れない。
―給食はどうか。
下村 うちは軽かったが、仲間で小麦アレルギーの子がいて保育所の先生に伝えていたのに、クッキーを与えられ、アナフィラキシーショックを起こし救急車で運ばれた。先生が理解しないと、大変だ。
中山 外食では添加物などの表示がないが、どうしているのか。
下村 ひどい人は外食は無理。ある程度よくなると、「あそこのうどんはだめ」とか「あそこに行ったら子どもがこうなった」と主婦の情報網で対応している。
中山 野菜も減農薬か無農薬かよく分からないものがある。どんな農薬を使ったのか分かる表示があれば買うときに選別できる。
▲下村明魅さん しもむらあけみ 自分の病気改善のための勉強で、「食」「環境」の大事さに気づいた。農家と直接交流し、無農薬野菜の共同購入などに取り組む。40歳。
■政治が農業を圧迫・奥村さん 家庭から地産地消・城田さん
●食と農
―二十年前、農家人口は8・3%だったが、今は3%。食料自給率の向上は食の安全性を守る上で重要だ。
奥村 なぜ日本の食料自給率がこれほど低下したか。農業が衰退する仕組みがあった。一九六一年の農業基本法制定で飼料用穀物を作るのをやめ、六九年の第二次資本自由化で外国資本がファストフードに進出。八五年プラザ合意で円高の貿易市場ができた。もうかる食品の輸入に商社は走った。農業は政治の力で抑えられ、それとセットで輸入が増やされてきた。農業をやるのは楽ではないが、農家は日本人の健康と安全を守るために頑張っている。
―今度、どういう方向へ行けばいいか。
奥村 「食」という漢字は「人」が「良」くなると書く。安全、新鮮で栄養があるから、人が良くなると昔の人は言った。「安くおいしければいい」というのは間違いで、日本の大地からできた作物を食べるのが大事。二十一世紀の日本人の健康のためには農業振興を目指した消費者運動が必要。消費者には四つの権利がある。安全な権利、知る権利、選ぶ権利、消費者の声が消費者行政に反映される権利。しかし、製造年月日表示が七年前、賞味期限表示になった。アメリカで作ったものは、当然製造年月日が古くなり、消費者が買わないからだろう。日本の食と農を守る一大国民運動を展開する時期だ。
城田 「この食材は地産地消」と家庭でこだわりをもてば、農業もしっかり育つ。食事を素朴に考え、関心を持つこと。手間暇かけることを提案したい。
―惣菜協会として何ができるか。
中山 買いたたかれて農家が泣くような現状は絶対に良くない。「作ってもらってありがとう」「買ってくれてありがとう」とお互いが感謝し、農業が経営として成り立つ価格が必要。消費者が「一円でも安い弁当しか買わない」ということでは、私たちは安い業者に負ける。そんな連鎖では何も良くならない。良い物を安く売る努力は必要だが、農家や消費者のことを考えることが業界にとって何より大事だ。
―スローフード、地産地消、身土不二は同じ意味。食べて地域を支える運動、結びつくということだ。給食から虫が出て大騒ぎをするか、「安全の印」とするかは結びつきの差。地元の農とかかわりを持つことで視点も変わる。できるだけ地元のものを食べることからつながっていこう。
「食 くらし」シンポジウム 輸入・加工食品 基調講演 横浜港に見る食の現実 自給率向上は不可欠
▲奥村芳明さん おくむらよしあき 港湾企業の勤務を経て1973年に港湾労働組合専従。日本の食料と農業を守るため、輸入食品の講演や港見学を年100件以上実施。56歳。
病原性大腸菌O157に続き、牛海綿状脳症(BSE)が問題になっているが、これらは決して偶然起きたものではない。わが国の食料自給率(カロリーベース)は、わずか40%。食料や飼料を海外に頼り、世界各国から輸入品が大量に流れ込む中、お粗末な検疫体制で細菌や異常タンパクが入り込んだもので、起こるべくして起きたものだ。
輸入食品が港でどんな扱いを受けているかご存じだろうか。日本最大級の食品輸入港、横浜港には大きなプラスチック容器に詰められた塩蔵(塩漬け)食品が野積みされている。ワラビ、ゼンマイ、ショウガ、梅干し、ラッキョウ、ニンニク、ザーサイ、タケノコ…。いずれも商社が世界各国から買い付けたもので、長いものは数年間も放置されている。
野積みが多いのは倉庫に比べ保管費用が三分の一と安いからだ。塩漬けなら水分が抜けるのが普通なのに、抜けていないのが多い。防腐剤などを添加しているのかもしれない。それにポリ容器に長く入れておくと容器の成分が溶け出して食品に混入する心配もある。メーカーはこれらを塩抜きして中和。味、色、香りを付けて商品に加工する。「形さえ残っていればどうにでもなる」と言う。
問題がもう一つある。これらの輸入食品は、梅なら和歌山に運ばれ紀州梅に、ソバは長野県で信州ソバにと、各地の「古里特産品」に化ける。従来は景品表示法で、商品の原産国は「内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国」、つまり加工国が原産国となってしまっていた。「原料の原産地表示を」と申し入れても、厚生省(当時)は「いろんな原料を使っているので技術的に無理だ」と否定的だった。加工食品の産地表示は拡充されつつあるが、まだ不十分だ。
これら輸入食品の検査・検疫も大きな問題だ。当然、現物審査をすべきなのに、ほとんどが書類で通る。小麦、大豆、トウモロコシに至っては年に一回審査を受ければ、後は輸入計画書を提出するだけでOKなのだ。輸入食品の検査をする厚労省検疫所は全国に三十一カ所あるが、職員はわずか二百九十五人。日本より食品輸入量が少ないアメリカの二〇分の一以下で、検査機器さえない検疫所もある。
かつて、毒性があるとして食品添加物として認められていないジエチレングリコール入りの輸入ワインが出回る事件が起きたのも、こうした検疫体制だからだ。
さらに、陸揚げした輸入食品の害虫駆除をする燻蒸(くんじょう)も問題だ。バナナは猛毒の青酸ガスで、米、麦などは、神経系などに影響しかねない臭化メチルが使われている。そして、薬品の一部は食品に残留するという。
こうしたことから、日本人は食品添加物を一人一日に十一グラム摂取している、といわれる。一年で四キロ、一生にはなんと二百五十キロも摂取することになる。がんで死亡する人が多いのはそのせいではなかろうか。
兵庫県淡路島モンキーセンターで以前、同時期に生まれたニホンザル十四頭のうち十二頭に障害があり、問題になった。農薬で汚染された輸入小麦を与え続けたためともいわれ、国産に替えたらそんなことはなくなった。水俣病は猫、カネミ油症はニワトリと、食品公害が発生する際には、最初に身近な動物が犠牲になっている。従って、この障害サル事件は大きな警鐘だと受けとめなければならない。
日本人の健康を守るためには、食料自給率の向上は不可欠。地元の物を食べる地産地消を進めることが重要だ。
「食 くらし」シンポジウム 輸入・加工食品 会場アンケート293通の声 知らない怖さを痛感 安さの「裏側」考える
会場からは計二百九十三通のアンケートが寄せられた。裏面までびっしり書かれた文章には、「現代の食」に対する参加者の危機意識や、自らの食生活を少しずつ変える決意がにじんだ。その一部を紹介する。
× ×
横浜港の実態を二十年以上にわたって見つめてきた奥村芳明氏。生々しい証拠写真を交えたリポートには、「知らないことの怖さを痛感した」(長崎県佐世保市の看護師・34歳)、「食の問題が、輸入・加工食品から日本人の未来、政治までつながっているのに驚いた」(宮崎市のフードコーディネーター・36歳)などと、聴衆の衝撃の大きさを示す意見が続いた。
「政府は輸入食品の検査を徹底せよ」(佐賀県鹿島市の農業男性・65歳)とチェック体制強化を求める声の一方、「食や政治の実態に、今まで無関心で来た自分に責任を感じた」(福岡県筑後市の女性・45歳)、「輸入を許しているのは国民」(福岡市城南区の主婦・47歳)など、消費者の自省の言葉も相次いだ。
シンポジウムのパネリストから提案された「国民の健康を守るための地産地消の推進」については、「食べて地域を支える。スローフードの意味を初めて知った。実践したい」(福岡県山川町の調理員・50歳)、「地球汚染と食、くらしが密接につながっていることを感じた。できるだけ、地域の直売所を利用しよう」(福岡市南区の会社員・54歳)と、前向きに受け止め実行する決心も。生産者からは、「農作物を一生懸命作り、食の大事さを伝えていきたい」(佐賀県白石町の農業女性・52歳)という力強い宣言があった。
弁当や総菜を扱う中食(なかしょく)業界で、“半歩先”の前進を目指す九州惣菜協会会長の中山博友氏。その姿勢には同業者からも、「今一度、根本に戻って食材を見つめなおします」(大分県日田市の飲食業・44歳)と感動の声が届いた。
若者からは、「危険性が分かっていても、食べざるを得ない現状。私たちが行動を起こさなければ」(福岡市東区の学生・22歳)、「安さの裏側を一度考えてから買い物するなど、私も半歩進めたい」(福岡市南区会社員・23歳)、「ここで知った現実を、将来栄養士になったときに役立てたい」(福岡市城南区の学生・20歳)など、真剣な言葉が並んだ。
子育ての側面からは、「アトピーや問題行動など、壊れた子どもを救うのは食しかない」(福岡市東区の幼稚園長、57歳)という切実な思いが。さらに「私たちの選択で、良くも悪くも転ぶんだなって思った」(福岡県那珂川町の主婦・28歳)と自らの意識改革まで踏み込んだ意見が寄せられた。
「食 くらし」シンポジウム 輸入・加工食品 あなたの行動が未来開く 編集委員 佐藤弘
連載が始まって数日たったころ、北部九州のある港に行った。
そこで会ったのは、韓国から魚を輸入している業者。私は連載に対する感想を尋ねた。
「いやあ、書いてある通りですよ」
―でも、私たちの主張のように検疫が厳しくなったら、大変になりませんか。
「違いますよ。私たちも、きちっと検査してもらいたいんです」
―どうして?
「だって、流通後の検査で違反が出たら、そこで回収しないといけないでしょう。企業イメージは悪くなりますし、費用もかかる。なんといっても今は、目先の利益よりコンプライアンス(法令順守)の時代ですからね」
彼は言う。養殖魚などに残留する抗生物質は、韓国の養殖場で、こちらの指定通りの管理が徹底されているため問題ない。ただ、輸入商社が数量を合わせるために、時折、指定養殖場以外の魚を混ぜるケースがあるのだという。
「検疫強化はもちろん、港で迅速に処理できる態勢が前提ですが…。私も自分の子どもに悪いものは食べさせたくないから。記者さんも頑張ってください」。逆に、私の方が励まされた。
「知らない方がよかった」。そんな声も出たほど、なんとも気が重くなる話が続いた第四部。ただ私たちの狙いは無意識のうちにそんな状態を支持している消費者への呼びかけであり、知った後に何をするか考えてもらうのが目的だった。
より良い未来の実現はまず、現実の直視から始まる。それがなければ、聞こえのいい言葉や、実体のないイメージに踊らされ、本質を見失うのではないか。
食への無関心、無理解、無感動は、恐らく、低迷する選挙の投票率とも無縁ではあるまい。共通項は“選択”である。
食べるのか、食べさせられるのか。動かすのか、従うだけなのか。それはあなたの選択次第。一緒に歩を進めましょう。