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『くるい きちがい考』 なだいなだ著 (今日のジョーシキ、明日のヒジョーシキ..逆か、どっちでもいいや)
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投稿者 バルタン星人 日時 2004 年 12 月 07 日 11:52:48:akCNZ5gcyRMTo
 

(回答先: キチガイはキチガイなんだからキチガイでいいじゃないか。(戦争板から誘導 と 阿修羅の問題) 投稿者 現在無色 日時 2004 年 12 月 07 日 00:04:34)

『くるい きちがい考』 なだいなだ著 ちくま文庫



--略--

■おやおや、君は、自分がアル中かどうか、ぽくに判定してもらいたいらしいね。

あいまいに微笑し続けながら(これもけっこう顔の疲れることなんだが)、ぽくはいった。
いらだったF君は、ぼくの微笑作戦にひっかかったようだった。彼はこわいほど真剣な顔を
していった。

■だって、あなたは医者でしょ。専門家でしょ。ぽくたちに判定できないことを判定する、
異常か正常かを判定する、それがいわばあなたの商売じゃないですか。

じつは、F君がそういってくれるのをぼくは待っていたのだ。

■おや、ほんとうに、そう思っているのかね。

と、ぼくはいった。ところで、そう思っているのはF君ばかりじゃない。そこが困ったと
ころなのだ。どうして、世の中の人の多くは、精神科医を裁判官であるかのように思うのだ
ろう。

■思ってますよ。だって、異常だ、つまり病気だと判定して、あなたがたはそれを治療す
るんでしょう。
■誤解だよ。誤解。それこそ危険な誤解だ。君たちは、どうやら、医者を無理矢理裁判官
にしてしまいたいらしいな。それでいて、そういう裁判官に、いつ「お前はクルッテイル。
異常だ」ときめつけられるかも知れないことを不安に思っているんだ。もちろん、精神科医
は正常異常の判定者力の中に裁判官のようにふるまうものがいることは否定しないし、ふるまいたがっているものがあることもたしかだよ。しかし、裁判官にしようというものがなければ、そうはなれないんだ。

F君は、疑わしそうな顔をして首をひねった。彼は、ぼくのいうことが信じられないよう
だった。だが、それも無理はない。誰もがそう考えることに馴れてしまっているのだから。
ぽくは続けた。

■では、考えてみてくれたまえ。ぼくたちは、病院の外に出て行って、誰彼となくそこで
会う人を品定めして「あんたはクルッテル。異常だ。治療を受けなさい。入院しなさい」と
命令しているのかね。そんなことをしたら、余計なお世話だと、すぐ糾弾されてしまうよ。
ぽくたちは、おとなしく受身で、診察室で待っているのさ。家族や保健所や警察官がクルッ
テイルと思って連れてくるものだけを診察しているんだ。つまりクルッテイルと判断するの
は連れてくる人たちの方だよ。そこのところを忘れてもらいたくないな。そして、ぽくたち
は、世の中の人たちがクルッテイルと見なす人間とは、どんな人間なんだろうと、興味を持
ちながら観察しているわけだ。すくなくとも、ぼくはそうなんだ。「おやおや、こんな人も
クルッテイルと見なされるのか、へえ、クルッテイルといわれる人間には、こんな人間もあ
るのか」。そうつぶやきながら、ぽくたちは連れてこられた人たちを眺める。そしてそうい
う人たちを、いくつかの型に分類して、それぞれに名前をつける。そんな作業をしているだ
けなんだよ。もちろん、分類していくうちに、この人がクルッテイルといわれるなら、あの
人もクルッテイルといわれてしかるべきだと思うこともある。そこでぽくたちが、そうした
型に分類した人間像を頭に浮かべながら、それならあなたもクルッテイルと見なされるベき
だ、と世の中の人々に治療を押しつけたら、かならず余計なお世話だ、でしゃばるな、と叱
られるだけさ。

ぼくがそういうと、F君は、

■ヘえ、そんなものですかね。

といって頭をかいた。

■だから、正常とはなにか、異常とはなにか、どういうものを見た時に、君たちは「クル
ッテイル」と感じるのか、聞きたいのは、むしろぽくの方なのだよ。ぼくに、なにを正常と
い壌か、なにをクルッテイルというかをぎくのは反対だ。あべこべだ。さかさまだよ。

F君は、頭をかいて苦笑した。

■そういうもんですかね。しかし、なんだか、だまされているみたいだな。だって、そう
はいっても、あなたは、実際にアル中患者を病気と診断し、治療しているんだからな。それ
とも、連れてこられない病人は治療しないし、病気と見なさないし、連れてこられたものは、
全部病人としちゃうんですか。それもちょっとひどいじゃないですか。

そんなことは信じられぬといいたげに、頭を横に振った。
ぽくは、ああ、ここに誤解があるのだな、と思った。医者は病気をなおすのが仕事だと思
われている。そして、医者がなにかをすれば、それはどんなものもみな治療だと考えられて
しまう。しかし、治療費という名前がつかなければ、ぽくたちは、なにをしても報酬をもら
えないから、どんなものにも、そういう名前をつけているだけなのだ。じつは、医者のとこ
ろに連れてこられる人は治療費を払ってくれるお客さんである。医者はお客さんを病人と呼
ぶだけなのだが、人々は、それを病気の人間と一般化してしまうのである。

■やれやれ、ぽくがアル中の患者と呼んでいる人間を、病人と思っているらしい。そして、
彼らが酒をやめると、ぽくの治療が成功して、彼らが酒をやめた、と考えているらしいね。
しかし、彼らを病人と見なくともいいのさ。そしてぼくのやっていることを、治療と呼ぶ必
要はないよ。
■おやおや、あなたは治療をしているのではない、というんですか。それなら、あなたの
していることは、いったい何なんです。

だまされぬぞ、という意志が、ぼくをじっと睨むF君の眼に光っていた。
じゃ、ちょっと、ぼくがどんなことをしているのか、具体的な形で想像してみてくれな
いか。
■いいですよ。

とF君はうなずいた。

--略--

■いいかい。ここに一人の男がいる。彼は、かなり酒を飲む。そして、飲んでしばしば失
敗をやらかす。ま、時たま警察のトラ箱にご厄介になったり、ボIナスを全部飲んでしまっ
たり、二日酔で会社を休んでばかりいて首になったり、いろいろとやるわけだ。それを見て、
彼の奥さんがいう。「あなたはアル中よ。クルッテイルわよ。もうお酒はやめて」。ところが
男の方が答える。「おれがアル中なものか。おれをキチガイあつかいするな」。つまり、そこ
で対立が起るわけだ。
■ええ、わかりますよ。そういう状況は今でも、きっとどこかの家で、起っているでしょ
う。

F君は真剣な面持でいった。彼の家にもそういう状況があるのかわからないが、ともかく、
眼は輝いた。

■方は「あんた、クルッテイル」といい、他方は「おれはクルッテオラン」と否定する。
しかし、どちらもしろうとだ。どちらが正しいか、きめられない。
■それで:…
■そこでだね、どちらが正しいか、専門家にみてもらおう。そして、専門家に判断をくだ
してもらおうということになる。というわけでぽくのところに二人はやってくる。ま、こう
いう場合、専門家の断が公正であり、絶対であってほしいと思うのは当然だ。そうでなけれ
ば、二人は困る。二人のあいだのあらそいに、結着がつかないからね。
■ええ。たしかにそうです。
■さあ、ぽくはどう答えるべきだろう。
■専門家として「アル中だ」「そうでない」と、はっきりいえばいいじゃないですか。

ぽくは、F君を見つめた。○×試験に馴れた彼は、ことは簡単きわまりないではないか、
といいたげであった。

■いいかね。ぽくのところに持ちこまれたのが病気なら、それでいい。しかし、持ちこま
れたのはじつは葛藤なんだよ。二人のあいだのね。ぽくが「アル中だ」といえば、奥さんは
「ほら、わたしが正しかったでしょ」という。自分は勝ったと思う。また、その反対に「こ
の人はアル中というには早すぎる」と答えれば、男の方は「それみたことか。お前はすぐに
おれをアル中にしてしまいたがる」と、奥さんをなじる。
■なるほど、そういうことになるでしょうね。
■葛藤は解決にむかうどころか、ますます火に油を注いだようなことになる。権力がうし
ろだての裁判官なら、それでいいだろう。しかし、医者は裁判官ではないのさ。医者の仕事
は、その葛藤を、なんとか解決することなんだよ。そのために、いちばんよい方法、という
よりはいちばん簡単な方法をさがす。男の酒のために起った葛藤なんだ、もともとは。男が
酒をやめてくれれば蔦藤は解決する.もちろん、奥さんの方が、もっと寛容になることも、
解決のひとつだ。また、夫婦わかれという手もあるだろう.しかし、その中で、もっとも簡
単なのは・なんといっても本人が酒をやめることだ。ぽくが、その方向に持っていくとして
も、それは必ずしも彼がアル中であるからではないんだ。アル中であるか、その程度がひど
いか、そんなことは、あまり関係がないんだよ。
■へえー。

F君は、そういって、しばらく口をあけたものだった。

--略--

■F君、もちろん、医者にもいろいろある。葛藤の解決なんてことを考えずに、裁判官の
ようにふるまいたい医者もいる。男に病気だと判決をくだし、治療を命令したい、その方が
すっきりしている、と考える医者がいないではない。
■と、さっきもいいましたね。それで……
■「あんたはアル中だ」と、その医者がいう。男は「そんなはずはない」と、その判決に
不満だ。彼はそこで、一人の医者の意見で断定されてはかなわない、別の専門家の意見もき
こう、と主張する。ところでだね、次の精神科医が、首をひねって「あなたは、アル中とは
いえない」と答えたら、どうだね。
■そらみたことか、と男はいうでしょう。なるほど、これでは解決にならないし、葛藤は
拡大します。二人のあらそいが、今度は医者を含めた二派のあらそいになるだけですね。

F君はうなずきながらいった。

■そうなっては、医者としての権威はおちる。どこの医者に行っても、同じ判断がくださ
れなければ、専門家の権威など、どこかに行ってしまうよ。となると、裁判官としての医者
は、なにを考えだすだろう。どの医者もが、同一の判定をくだすような、統一の規準があっ
た方がいい、というようなことさ。こうしなければ、権威はまもれないからね。医者のあい
だにだって、意見のくいちがいがあっても当然なんだよ。しかし、それは医者全体の権威を
まもるには、まずいことなんだな。
■なるほど、なるほど。そこで、絶対的な権威を作りだすために、専門家の意見を無理に
でも一致させようとするわけだ。

F君は、そこで、わが意をえたり、という顔をした。

■そう、そういうわけで、アル中と判断する統一規準をきめようといいだす医者もでてく
る。だが、統一された規準は、絶対的な規準じゃない。真理は、話し合われてきまるような
ものじゃないからね。

■当然ですよ。真理であれば、誰もが認める。しかし、意見が一致すれば真理だとはいえ
ない。多数決で真理をぎめることはできませんよ。
■そうだろう。話し合いや、意見を統一することでおこなわれるのは、規準の見せかけの
絶対化なのさ。わかるかね。精神科医が、一致して、この人間はクルッテイルといったとし
ても、そう判断した規準が、どういうものか考えてみなけりゃならんのさ。絶対的規準があ
るのか。それとも統一規準があるだけなのか。
■たしかに。
■規準と基準といいわけてもいいかも知れない。統一規準は、規準という言葉より、基準
といった方が、ふさわしいかも知らんね。

F君はうなずいた。
ぽくたちは、こんなふうに、クルイの問題を考えはじめたのである。

--略--

■たとえばだね、動物や植物は、一つの種と別の種のあいだに、連続した移行がない。そ
りゃ、一つの種の中にはさまざまな変異がある。人間にもいろいろある。でも人間とゴリラ
が圃境めがなく連続しているわけじゃない。人間は人間、ゴリラはゴリラと、はっきり区別
することができる。つまり、種の分類ができるわけだ。
■ところが、それができないものがあるというのですね。
■そうなんだ。それを類型的な分類と呼んでもいい。たとえば、人間には背の高い人間も
いれば、低い人間もいる。しかし、背の高さは連続しているのだね。一メートル八O以上の
人間を巨人と呼ぶとする。では1メートル79.9の人間はどうなのか。彼は巨人ではない
のか。
■なるほど.、彼は、たまたま基準が1メートル80におかれたために、巨人のグループに
入れなかったというだけですね。
■そうさ。そういう、背の高さのような分類を、類型的な分類というんだ。そうした形で
つくられた病名というものがある。その病名で、ある患者を呼ぶことも診断だ。しかし、同
じ診断でも、脳梅毒の診断とは、本質的にちがっているね。
■ちがいます。ちがいます。大ちがいです。

F君は、おおいに力んで、そういった。

■精神科医が「あなたは内向的性格の持主だ」という。それは、類型的な分類でね、内向
的であるかないか、は問題じゃない。どれだけ内向的かが問題になるだけなのさ。ぽくたち
は、いくつかの典型をえがく。典型と典型をくらべればしろうとにもわかるようなはっきり
としたちがいはある。だが、典型的でないものの場合、その典型との距離がどれだけあるか
が問題なんだ。どれだけ典型に近いか、離れているか、その点を重視しなければならない。
境界の部分はつねにあいまいだ。だから、どちらに入れるかで、いつもあらそいが起る。葛
藤が起る。国境というのは、どこでも紛争のたねになるもんだ。

へへ、とF君は笑った。その皮肉、わかりましたよ、といいたげであった。

■極端なところでは、ほとんどの人間の意見は一致する。たとえばだね、アル中なども、
そうした類型的な分類の一つなんだが、酒がきれて、幻覚がでてくるようになれば、たいて
いのものは、その男がアル中だと呼ばれることに異論をはさまない。
■しかし、そこまでいかない場合だと、それぞれの立場によって、意見がちがう。くいち
がいがおこるというわけですね。

ぽくはうなずいた。

■それでも、アル中のような場合は、まだいい方なのさ。一つの状態でとどまっていない
からね。飲む量が次第にふえるとか、禁断現象が、次第にはげしくなるとか、きまった方向
への動きがある。今日は境界のあいまいなところにいても、何年か先には典型に近いところ
まで進むかも知れない。だから、今は自分はアル中でないと思っている人間も、五年先はア
ル中かも知れないということを、認めさせることはできる。しかし、そうした動ぎがない場
合は、もっと困る。
■たとえば…:
■性格のようなものさ。異常性格とか、精神病質と呼ばれるような分類名だね。この場合
は・境界のあたりにあるものは、いつまでたぞも、そこのところにいる。いつまでたって
も、、どっちつかずなわけだ。だから、分類するものの基準のとり方次第で、異常にされたり、正常にされたりするのさ。精神科的な診断の中には、そうしたものが含まれていることを知
っておくといいね。ひとくちに病名といっても、それが絶対的な種の分類による名前なのか、
類型的分類によるものなのか、区別する必要がある.また、類型的な分類によるものでも、
経過にともなって症状に動きのあるものと、ないものは、区別されなければならないんだね。
しかし、そう受けとることのできる人は少ない。病名が羅列的に並ベられていると、多くの
人が誤解をすることになる。脳梅毒も分裂病も、同じ規準できめられた病気の一つと、思い
こんでしまう人が多いんだね。
■そうですか。
大きなためいきをついて、F君は天井を見上げた。だが、こうした種の分類と、類型的分
類との差を、はっきりと知って、病名を用いているものは、医者にも多いとはいえないので
ある。

--略--

■そうだよ。しかし、注意しなければならないのは、正常という典型はないんだ。わかる
かね。典型は異常の方にしかないんだ。たとえば、ぽくが君に質問する。正常とはなんだね。
さ、答えてくれないか。

F君は、そういわれて、そうですねえ、といいながら考えこんだ。

■正常ってのは、結局、異常のところがないこと、ふつうだってことですよ。
■そうだろう。そうしかいえないよね。じゃあ異常ってことは…
ーそれはね、つまり、正常でないことですよ。

F君は、そう答えてから、だまってニヤリと笑っているぽくを見て、頭を掻いた。そして、
われながら、なんだかひどい定義だな、といいわけした。

■簡単にいえば、正常とは異常でないことで、異常とは正常でないことなんだね。

人が悪いといわれるだろうが、ぽくは、F君がその論理のおとしあなにおちこむのを、ひ
そかに待っていたのだ。

■ええ、これは、どうも、同義語反復、トート・ジーというやつですな。これじゃ、ちっ
とも定義したことにならない。だが、それがわかっても、いい定義がなかなか思いあたらな
いんだな。

ぽくは、F君に、そう恥じることはないといってなぐさめた。なにしろ、出版文化賞をも
らった日本の代表的な辞書にさえ、異常と正常に関しては同じような定義しか見つけること
ができないのである。異常と正常との境は、こうしてあいまいなままに、任意に線がひかれ
てしまう。しかし人々は、線がひかれると、そこに絶対的な価値をおきはじめる。ぽくは、
そこでなにか別にいい例はないかと考えた。

■ま、こうした定義はほかにもたくさんあるんだ。たとえば、浅い深いという言葉もそう
だ。川の話をしている時は、浅いところといえば、数十センチのところだ。一メートルのと
ころは、だいぶ深いことになる。しかし、大きな船を運転している船員と、海の話をしてみ
たまえ、ニメートルでも、深いとはいわない。一方の浅いが、他方では深いだ。しかしね、
言葉の定義からすれば、深いということは、浅くないということだ。
■そういうことになりますね。
■浅いという言葉のない国もあるくらいだよ。「少し深い」が、「浅い」こと。「非常に深
い」が、「ほんとうに深い」ということになるんだ。異常と正常とは、同じような関係にあ
るんだよ。海の場合と川の場合、というぐあいに、状況に応じて、使いわけなければならな
い言葉なのさ。

F君は、ちょっと、深い浅いの言葉にこだわっていたようだ。

■でも、それなら、正常と異常のどちらが、浅さにあたり、深さにあたるんです。

鼻にしわをよせて彼はいった。

■さあ、どうだろう、君の考えでは。
■どちらが、どちらでもいいと思うけど。
■そんなことはないさ。「少し浅い」が、「深い」ことだというのは、変だろう。
■そりゃ、たしかに変だ。

F君は、頭に手をあげて苦笑した。

■それと同じように、異常と正常の場合も考えてみればいいさ。
■とすると、異常の方が深さにあたるんでしょう。ひどく異常だということはできるが、
ひどく正常だ、とても正常だというのは、どこかひっかかる表現だからな。

F君はつぶやくようにいった。

■ま、無神経な人は、平気でそういうけれどもね。
■とすれば、異常という考え方が主で、正常というのは、それを補う形で生まれたものなんですね。

やれやれ話がうまい方向に進んできた、とぽくは満足げにうなずいた。

■つまり、正常ということは、異常のところが、あまり見つからない、というだけのこと
なのか。

ぼくは、そのとおりだ、と答えた。

■だって、どうやって、正常というものをとらえる。異常なところはないか、とさがすしかないだろう。ずばり、正常かどうかを見ようとすることはできないじゃないか。ま、酒好きの君が、おれは正常だとは直接的にいえないだろう。誰かをひきあいに出す。そして、おれは、あいつのように異常な飲み方をしない、あいつのように禁断症状はない、だから正常だ、というふうに結論するんだ。

F君は、自分があてこすられた、と受取ったのか、ちょっと照れくさそうに、ごしごしと頭をかいた。

--後略--

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