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(回答先: どなたかご教示ください: 一般的で素朴な疑問 考古学、人類学研究グループメンバーの専門分野 投稿者 ponpon 日時 2004 年 7 月 26 日 09:26:08)
始めまして(でしょうか?)ponponさん。
私は、考古学に関しては関心を持っているというだけでさほど詳しいというわけでもない、アマチュアとさえ呼べないレベルの者です。
ですからponponさんのご質問に正確にお答えする力量はございません。その点お断りした上で不正確とは思いますが私の考えるところを述べさせていただきます。
>1)放射性炭素年代測定法や気象学などの科学データを解析する。(理科系)
2)史書や文献などを検証する。(文科系) 上記の1)は理科系の高度な知識や技術が必須。2)については深い歴史的知識と古文書解読や語学力が必要とされます。いずれにせよ1)2)とも両方とも高度な専門知識と技術が要求されます。同一人物が、両方兼ね備えるのはほぼ不可能でしょうね。
歴史研究には2)の文献史学(狭義の歴史学)の他に遺跡・遺物を中心に研究する考古学があります。先史時代の考古学研究は1)の自然科学的方法が重要な手段となってきます。しかし、これまで日本の先史考古学においてはこうした自然科学的手法は全く軽視されてきました。
日本における伝統的な編年作業は、層位学と型式学に基づいて行なわれてきました。型式学により遺物をタイプごとに分類し層位学により遺物の前後関係を解明するものです。この作業は職人仕事と評されるほど精緻なものとされてきました。しかし、どれほど精緻なものであってもこの方法による編年は相対年代であり、遺跡・遺物の先後関係を明らかにするに止まります。つまり絶対年代を決定するものではないのです。絶対年代を決めるためには中国大陸等からの年代の明らかな渡来品(中国鏡等)に頼る他ないわけです。こうした渡来品のない時代は同一の型式の持続する期間を適当に推定して算出してきました。ですから日本考古学界で使われてきた先史時代の年代は相当に根拠薄弱なものであったわけです。
一方、中国・韓国を含む世界の考古学研究では早くから炭素14による年代測定が行なわれてきました。日本においても同法による年代測定は行なわれましたが、従来の方法による年代とあまりに違いが大きいため、考古学者は「炭素14年代測定法は信頼性が乏しい」としてほとんど無視してきました。これは炭素14法による年代が正しいとすると、これまでの長年にわたる自分たちの研究が無に帰するという危機感によるといえるでしょう。
しかし、近年になってAMS法という炭素14年代測定法の改良版が登場し、より精緻な測定ができる様になるに至り、この方法を無視することが難しくなってきています。加えて年輪年代法という別の年代測定法も登場してきました。
無視し得なくなったこれらの年代測定法による年代は、従来の方法によるものとは大きな食い違いを見せています。その最も顕著な例が昨年の歴博による弥生時代開始年代が通説より500年古いとする新説であったわけです。
この歴博説を否定する説を九大グループが出したことになります。おそらく歴博グループとの間で論争が開始されることになるでしょう。こうした論争は必要なことだと思います。
さて、ご質問に戻ります。
>さてこうした有る程度史書が残っていそうな範囲の考古学研究の場合(例えば邪馬台国論争など)、大学の史学科が中心になって行い科学的検証はアウトソーシングするんでしょうか?
歴博のように自然科学的手法の技術を持つ施設では、アウトソーシングはあまり必要にならないと思います。しかし、これまで自然科学的年代測定を軽視してきた大学などでは、アウトソーシングは必要だろうと思います。
ただ、無批判にアウトソーシングするとこれらの手法の問題点を評価しえず新たな誤りが生まれる危険性もあります。今後は自然科学的手法についての知識をもち、これらの手法の限界を理解した考古学研究者の養成が求められるだろうと思います。
>あるいは稲作の発祥の研究については大学の農学部の先生が中心になっているようにも思えます。こういう場合は理科系の研究者が史書や古文書についての検証はアウトソーシングするんでしょうか?
これはイネのプラントオパールや花粉の研究のことを仰っているのだと思います。私の認識ではむしろ考古学の側から理科系の研究者に研究を依頼しているのではないかと思います。(この点は自信ありません。)