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[2邦人襲撃]「人質事件の特異さが際だつ」(読売新聞)
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投稿者 彗星 日時 2004 年 5 月 29 日 02:10:33:HZN1pv7x5vK0M
 

5月29日付・読売社説(1)


 [2邦人襲撃]「人質事件の特異さが際だつ」

 痛ましい出来事だ。イラクの治安が依然、不安定ということを物語る。だが、特別な事件というわけではない。

 バグダッド近郊で、日本人フリージャーナリスト二人が乗った車が銃撃され、現場近くで、二人と見られる遺体が確認された。

 そのうちの一人と見られる橋田信介氏は、ベトナム戦争をはじめ、豊富な戦場取材の経験があるベテランだった。連絡を受けた夫人は「本人も覚悟していたと思います」と、気丈に応対した。

 今回の襲撃事件は、先の日本人人質事件とは、様相がまったく異なる。人質事件が極めて特異だったのである。

 政府に国民の生命を守る責任があるのは、当然だ。だが、家族が自衛隊のイラクからの撤退を掲げ、政府に政策変更を要求したことが、無用な混乱を招いたのである。

 家族の「自衛隊撤退」要求に呼応するように、わずか二日間で約十五万人の署名が集められた。国会前では、組織的なデモが続いた。極めて政治的な、奇妙な光景が繰り広げられたのである。

 しかし、国の政策変更を公然と求めたことへの批判に、家族が「自衛隊撤退」を口にしなくなるや、こうした動きも、急速に沈静化した。

 戦場や危険地域で、ジャーナリストやカメラマンが死亡するのは、決して珍しいことではない。

 米国に本部を置くジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、戦場取材などの職務で死亡したジャーナリストは昨年、世界で三十六人に上った。うちイラクで死亡したのは十三人だった。

 過去にも、第二次大戦で六十八人、朝鮮戦争で三十八人が死亡した。戦火のインドシナでは、一九四六年からベトナム戦争終結の七五年までに、死亡または行方不明になった報道カメラマンは、百三十数人に上る。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では三十七人が死亡した。

 その中には、何人もの日本人が含まれている。しかし、いちいち大騒ぎされたわけではない。

 戦場は、常に危険と隣り合わせだ。ジャーナリストは、時には、あえて危険を冒してでも、戦場や災害現場に赴く。それは職業的情熱であるとも言えよう。

 民主党内には、今回の事件で、イラク復興支援特別措置法に基づく「非戦闘地域」ではなくなった、として、自衛隊撤退に言及する向きもある。

 事件は、犯行グループがまだ特定できず、日本人を狙ったのかどうか分からない。だが、自衛隊のイラク派遣と関係づける問題ではない。

(2004/5/29/01:50 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040528ig90.htm

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