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(回答先: 「主権移譲が最善の道」シーア派幹部がサドル師批判 [読売新聞]【SCIRIのハイダリ氏が読売新聞との会見で】 投稿者 あっしら 日時 2004 年 4 月 07 日 02:08:45)
米軍がイラクの首都バグダッドを制圧し、フセイン体制が崩壊してから9日で1年を迎える。独裁者の巨大な銅像が引き倒され、自由の喜びにわく市民の姿をとらえた映像が世界をかけめぐったのはつい昨日のことのようだ。
だが、米英主導の占領体制に移行した後、イラクの復興と平和を回復する歩みは決して平たんではなかった。それどころか、昨年8月以降は国連事務所爆破、宗教指導者暗殺、米英軍と復興支援国へのテロ攻撃などが相次ぎ、流血はいつ果てるとも知れない。
スンニ派地域のファルージャで米民間人4人が惨殺された事件は米国民に衝撃を与え、米議会では6月末に予定された主権移譲の延期を求める声も出始めた。4日から5日にかけては首都を含む5都市で米英軍などと武装した群衆の衝突で多数の死傷者が出た。
主権移譲期限まで3カ月を切った中で衝突、騒乱、テロは今後も増大する恐れが強い。米英とイラク統治評議会、国連が合意した主権移譲プロセスは最大の危機と試練に直面している。
衝突は深刻な事態
1年前のあの時、多くの市民たちは独裁体制からの脱却、民主的統治への期待、平和と復興、安定への希望を燃やした。抑圧と戦乱でつづられたイラクの長い歴史の中で、彼らが抱いた夢は一瞬の虚像だったのだろうか。
フセイン体制は79年以来、四半世紀にわたって国民を戦火と恐怖支配にさらしてきた。自由を手にした今、民族や宗派はばらばらでも、平和と安定した生活を願う気持ちは誰も同じはずだ。米英や国際社会は彼らの期待を絶対に裏切ってはならない。
そうした視点から最近の情勢を振り返ると、今回の5都市のうちでナジャフなど4都市で起きたシーア派住民との衝突はきわめて要注意である。
米英主導の有志連合諸国軍は、これまでスンニ派やフセイン体制の残存勢力、外国から流入したテロ組織の攻撃に苦慮してきた。だが、小規模のこぜりあいを除けば国民の6割を占めるシーア派との武力衝突は今回が初めてだ。その意味で、一連の衝突はこれまでの騒乱とは質的に異なる。米英当局や国連が対応を誤れば、国内最大派閥のシーア派住民までも敵に回しかねない危険がある。
シーア派内部は決して一枚岩ではない。穏健派で統治評議会を容認しているシスタニ師の支持派と、米英占領体制に反旗をひるがえす強硬派のムクタダ・サドル師の支持派とが対立している。
4日にはバグダッド入りしたアナン国連事務総長特使のブラヒミ氏が国連主導による主権移譲プロセスを始動させ、国内各派の意見聴取にとりかかった。この時期に最大3万人ともいわれる武装民兵組織「マフディ軍」を抱えたサドル師派が武力衝突をあおった背景には、シスタニ師派に代わって政治主導権を奪取しようとする権力闘争の側面も指摘される。
加えて米英とイラク司法当局は昨年4月のシーア派亡命指導者ホエイ師の暗殺にかかわった容疑でサドル師ら指導層に逮捕状を発令している。事件の解明は暴力で政治目的を達成する動きを封じ、暫定政権移行後の法と秩序を築くためにも大切だ。
とはいえ、サドル師派も含むシーア派住民には、いっこうに改善されない失業や貧困、米英の占領体制に対する不満もある。逮捕や摘発の強行だけでなく、大衆感情にもきめ細かく配慮しなければ、騒乱はおさまらない。
1年前に想像もできなかった混乱や流血に陥った主要な責任が米英にあることは言うまでもない。占領体制下で軍、警察、治安組織を解体したものの、後継組織の育成が間に合わずにテロリストの流入を招いた。復興と治安回復に国連や国際社会の総力を結集する努力を怠るなど、米国側の多くの誤算や見通しの甘さも指摘されなければならない。
だが、そのことと主権移譲プロセスを完成させる努力は別だ。遅々としてはいるが、復興と再建の成果も上がっている。シーア派、スンニ派を問わず、国民の大多数が武力抗争や騒乱を支持しているわけでは決してない。
2月下旬のアナン事務総長勧告を通じて、国際社会は(1)6月末までに暫定政府を発足させる(2)年末から05年1月を目標に選挙を実施して正当な議会を選ぶ(3)米英は治安を確保する−−との道筋を了解し、その努力を重ねてきている。流血と犠牲に手を焼いてプロセスを放棄してしまえば、「イラクを内戦状態にさせる」と狙う武装勢力やテロの思うつぼだ。
自衛隊の安全に留意を
米英には過激な武力抗争派を孤立させ、大衆が同調しないようにする住民政策の工夫が必要だ。そのためにはシスタニ師派など穏健派との対話と協調が欠かせない。ブラヒミ氏らを軸にした各派間の政治調整を積極支援し、促進するために全力を挙げるべきだ。
主権移譲プロセスを支え、移譲後の安全と治安を確保するには国連安保理の新たな決議も必要だ。米英は多国籍軍の組織に向けた決議案の準備に入ったが、そこでは米英が国際協調の道に戻る姿勢を明確に示せるかが問われる。
不測の事態がない限り、当面は主権移譲のプロセスを揺るぎなく進めることが米英と世界に課せられた責務である。この1年間、すでに多くの犠牲の血が流された。今後も予想される流血や騒乱を乗り越えて、プロセスを完遂することが過去の犠牲と今のイラク人の希望に応える道だ。
日本政府もこの展望に立って、米英と仏独などの協調を図る外交が求められる。人道復興支援を掲げてサマワに派遣した自衛隊は隊員の安全と流動的な現地情勢に留意し、戦闘に巻き込まれないように最大限注意してほしい。
毎日新聞 2004年4月6日 23時46分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040407k0000m070126000c.html