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Re: 奇妙な点が多すぎる、今回のスペイン「政変」
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投稿者 バルセロナより愛を込めて 日時 2004 年 3 月 25 日 20:44:58:SO0fHq1bYvRzo
 

(回答先: スペインでは“デマクラシー(=扇動支配)統治”の実験が行なわれているのかも知れない 投稿者 佐藤雅彦 日時 2004 年 3 月 25 日 11:12:24)

奇妙な点が多すぎる、今回のスペイン「政変」


スペイン国内から今回の「政変」劇を見ていた者としては、さまざまな解釈や解説を聞かされても、どれにも首をかしげどうもすっきりしないものが残ります。スペイン人自身は、もちろん、列車爆破の被害にあった人々に対する哀悼と同情の念、および「テロ」に対する嫌悪感は民族に関わりなく強いのですが、もうすでに「白けている」と感じがします。私が反マドリッド意識の強いカタルーニャに住んでいるせいもあるのでしょうが。

3月11日の「テロ」当日から12日、13日にかけての国民党幹部の対応の奇妙さ以前に、私には、今年の1月以来の流れの中に変な不自然さが感じられてなりません。

私が今年の初めから「アスナール政権最後の醜態」のシリーズと他のいくつかの投稿でもお知らせしつづけたことですが、国民党政府は1月以来「ETAの脅威」をことあるごとに強調し、カタルーニャで社労党と連立政権を作った左翼共和党党首がETAと接触を持ったことをきっかけに、「ETA=左翼政権」の図式を作ろうと必死の策謀を続けてきたことは間違いのない事実です。イラク戦争への加担の問題からはとにかく「逃げの一手」で、「戦争参加への批判は反テロの戦いに対する無責任だ」を繰り返すのみでした。

英国や米国の状況から、「アラブテロの脅威」を言うと「お前の責任だ」と言われそうでETAに国民の意識を集中させようとしていたのでしょうが、それにしても、ETAと野党との関係を暴く消極的なスキャンダル戦法ではなく、たとえばETAと「アラブテロ」を並立させて「テロとの戦いを進める国民党」のイメージを強調するような選挙戦術が取れたのではないか、と思います。

それに加えて3月11日からの3日間のスペイン政府のあの奇妙な対応の仕方ですから、国民党政権の幹部連中はそろいもそろって純粋の大馬鹿ぞろい、ということになりますが、本当に「あいつらは本物の馬鹿だった」で済まされるかどうか、私には未だ結論が出ていません。

もうすでに1月から3月初旬までの間で、心の底ではどんな為政者をも信用していない国民は、目に見えない内心で疑念と警戒心を膨らませていたかもしれません。この間の事情を知らない(知っていたとしたら無視している)国外の多くのマスコミは、11日から13日までのアスナール政権の対応の仕方に対する国民の反発、あるいは「テロへの恐怖→イラク→アスナールの責任」が選挙結果につながった、という分析をしているようですが、私はこのような見方は拒否します。アルモドバル監督の発言が騒がれたことはもちろん私も知っていましたが、これを大々的に取り上げることへの胡散臭さを感じて、私はあえて無視していました。(エル・パイス紙は片隅でしか扱わずほとんど無視していましたが。)

13日にマドリッドの国民党本部前にデモをかけた群衆が、インターネットや携帯電話によって大衆動員したことは事実です。ただそれが「デマクラッシーの実験」と結論付けられるのかどうか、私には疑問があります。なぜならそれを導き出したものは、ほとんど「意図的」としか思えない国民党政府自身の2ヶ月以上にわたる奇妙な行動であり、また「テロ」に対する「馬鹿な」対応だったからです。一体、誰が何のためにそんな「実験」を行ったのか?

自らの政権をつぶすことが目的だったとは思えず、外部の何かの勢力にはめられたにしても、数多い政府の要人の誰一人それに気づかずまともに対処できなかった、というのも、もう一つ納得がいきません。確かに大きな流れを見てみますと、米国の単独覇権主義から国連やEU、NATOなどの集団による支配体制への転換期で、世界の支配階層がアスナール政権を切り捨てた、といえるかもしれませんが、国民党政権の全員がそれを分かって自ら「討ち死に役」を買って出たのでしょうか。

私としては今はあえて結論を出さないでおきます。

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