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「沖縄」を問う・米軍ヘリ墜落事故[沖縄タイムス]
http://www.asyura2.com/0403/ishihara8/msg/474.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 9 月 26 日 00:34:27:dfhdU2/i2Qkk2
 

<2004年9月17日 朝刊 1面>

「沖縄」を問う・米軍ヘリ墜落事故(2)

高村薫さん
沖縄全体が基地ノーなら本土移転も可能
今、県民が声上げる時

―ヘリ飛行停止を求める住民感情が中央に届かない。

 「個人的にはもう少しシビアなことを考えていて、軍事に関することでは百パーセント国民に開示されることはあり得ない。開示しろと求めること、もう飛ぶなということが、果たして言えるのか。宜野湾の人たちの命が危険にさらされ、飛んでもらったら困るというのであれば、日米安保の是非を問うのとイコール。感情論に終始すると、法律を盾に国に抑え込まれる」

 ―安全保障の問題として全国に広がらない。

 「全国紙の論調も取り扱いかねるという印象。本土から見ていて自分自身もふがいないと思うのは、根本的なところに議論が及ばないというジレンマ。言い換えれば、沖縄の問題が非常にあいまいなところで宙づりになっている」

 「日本中が今、そういう状態。誰も戦争なんかしたくない。だけども自衛隊はイラクへ行ってしまった。それを私たちは止めることができない。憲法に照らせばこんなことあり得ないんだけども、法律でさえも恣意的な解釈で無視されていく」

 ―本土から見て、今の沖縄はどう映っているか。

 「一般の人間にとっては、沖縄はリゾート地でしかない。テレビでは、しょっちゅうNHKの『ちゅらさん』のリバイバルをやっていたりする。そういうことに私は違和感を抱きながら、今回のようなニュースに触れると、またか、と思う。もしうちの近くに基地をもってきていいか、と聞かれたら首をかしげてしまう。となると、その疑問はなぜ沖縄ならいいんだということに返ってくる。一方で、沖縄の意思というのが本土からは非常に見えにくい」

 ―代理署名拒否は全国世論の共感があった。

 「沖縄だけが取り残されているというのではなく、一九九五年以降、国内外の情勢が大きく変わった。国全体が失速する中、保守化が進み、二十一世紀になって世界は急速に治安が悪化している。世界、日本の中の沖縄という視点をもたないと、単に九五年と今を比較しても無理がある」

 ―北朝鮮拉致問題は全国世論の支えが大きかった。

 「最初から日本人の世論が動いたわけではない。誰にも顧みられない中、家族の人たちが十年、二十年と訴えてきた。沖縄の問題だって全国が動かなかったら動かないというのは逆」

 「米兵事件もヘリ墜落も言語道断だが、なぜ起こるかというと基地があるから。基地を沖縄から出て行けというのが県民全体の声になったことがあるか。生活がかかっているのも、危険なのも分かる。これは最終的にどちらかを選ばざるを得ない話。ノーという沖縄の声を聞けば、基地の本土移転だって不可能ではないと思う。自民党政権だって次の選挙でどうなるか分からない。今こそ県民の声を上げる時だと思う」(聞き手=政経部・渡辺豪)

 たかむら・かおる 作家。1953年、大阪府生まれ。国際基督教大卒業。専門商社退職後の90年、「黄金を抱いて翔べ」でデビュー。「マークスの山」で直木賞受賞。

http://www.okinawatimes.co.jp/spe/heri_tou20040917.html



<2004年9月19日 朝刊 1面>

「沖縄」を問う・米軍ヘリ墜落事故(3)


小林よしのりさん
「基地なし自立」覚悟を
安全保障の発言権は沖縄が一番持っている

―ヘリ事故報道について。

 「東京ではオリンピックばっかりで扱いは小さい。地元の新聞を送ってもらったら、沖縄での報道のされ方と、あまりにもギャップが大きいから、これじゃまずいんじゃないかと。ずっと出演を断ってきた報道番組に出て、やってやれと思って。議論が巻き起こるようにあおってみたというか、アジってみた」

 ―全国世論の受け止めは。

 「ほとんど関心ない。あのときの米軍の振る舞いがそこに住む人間たちの根本的な尊厳を傷つけているのが抽象的すぎて分からんのだろうね」

 「それと地元でも利権の絡みとかがあって、基地なしに経済の自立ができるかと問うと、返す言葉がないと分かっている。地元の統一した意思は把握しにくいとなると、触ったって仕方のない問題だと思うし、その方が都合がいいと誰だって思っている。だからなかなか盛り上がらない」

 ―なぜ注目されないのか。

 「南の方の島に基地を閉じ込めておけばいいだけの話だから。でも本当は自分たちはそこに全部依存しているんだけどもね。その欺まん性みたいなものが自分の中で罪悪感にならないっていうかなあ、そういう『くそリアリズム』みたいなものがまん延しちゃってるからね」

 ―小泉純一郎首相について。

 「小泉さんは、なんかびっくり箱開けたようなパフォーマンスしかできない人だから。でも稲嶺知事だって、小泉さんに会った後は、いやよく話していただきました、なんて言ってるわけじゃない。あれじゃ、話が終わっちゃう。稲嶺知事は辺野古じゃないといかんとか言っているわけだし。それが地元の意見だと言われてしまえばおしまい」 ―辺野古沖移設は地元でも意見が分かれている。

 「辺野古はやめた方がいいよ。意味がないよ。まったく無駄な公共投資。また利権に依存し、解決を引き延ばすだけで、いらないものをわざわざ造って米軍は大喜びやん」

 ―この十年で日米同盟は強化されていった。

 「9・11以降、日米同盟に過度に依存するようになった。沖縄の人も、基地を取り上げてしまったときにどう生きていくのかという覚悟をもたなければどうにもならんし、日本だって日米同盟がなくなったら自殺すんのかって。自分の力で生き抜く覚悟が日本にも沖縄にもない。基地に依存し、日米同盟に依存してしかもう生きていけない」 ―県民に一言。

 「自分たちの尊厳を守れと。経済的な豊かささえ基地によって与えられれば、それでいいんだったら、日本全体にも政府に対しても何も言えないよと。沖縄から有効打を放ってほしいよね。事件のたびにわっというんじゃなくて。沖縄から基地の考えとか、自分たちで武器をもって守ることにしたとか言い出したら、みんなどうしようもなくなるよ。安全保障に関する発言権は沖縄が一番持っている。なのにそれを行使せずにいる」(聞き手=政経部・渡辺豪)

 こばやし・よしのり 漫画家。1953年、福岡県出身。大学在学中にデビュー。「ゴーマニズム宣言」「戦争論」などが話題に。「新・ゴーマニズム宣言」で沖縄をテーマに連載中。

http://www.okinawatimes.co.jp/spe/heri_tou20040919.html



<2004年9月20日 朝刊 1面>

「沖縄」を問う・米軍ヘリ墜落事故(4)


香山リカさん
多様な現実を受け入れる度量がなくなっている
狭まる想像力の範囲



―米軍ヘリ墜落事故と五輪の開催時期が重なった。

 「今の日本社会を覆っている大きな傾向として、込み入ったことを考えるのは面倒くさいというムードがある。五輪の盛り上がりも、そこへ逃げ込んだという気がする。年金やイラクなど重要な問題はあったが、すべてがペンディング状態の中で、五輪のことを言っておけば、社会的にも非難されないみたいなところがあったと思う」

 ―ヘリ事故もペンディング?

 「自分を催眠にかける、というと変な言い方になるが、死んだ人もいなかったんだからよかったんじゃないか、で済ませてしまおう、という感覚が働いたのでは。マスコミの反応をみてもそれに近い感じは見受けられる」

 「私が怖いなと感じるのは、誰かが統率して沖縄のニュースを流すなとか、見るなとか指示しているのではないこと。大衆側の流れとして自然にそうなっているところが逆に恐ろしい」

 ―今回の事故は安全保障や日米安保に絡む問題。

 「日米同盟を軸とする米国との関係をどうすればいいかというのは、日本にとってはうまく答えが出せない問題。北朝鮮の核疑惑や拉致問題は、だから今は米国の力が必要だ、みたいなストーリーがつくりやすい。日本全体が向かっているストーリーの中では、今回の米軍の問題は、起きてほしくないこと。多様な現実を受け入れる度量が社会にも個人にもなくなってきているので、自分たちのストーリーなり、考える方向とずれるものは排除してしまう」

 ―沖縄ブームとの対比は。

 「若者らが好きな沖縄と、地上戦で被害を受けた沖縄や米軍基地が集中している沖縄というのはまったくかけ離れている。同じ沖縄だという意識すらない。自分の見たいものだけ見るという態度や姿勢が沖縄の問題だけに限らず、日本の社会をここずっと覆っていて、その象徴的なものが今回の事故で表面化したのかなとも思う」

 ―小泉純一郎首相の反応も冷ややかだった。

 「小泉さんは、どんなパフォーマンスをやればどれくらい国民に受けるかということを生理的に読める人。彼が今それをやらないのは、沖縄に行ったとしても、国民からよくやった、と評価されることはないと踏んだから、との見方もできる」

 ―稲嶺恵一知事は沖縄の基地問題を「日本全体の問題」と訴えている。

 「個人の想像範囲が狭くなっている。例えば拉致被害者みたいに個人の顔が見えれば感情移入しやすいけれど、今回のように亡くなった人もいなければ、どこに感情移入すればいいのか分からなくて、社会問題として扱うことすらできない人も多いのでは。今回の世論やマスコミの反応は沖縄だったから、ということはなかったのかもしれない」(聞き手=政経部・渡辺豪)

 かやま・りか 精神科医。1960年、北海道生まれ。東京医科大卒。帝塚山学院大教授。主な著書に「ぷちナショナリズム症候群」「〈私〉の愛国心」など。

http://www.okinawatimes.co.jp/spe/heri_tou20040920.html



<2004年9月22日 朝刊 1面>

「沖縄」を問う・米軍ヘリ墜落事故(5)


岡留安則さん
東京の人間にとって基地問題は人ごと
日本からの独立志向を

―米軍ヘリ事故について本土での報道が少ない。

 「私は全国紙を中央集権メディアと呼んでいるが、単なる事故報道として一過性で終わっている。それらのメディアは外務省、官邸など政権と完全に一体化し、日米関係が最重要課題とのスタンスが定着している。その状況で、沖縄や普天間飛行場の問題を根本的にえぐって、日米関係をあらためて問うべきだという論調は出てこない」

 ―国民の関心も薄い?

 「本土にいる人には、やはり人ごとであり、自分の問題だという感覚はない。自分の家族が犠牲になれば騒ぐが、そうでなければ関心を持たない。イラクに自衛隊を派遣し、仮にその結果として国内でテロが起きても、派遣が間違いだったというような理解はしない。日本人全体が他人への関心を持てず、だめになっているような気がする」

 ―本土との温度差を埋める手段は。

 「沖縄の行政やマスコミがもっと本土に向けてメッセージを発信する工夫をすべきだ。私の持論だが、『普天間』の問題が難しいなら、石原慎太郎東京都知事に対して、お台場に移設することを提案したい。そうして初めて、自分の問題として考えるだろうから。そのくらい極端なことをしない限り、東京の人にとって沖縄の基地問題は人ごとで終わってしまう」

 ―沖縄でも基地撤去でまとまらないという面もある。

 「基地撤去をしていくために、どうすればいいのか具体的な方策を考えなければいけない。基地従業員や地主もおり、基地経済に頼っている面もある。ただ撤去、縮小というだけでは、現実味がない。基地撤去で落ち込む分の経済をフォローしていく現実的な政策を出さないとだめだろう。基地がなくなって疲弊したのでは、やはり基地は必要だということになりかねない」

 ―経済的自立を掲げながらも現実には厳しい。

 「政府に対して一国二制度を打ち出すくらいの大胆さ、独立をも念頭に置いた政策を強く要求していくことが必要だ。現在でも自由貿易地域や情報特区などがあるが、段階的に拡大し、一国二制度的な自治制度を持つべきだろう」

 「特定免税店についても、本土ではあまり知られていない。沖縄側がメッセージを十分に発しきれていないのではないか。反対意見も多いが、経済自立のためにはカジノ誘致も一つの方法だと思う。先進国の中でカジノがないのは日本だけだ。風紀上の問題があるなら、無人島につくってもやっていけると思う」

 「将来的には、日本からの独立志向が必要だろう。本土に従属するのではなく、文化的にも政治的にも沖縄の独自性を強く打ち出していくべきだ。政府と対抗しうるくらいの力を持たない限り、基地問題にしても現実至上主義に押し流されてしまうことになるのではないか」(聞き手=東京支社・浜元克年)

 おかどめ・やすのり 『噂の眞相』元編集長 1947年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。79年、「反権力、反権威」を掲げて月刊誌『噂の眞相』を創刊。25年にわたって編集長兼発行人を務めるが、今年4月号で休刊。8月から沖縄に移住。

http://www.okinawatimes.co.jp/spe/heri_tou20040922.html



<2004年9月23日 朝刊 1面>

「沖縄」を問う・米軍ヘリ墜落事故(6)


浅野健一さん
事故後沈黙 権力におもねた全国報道
メディア動かす行動を

―米軍ヘリ墜落後、全国メディアの報道は。

 「八月十三日にラジオで一報を聞き、夜のニュースを注視したが『巨人軍・渡辺恒雄オーナー辞任』や『アテネ五輪開幕』ばかりで、小さな扱いだった。翌朝の新聞各紙も現場写真は掲載したが、巨人や五輪に埋もれていた印象だ」

 「その翌日に報道は消え、金メダルラッシュがはんらんした。米軍ヘリ墜落事故はトップ、準トップで三、四日は続くぐらいの事件。仮に早稲田大学や同志社大学で米軍ヘリが墜落すれば、大事件として扱われていただろう」

 ―なぜ、小さな扱いか。

 「『死者が三人出ればニュース』という感覚がメディア内にはびこっている。さらに、『沖縄には基地があるから当たり前』という程度の認識だったのではないか。また、沖縄だけでなく、年間三万五千人の自殺者、路上生活者や元従軍慰安婦の女性たちなど、メディアのマイノリティーへの視線が弱すぎることも起因している」

 「このようなメディアの状況下で、沖国大のホームページは生々しい情報を発信した。NHKが伝えない話を、大学のホームページが発信したのは画期的な出来事だ」

 ―小泉純一郎首相は、夏休みを理由に稲嶺恵一知事と会わなかった。

 「思い出してほしい。映画館で手を振ったり、金メダルをとった選手に電話で祝福する場にカメラがいるのは不自然でしょ。これは、人気を国民にアピールする首相の公務。メディアは夏休み終了後に首相の対応を批判したが、休み中に追及しなければ意味がない。首相に墜落についてのコメントすら求めなかった番記者は猛省が必要だし、首相を甘やかすだけの官邸記者クラブは存在意義が問われる」

 ―その後の報道は。

 「川口順子外相が米国に『遺憾の意』を伝えたころ(八月二十三日)から、報道が増え始めた。政府のお墨付きが付いてから、急に勇ましくなったともいえる。しかし、一部では『早く辺野古に移すべきだ』のような権力側が望む議論の展開が目に付いた」

 「米軍ヘリ墜落報道について、メディアには二重の罪がある。事故後の十日間、沈黙したことと、もう一つは権力におもねた報道をしたという罪だ。戦後ジャーナリズムの汚点の一つだろう」

 ―メディアに望むことは。

 「沖縄と本土の『温度差』という言葉が使われるが、私は違うと思う。本土の記者が沖縄の歴史を知らないだけだ。学び、メディア内で議論することで『温度差』は埋まる。なぜ、沖縄に基地があるのか、新基地は必要なのかなど、次々と問題提起してほしい。埋もれた問題を掘り起こし、社会を覚せいさせることがジャーナリズムの役割だ」

 ―沖縄に望むことは。

 「特に、沖国大生たちは本土に来て、あらゆる手段を使って自分の大学キャンパスで起きた事件を訴えてほしい。その取り組みが、本土メディアを動かすかもしれない」

(聞き手=中部支社・磯野直)(次回から2面で随時掲載します)

 あさの・けんいち 同志社大教授(メディア論)。1948年生まれ。慶応義塾大学卒。元共同通信記者。著書に「『報道加害』の現場を歩く」「犯罪報道の犯罪」など。

http://www.okinawatimes.co.jp/spe/heri_tou20040923.html
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/k_index.html



沖国大ヘリ墜落事件情報ネットワーク
http://www.okiuwebnet.com/syamaguchi/network/jhome.html

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