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ブラジル南部に注目すべき都市がある。「環境首都」と言われるクリティバ市だ。
地球温暖化が深刻な問題として意識されるようになって、都市経営の目標として「持続可能な都市(Sustainable City)」という言葉がよく使われるようになっている。しかし、現状では、明確な戦略をもって「持続可能な都市」への歩みを始めているところの多くは欧米の都市だ。その中にあって、クリティバ市は、発展途上国における「持続可能な都市」として、注目を集めているのだ。
クリティバ市は、ブラジル南部のパラナ州の州都で、人口約160万人の大都市である。1970年代の始めには、人口が約60万人だったというから、30年間の間に2.7倍になっている。
クリスティーン・マックレオド(Kristeen MacLeod)さんの「持続可能性をめざすクリティバの都市計画」("Orienting Urban Planning to Sustainability in Curitiba, Brazil")に紹介されているように、1960年代半ばに、人口増加を前提に、モータリゼーションとスプロール化を抑えることを狙った、バス交通システムと土地利用規制を柱とする都市計画がつくられた。
クリティバ市にとって幸運なことに、この計画作成の中心になったジャイメ・レルネル(Jaime Lerner)さんが71年に市長に任命された。この計画をうまく軌道に乗せて、市長は市民から高い信頼を得ることができた。
都市構造の幹となる道路にバス専用レーンをつくって急行バスを走らせ、急行バス駅の近くは高層ビルなどの高密度の土地利用ができるようにした。駅から離れるとともに低い密度に制限するというルールをつくり、これを実現していった。この政策が見事な効果をあげ、クリティバはあまりクルマに乗る必要のない都市になっている。
そのほか、緑地の拡大と緑地を結ぶ自転車道路のネットワークづくり、ゴミのリサイクルなどで優れた達成を示していて、高い「生活の質」を実現している。
前回の連載「参加型市政の実験(2)大きな所得格差」で述べたように、ブラジルは所得格差がきわめて大きい国であり、その背景には農村の大土地所有制度がある。そのため州都のクリティバ市でも、土地を失った多数の貧困層の流入が続いている。クリティバ市は、優れた交通システムをつくるだけでなく、こうした「所得配分の不平等」という課題にも果敢に挑み続けてきている。その意味で真に「持続可能な都市」の名に値する街ではないかと思われる。
「持続可能な発展(sustainable development)」というのは、資源を食いつぶしたりして将来の世代の豊かさを犠牲にすることのない、社会、経済、文化の発展進路の選択ということなので、「地球温暖化の防止」や「生態系破壊の防止」とともに「所得配分の不平等の改善」を含む。というのは、現代世界のひどい「所得配分の不平等」を是正できないと、紛争や暴力の危険の大きい社会をのこし、将来の世代の生活が犠牲にされることになると考えられるからだ。
そうした点を踏まえると、国境という壁で発展途上国の人たちの流入を妨げている欧米の「持続可能な都市」より、貧困層の流入という難問にさらされ、それに敢然として立ち向かっているクリティバ市の方が、ほんとうの意味で「持続可能な都市」だと言えるだろう。
この連載では、こうした発展がどうやって可能になったのかを探ってみよう。
(編集部)[2004/03/20]