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(回答先: 南の持続可能都市(2)交通システムと土地利用【JANJAN】 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 3 月 24 日 20:07:34)
(写真をクリックすると大きな写真が表示されます。) [手前が歴史的な建物と町並みが保存された 中心部=ブラジル・クリティバ市提供] |
前回の連載で論じたように、クリティバのレルネル市長は、クルマに乗る必要があまりない都市構造を作っていくことができるという確信を持っていた。そこで、中心市街地の構造も、古くからの町並みを壊してクルマ社会に合わせてつくり替えるのではなく、都市の記憶を重視する政策をとった。クリティバでは、歴史的な建物を保存するとともに、新しい用途での活用を進めていったのである。
レルネルさんは71年、市長になって間もない頃に、手始めに中心市街地でブラジルで最初の歩行者専用路をつくった。実績がまだない時期だったこともあり、商店主たちはクルマが入れなくなると顧客が減るという不安をもち、この計画に反対した。しかし、市長は試しに実施してみようと説得し、一定期間の実験を行った。その結果、歩行者専用路をつくると市民は安心して散策を楽しめるので商店の売上が増えることがわかり、この試みは定着した。
クリティバ市のもうひとつの都市政策の柱は、「緑地の拡大策」だが、じつはこれは水害対策と重なっている。
ポール・ホーケン(Paul Hawken)さんたちの「人的資本主義(Human Capitalism)」(Natural Capitalismの14章)に書かれているように、クリティバ市は2つの川に挟まれ小さな川も多いため、中心部も水害に侵されやすい立地条件にある。
レルネル市政は初期にこの問題に取り組み、大きな費用のかかる従来の治水政策ではなく、河川沿いに公園をつくり河川管理と水質保全の機能を持たせるという政策をとった。
河川の氾濫原に多数の小さな池をつくって、大雨の際の遊水池とし、その周りには帯状に公園をつくった。そして、河原をスポーツやリクリエーションのために市民がよく利用できるよう整備した。また、人目が行きとどく場所にして、ゴミの投棄を防ぎ、水質保全を図るといった具合に、さまざまな機能を重ねた。
クリティバ市のプランナーたちは、いろいろな機能を結びつける「統合的な問題解決」に長けている。(田中宇さんのリポート「スラム街の裏にうごめく人々」を読むと、河原を公園にしたのは、不法住居ができスラム化するのを防ぐという狙いも強かったことがわかる。)
その後、クリティバ市では緑地と公園の拡大が重点的な政策の一つとなっていった。
その考え方を端的に表すものとして、私有地の樹でも許可なしに伐採することはできず、1本の樹を切る許可を得るためには、2本の樹を植えなくてはいけない、というルールがつくられている。こういった緑地拡大策は、雨水が浸透する地面を増やすことで水害を起きにくくする効果を伴う。
こうした政策が効果をあげ、現状では、公的な緑地の面積は一人あたり36u(東京都の公園面積は5.3u/人)というから、緑がずいぶん豊かな街になっている。これは、クリティバの高い「生活の質」を支える大事な要因に違いない。
(編集部)