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「どこから利潤が上がろうと問題ではない」という柄谷=岩井的言説について:バルタン星人さんへ
http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/322.html
投稿者 あっしら 日時 2004 年 6 月 20 日 13:17:06:Mo7ApAlflbQ6s
 


バルタン星人さん、どうもです。
一つだけ認識のズレがあるかも、と思い取り上げさせてもらいます。


● 「どこから利潤が上がろうと問題ではない」というのが柄谷=岩井的言説の核心

近代経済学者もそうですが、ウォッチャーたち(笑)は、経済主体(個別企業)の利潤が根源的にどこから上げられかの問いの重要性を見落としていると思っています。

面白いことに、これは、国際主義者と個別経済主体という両極ウォッチャーが陥りやすい罠で、中間の国家主義的ウォッチャーは回避しやすい罠です。
(国家主義者という呼称はあまりに政治的な色が付き過ぎているので、国民経済主義者と考えたほうが落ち着きがいいでしょう。まともな官僚をイメージしてもいい)

国際主義者は、国民国家を存在としては認めつつも、政治的ないしは経済的な“壁”として嫌悪する傾向があります。(ここから左翼とグローバリズム(トヨタなども含む)の相補性が生まれます)
しかし現実は、EU=ユーロを別にすれば、国民国家単位で貨幣が発行され管理もされてています。
利潤は貨幣のある状態を示す経済学概念ですから、貨幣が国家に規定されているのなら、利潤も国家に規定されているはずです。
また、国家にとって経済政策は重要なポジションを占めていますから、経済状況の変動は政治の変動にもつながり、それが経済政策の変更となって貨幣及び経済活動に影響を与えるという連関もあります。

このようなことから、国家を基盤ないし枠として経済事象(社会)を考える国家主義者は、「近代経済システム」を創出した国際金融家を除けば、「総資本」の立場に立てる人と言えます。
(国際金融家は、国際主義者であり、国家を超えて世界の「総資本」を、抽象論ではなく現実的に考え得る破格の存在です(笑))

個別経済主体は、どこから利潤が上がろうと問題ではない有象無象ですし、貨幣に色が付いているわけでもなく、罠に落ちるのは仕方ないでしょう。
(経団連なども、このような性格を持つ有象無象の利益集団でしかないのなら、政治に口を出すべきではないと叱っておきます)

ここまでの説明は、経済活動が今なお国民国家を基盤として行われていることを再確認したものと受け止めていただければ十分です。


世界「総資本」を対象とする国際金融家の目ではなく、一国「総資本」を対象とする国家主義者の目で見ていきます。
(原理論的には同じですが、そのほうが、現実論としてわかりやすいし、現実的な意味も大きい)

前提として、資本家や高額所得者の貨幣退蔵がないとし、保有及び預金されている貨幣はすべて経済取引に使われるものとします。
政府部門は、支出する貨幣がそこから徴税ないしは借り入れしたものであれば捨象できるのでそうします。中央銀行は昼寝で(笑)貨幣残高の増減に手出しせず、銀行は「信用創造」のみをしないとします。(銀行は預金を全額そのまま誰かたちに貸すだけ)

国際主義者や個別経済主体にとっては「どこから利潤が上がろうと問題ではない」のですが、ある国民経済にとっては、「総資本」の利潤がどこから上がっているのかは、次のように大きな問題なのです。

たぶん、最悪は「総資本」に利潤がない状態です。
AとBという経済主体は利潤を得ているが、他の経済主体は欠損で、経済主体の利潤総和は欠損という状態です。
(ある国全体が1兆円かけて経済活動をした結果回収したお金は9千900億円だったという状態)

それから生じる問題は多岐に渡りますが、ここでは、縮小再生産に陥ることに絞ります。
企業(資本家)や高額所得者の貨幣退蔵がないという前提のままで縮小再生産です。
(縮小再生産で起きる失業や倒産などの悲劇はことさら述べません)

※ 「総資本」が欠損でも個別経済主体ベースでは黒字(利潤プラス)のところもあるので、そこにおいて技術革新的設備投資が行われ、数年後に「総資本」利潤の状態を導く可能性はあります。


ここで見落としてはならないのは、貨幣退蔵がないのに「総資本」が欠損になっている事実です。

貨幣の退蔵はないのですから、欠損の原因は、貿易収支の赤字をおいて他にはないことになります。欠損の100億円は、国外に流出してしまった貿易赤字額です。
(前提条件であれば、本来は損失も利益もないはずです。これ自体がほとんど理解されていないようです)


次に、「総資本」の利潤がプラスという状態を考えます。
(ある国全体が1兆円かけて経済活動をした結果回収したお金は1兆1千億円だったという状態)

前提を思い出せばわかるように、眠っていた貨幣はその国にはなかったのですから、利潤の1千億円は、国外から流入した、すなわち、貿易収支黒字に拠るもの以外にありません。
その国は、1千億円余計に使われるので、拡大再生産に向かいます。


※ 「総資本」が利潤を上げていても個別経済主体ベースでは赤字のところもあるので、失業や倒産もありますが、全体が拡大再生産で動いているの、失業者は吸収されるはずです。(技術革新的設備投資も行われるので、数年後には、それが過剰労働人口を生み出す可能性はあります)


このように、利潤をどこから上げているかは、国民経済にとって死活とも言える話なのです。
個別経済主体や国際主義者は、同じ日本人から利潤を得ても同じだと思う(言う)でしょうが、現実の経済活動の国家規定性に照らせば、それは子供じみた考えでしかありません。

ユダヤ教が同胞愛を語り同胞からの利息取得を禁じ、イスラムが共同体性を強調し金持ちの貨幣退蔵を非難して喜捨を勧め、やはり利息取得を禁じている“直観”(啓示のこと)は、身内からの利益や貨幣退蔵が、民族や宗教共同体の全体にとってまったく益にならないどころか害であり、ひいては金貸しや大商人の損にもなるという現実論理に基づいています。


これが、古ぼけた「重商主義」を今なお強調し、「利潤の真の源泉が外部共同体(国家)から貨幣的富を余剰として得ることにある」と強調する意味です。

ある国の貨幣的富を外国から稼ぐことに注力する重商主義は、国民経済が世界経済を構成しているときのみ有効な政策です。

世界の「総資本」をリアルなものにしようとするグローバリズムは、重商主義の否定でもあります。
国際金融家は、国際主義者の目と頭を持つ強欲な個別経済主体です。

ここで説明したことから、そのようなグローバリズムの行き着く先はリバイアサンか同胞愛いずれかの復活だと予測しておきます(笑)

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★ レス対象

バルタン星人さん:「Re: 「近代経済システム」の3特性を中心に...」
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