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(回答先: Re: テスト 投稿者 クエスチョン 日時 2004 年 4 月 23 日 22:32:58)
解放3人診察 斎藤 学氏に聞く【東京新聞 こちら特報部】
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040423/mng_____tokuho__000.shtml
イラクの邦人人質事件で解放された高遠菜穂子さん、今井紀明さん、郡山総一郎さんは「急性ストレス障害」と診断されている。拘束の記憶に加え、国内のバッシングも傷を深める可能性がある。それでも帰国直後に三人を診察した精神科医、斎藤学・家族機能研究所代表は言う。「“弱者”になるな。志を持って行ったのだから」−。
(早川由紀美)
知人の弁護士などからカウンセリングを依頼された斎藤さんは、十八日夜、羽田空港で帰国した直後の三人と会った。一人十−十五分ほどの面会だった。
「今井くんははきはきしているけれど、体が参っていた。肌は冷たくてぬれていて脈は微弱で速かった。循環不全で内科的措置が必要だった。郡山さんはユーモアも含めて普通の応答で、当初『精神科医の面接は必要ない』と話していた。でも脈をとると一〇〇以上(成人男性で六〇−七〇程度)あってびっくりした。血圧も一七〇以上あった。羽田についてすぐだったせいか、記者会見があると考えていたせいか緊張状態にあった。傷ついている感じもあった。取材する側が取材される側になりショックだったのだろう。高遠さんはほとんど泣いていた。ただ大きな記憶の欠損は見られなかった」
「(アルジャジーラで放映された)ビデオの撮影前まで、高遠さんはストリートチルドレンにプレゼントをしているんだとか、自分の活動をアラビア語と英語で説明していい雰囲気だったと言っていた。しかし一部で言われているような、ビデオのために演技をしたというわけではないと思う。今井くんは『殺されるかと思った』と話していた。郡山さんはスパイと疑われたためか当初、一人で連行された。彼が一番怖かったのはその時だろう」
■心労加わればPTSDに
この後、本人不在の会見で、斎藤さんは三人は急性ストレス障害で、今後心労などが加わればPTSD(心的外傷後ストレス障害)になる可能性もあると説明した。
翌十九日も斎藤さんは、東京都内のホテルで再度、三人に会う。当初、記者会見をする予定があり、場合によっては質問をドクターストップの形で止めてほしいという依頼があったためだ。男性二人は脈も落ち着いてきていたが、高遠さんは情緒不安定なままだった。「朝、ニュース番組で自分たちの帰国映像を見た時が、一番怖かった」と泣いていたと言う。
■トラウマ体験後、泣くことで再生 弱者になるな 自分の帰国映像「一番怖かった」
斎藤さんは「何で泣いているか分かるか」と問いかけ、こう続けたと言う。「あんたはロケット弾を載せた車が近づいて来ているときに一度死んでいる。今は自分の死を悼んで泣いている。お葬式だ。悲嘆の仕事をしている。トラウマ(心的外傷)となる体験の後、自分を強くして生きていく人もいれば、人を避け閉じてしまう人生もある。泣いているというのはルネサンス(再生)だ」。それでも高遠さんは「私、悪いことしたんでしょう」と叫んで泣き続けたと言う。
■「志」プラスに転換を 支援者・取材囲まれ"拘束状況継続"
ホテルは大勢の報道陣が取り囲んでいた。三人が解放された後、立ち寄ったドバイでは、報道陣と弁護士がもみ合ったり、また、関西空港では詰めかけた人の中から、三人の関係者が生卵をぶつけられる場面もあったといい、家族側弁護士などは神経質になっていた。
「帰国日(十八日)に比べ、関係者の興奮は収まっていたが、三家族が一緒に動き、支援する人々がそれを取り囲むという形で動いていると、社会が全部敵で、その中に落下傘で降り立ったカルトの一味みたいになってしまう。実質的に拘束の状況が続いてしまうことになり、病気の予防としても、あまりいい環境ではない」。斎藤さんは短い会見か、スタジオでの代表取材を済ませ、実家に帰ることを提案した。会見は実現しなかったが、三家族は翌二十日午前中にそれぞれの実家に向け出発した。
北海道の帰路、高遠さんは足がふらつき、車いすが必要だったなどの報道もあったが「それは、処方した精神安定剤のためだと思う」とする。
■語ること大切 記憶封印すると因果関係混乱も
「何より大事なのは、周りの人と事件について語ることだ。そうすれば三、四週間で恐怖などは消え、後の経過が良くなる。米国ではコロンバイン高校の高校生の銃乱射事件や、9・11テロのとき、医師や看護婦などの危機対応チームが出動した。何を見たかを語らせるためだ。強盗や天災でも同様のチームが出る。しゃべらないでいると封印された記憶になり、後で症状が出てきたときに(事件の)因果関係が分からなくなってしまう」
高遠さんは二回目の面接の際「(犯行グループの)サラヤ・ムジャヒディンより日本のマスコミの方が怖い」とも漏らしていたという。
「今回はマスコミがお茶の間に悪意の素材を提供し、見てる人は何の苦労もなく二分、三分見て『とんでもないやつ』とか言っている。ほんの二、三分のことが、場合によっては人を殺すことだってある」
■反発の背景に『女子ども論』
「自己責任論」に代表される本人や家族へのバッシングは「女子ども問題。子どものくせに、女のくせにという感情が根底にある」と分析する。さらに「政府を批判するなど、日本人に期待される家族像ではなかったということもある。日本人の感覚では、そこは謝罪すべきだというのがある。自分に理解できないものへの反発が一気に広がった。中年男に宿っている、そこはかとない嫌悪感が一気に噴き出した」。
パウエル米国務長官が三人について「日本の人々はとても誇りに思うべきだ」と発言したことなどで「自分たちのやってきたことを肯定的にとらえることができ、いい循環が始まるんじゃないか」と斎藤さんはみている。そのうえで三人にエールを送る。
「高遠さんは、よく通じないアラビア語や英語で、ストリートチルドレンと向き合っているときの姿も、車いすでよたよたと自宅に帰る姿も、どちらも彼女だ。でも生き生きとしている方がいいに決まっている。悪いことはしてないのだから公然と胸を張って『日本人を救うのは政府の使命』と言えば面白いのに。支援する人々は保護すべき存在として弱者扱いしているが、弱者になれば、バッシングしている人たちの『女子ども論』の中に収れんしちゃう。パウエルが言うように、志があるんだから、また行けばいい」
「今井くんは、いきなりイラクに行くんじゃなくて日本で基礎をしっかりするとか、外国でもきちんと研究機関に留学するとか地道にやった方がいい。ある種、注目される存在になり勘違いしてしまうと危ない。振り向くと誰もいなくて自分に何もないということにもなりかねない。郡山さんは人質体験を金に換えればいい。プロなんですから」
※デスクメモ
かつて集団暴行事件で「(女性が)裸のような格好をしているのが悪い」との発言を一部で報じられた福田官房長官。
本人は「真意と違う」と発言を否定したが、本当ならこれも"被害者責任論"だ。それにしても、政府の集団バッシングを見ると、政府首脳らにも「女子ども論」が根深くありそうだ。(透)