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食糧自給の放棄・食の危険・飽食と飢餓・自然環境と生態系の破壊
加 瀬 勉
日本から牛丼が消えた日
日本最大の牛丼チェーン店吉野家デイー・アンド・シーは二月九日全国九百七十六店舗の牛丼の販売を中止した。同業界二位の「松屋フーズ」三位の「すき家」四位「なか卯」もそれぞれ販売を中止した。吉野家の販売中止の理由は材料の牛肉の九九パーセントを輸入しているアメリカでBSE(牛海綿状脳症―狂牛病)にかかった感染牛が見つかったからである。アメリカ産の牛肉の輸入停止措置が取られたので在庫の牛肉が底を突き販売できなくなったのである。
BSEに感染した牛は一九八六年にイギリスで発見されヨーロッパ大陸に伝播し大問題となった。二〇〇一年日本(千葉県白井町)でも発見され九頭が処分された。二月二十一日が神奈川県平塚で十頭目が発生した。この間、イギリスでは一万八千頭の牛が処分された。BSEクロイツフエルトヤコブ病が人間に感染することがはっきりしたからである。日本で消費される牛肉の六一パーセントはアメリカ産である。このアメリカでBSE感染牛が発見されて牛肉の全面輸入停止となり、輸入は前年度同月比四九パーセント減の二万三千トンにとどまった。日本から牛丼が消えたのである。
鳥インフルエンザの広がり
山口県阿東町「ウイン・ウイン・ファーム山口農場」で昨年十二月一月にかけて、一週間の間に六千羽の鶏が死んだ。H5N1型毒性の強い鳥インフルエンザに感染したのである。同農場の鶏三万四千羽を処分し、半径三十キロの鳥と卵の移動を禁止した。一日九十万個の卵が販売できなくなり、養鶏業者は大きな打撃を受けた。二月八日農水省は感染ルートは不明のまま終息宣言をした。
ところが、二月十四日大分県九重町でペットのチャボ七羽が死亡。高病原性鳥インフルエンザH5型の感染を確認。発生場所から半径三十キロ以内の鶏・卵の移動禁止措置を取った。この制限区域内には、約七十六万羽の食肉ブロイラーが飼育されており、約五十七万羽の採卵鶏が一日約三十トンの卵を産んでいる。ここの業者もこれまた深刻な打撃を受けることとなった。
日本・タイ・ベトナム・中国・韓国の東南アジアで発生した鳥インフルエンザはアメリカでも発生した。この鳥インフルエンザ菌は人にも感染することが判明した。世界保健機構(WHO)の確認したところによるとベトナムでは発生から一カ月で死者十四人、感染地域は全国の六十四省の九割に達している。
ベトナムの農業に携わる国内千二百万世帯の七割は鶏を飼育しており深刻な打撃を受けている。タイでは死者は六人で隔離者は二十二人となっている。ラットクラバン地区でコウノトリが五百羽、北部ナコンサワン県のプンポラペット湿地で三百羽のコウノトリの死亡が確認された。
中部ナコンパトム県では養鶏場の鶏を猫が食べ十三匹が死亡した。東北部カラシン県で約二百頭の牛や水牛が感染して死んだ。中国農業省の発表によれば吉林省とチベット・ラサ区で感染鶏が出た。中国全土三十一省・自治区・直轄市のうち計十六地域に拡大した。半数を超えた。
タイの動物園のウンヒョウ(豹の一種)とホワイトタイガーも感染して死亡した。ベトナムの豚からも鳥インフルエンザ菌が検出された。日本の鶏肉の三〇パーセントは東南アジア地域からの輸入である。牛肉に続いて鶏肉の輸入を停止した。アメリカでも発生したために鶏肉の輸入停止措置が牛肉に続いてとられた。
カナダ西部ブリティッシュコロンビヤ州でも鳥インフルエンザ菌が検出した。農水省は二月二十日カナダからの鶏肉と鶏肉加工品の輸入措置を停止した。日本はカナダから二〇〇二年鶏肉四十三トン、加工品二十四トンを輸入している。総輸入量の〇・一パーセントにあたる措置が取られた。
牛海綿状脳症と鳥インフルエンザ問題がわれわれに教え警告しているのは、地球上の生態系が破壊され、人類が経験したことのない深刻な事態が起こりつつあるということである。
飢餓を作り出す飽食の日本
農水省が二月九日にまとめた牛肉小売価格調査によると、輸入肉全国平均小売価格は百グラム当たり三七一円と前週に比較すると七円高、国産牛肉六七九円で九円高となった。生活に深刻な影響が出てきた。
一九六〇年度の日本人一人当たりの消費量は五キロであったが、二〇〇二年には二十八キロと五倍に増えた。内訳を見ると牛肉六キロ、豚肉十一キロ、鶏肉十キロと。六〇年度に比べると牛肉は六倍、豚肉十倍、鶏肉十三倍に伸びている。二〇〇二年の世界の食肉生産量は約二億四千五百万トンで六二年に比べて約三倍の伸びを示している。
牛や豚、鶏は穀物を飼料として成長する。食肉とは間接的に大量の穀物消費なのである。肉牛の体重一キロを増やすのに八キロの穀物量を必要とし、豚の体重一キロを増やすのに四キロの穀物量が、鶏の体重一キロを増やすのに二キロの穀物量が必要とされる。
二〇〇二年度の世界の肉生産量を穀物量に換算すると九億三千三百万トンになる。この数字は世界の年間穀物生産量の約半分に匹敵する量である。この穀物量は飢餓で苦しむ人々に配分しななくてはならないのに食肉生産に消費され、その穀物消費によって生産された肉が一部先進資本主義国で消費されているのである。
穀物大量消費による食肉生産は世界に深刻な飢餓を作り出している。日本はその最たる国である。食糧自給政策を放棄し世界一食糧を輸入して飽食に明け暮れている日本人は飢餓で苦しんでいる人々をさらに地獄の底に突き落とし、飢餓で亡くなった人々の骨をむしゃぶっているのである。日本における肉類の消費とはこのことを意味しているのである。食糧問題における飢餓と飽食の南北問題はグローバル化のなかでさらに拡大、深刻化しつつある。
食糧自給政策を放棄した国
世界の独立国のなかで、食糧自給政策を放棄しているのは日本だけである。日本は世界一の食糧輸入大国である。金額にして年間七兆円にのぼる。海外依存度を面積概算すると一億三千万人が一人一ヘクタールの面積を海外に依存していることになる。日本の耕地面積は五百六十万ヘクタールであるから途方もない海外依存度である。
昨年度の日本の品目別自給率は輸入量はトウモロコシ千七百万トン、自給率〇パーセント、小麦六百万トン、自給率一一パーセント、大豆五百万トン、自給率五パーセント、野菜三百万トン、自給率八五パーセント、肉類二百万トン、自給率五二パーセント。
肉類五二パーセントの自給率といっても飼料はすべて海外依存穀物飼料である。日本人は国民一人当たり年間に牛肉を六キロ食べているので、穀物量に概算すると四十八キロとなる。豚が十一キロで四十四キロの穀物量となる。鶏は十キロだから二十二キロの穀物量となる。
年間国民一人当たり約三十キロの肉を消費することは百十四キロの穀物消費となる。一億三千万人の人が年間百十四キロの飼料穀物量を海外に依存しているのである。肉の消費とは穀物の消費である。この穀物の消費が世界に飢餓地獄を作り出しているのである。食糧の南北問題は深刻で、この深刻な事態をさらに貧富の差として拡大してゆく世界的システムがグローバル化である。
農水省試算だが、日本に現在ある農地、農地に利用できるすべての土地に、米、麦、豆、芋の穀物のみを作ったとして、その穀物生産量では一日一人千六百カロリーしか確保できず、食糧輸入が全面的に停止すれば約二千万人の日本人が餓死するといわれている。
牛丼の次は大豆、味噌、豆腐が消える。それがないとだれが断言できよう。飽食とは食糧の収奪と支配であり同時に世界の食の安全を脅かし、世界的飢餓を作り出し、さらに地球環境を破壊し、生態系を破壊してBSE・鳥インフルエンザを発生させているのである。
北海道、九州桜島畑作地帯、岩手北上盆地に続く北総畑作地帯は日本四大畑作地帯の一つである。そのど真ん中に三里塚空港は建設された。空港建設、巨大開発に反対し、農業・農地、食の安全を守り環境破壊を食い止める闘いが人間にとって人類にとって最高の価値であることをわれわれは知らなければならない。
二〇〇四年二月二十三日
http://www.jrcl.net/web/frame040301e.html