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(回答先: デフレは金融政策で解決可能だと思うのですが。 投稿者 オニオン 日時 2004 年 2 月 01 日 21:05:26)
オニオンさん、レスありがとうございます。
オニオンさん:「「まず、デフレを仕掛けることは出来ても、デフレを終わらせることは金融政策レベルでは無理なので、都合よく「デフレを終らせて買い占めた不動産価格でキャピタルゲインを得る」というわけにはいきません。」
この意見について疑問があります。デフレは金融政策で簡単に解決可能だと思うのです。デフレと言うのは生産物(財及びサービス)の量ととマネーサプライの量との間のバランスに狂いが生じ、生産物>マネーサプライという形になったために生じることだと思います(インフレは逆に生産<マネーサプライという形)。この事からデフレを起こすにはマネーサプライの伸びを生産の伸び未満に抑えるか、生産が伸びなくともマネーサプライの量を減らせば簡単に起こせることになります。逆にデフレを終わらせる(或いはインフレを起こす)には生産を減らすか、生産の伸び以上にマネーサプライを増加させればいいことになります。」
あっしら:
「この事からデフレを起こすにはマネーサプライの伸びを生産の伸び未満に抑えるか、生産が伸びなくともマネーサプライの量を減らせば簡単に起こせることになります。逆にデフレを終わらせる(或いはインフレを起こす)には生産を減らすか、生産の伸び以上にマネーサプライを増加させればいいことになります」は、数学的にはそう言えますが、現実的な論理ではありません。
お金の供給元は日銀(中央銀行)ですからそこが蛇口を閉めればベースマネーが減少し、金融調節手段を行使することでお金を吸い上げマネーサプライも減少します。(ヴェルナー氏が指摘しているように“窓口規制”という非制度的手段も合わせればより確実にマネーサプライを収縮させることができます)
しかしだからと言って、生産物の増加に見合う(ないしそれを超える)マネーサプライの増加が金融政策で実現できるわけではありません。
マネーサプライの増加は、ベースマネーの増加及び「信用創造」によって実現されるものです。ベースマネーの増加も貸し出しであり「信用創造」ですから、約めて言えば、貸し出しの増加によってマネーサプライは増加するということになります。
そして、増加したマネーサプライが生産物の需要となるためには、そういう購買行動を起こす経済主体(企業・家計・政府)にお金が渡らなければなりません。
この間の日本経済も、3兆円ほどの日銀当座預金残高が4年間で30兆円を超えるほどのペースでベースマネーが増加しましたが、マネーサプライはわずかな増加しかみていません。これは、日銀から商業銀行への貸し出しは増加している(ないし商業銀行の回収は増加している)が、商業銀行から一般企業や家計への貸し出しは増加していないことを意味します。(政府部門は赤字財政支出(赤字国債発行)を増やしているので、その分がマネーサプライの増加に貢献しているだけとも言えます)
「デフレ不況」下の現在、借り入れを望む企業は、なんとかして企業を存続させたいダメ企業か、好調な輸出で生産設備の増強を図りたい企業や先延ばしにしてきた設備の更新をやる気になった企業という限定的なものです。
銀行も貸し出しが収益源ですから貸し出しをしたいと思っていますが、不良債権(過剰債務)問題の重石があり、貸し出し資産の増加に大きくは踏み出せない状況にあります。
しかし、不良債権の問題がクリアされたら、貸し出しが増加すると言えるでしょうか?
確かに好調な輸出で生産設備の増強を図りたい企業や先延ばしにしてきた設備の更新をやる気になった企業への貸し出しは行われるでしょうが、なんとかして企業を存続させたいダメ企業への貸し出しは忌避すると思います。
なぜなら、「デフレ不況」でダメ企業に貸し出しを行うことは、新たな不良債権を生み出す好意だからです。
「デフレ不況」であれば、今は順調な企業も、ちょっとした変動で不調になります。これは、好調な輸出で生産設備の増強を図りたい企業や先延ばしにしてきた設備の更新をやる気になった企業への貸し出しが、予期せぬ不良債権になる可能性を示唆するものです。
また、マネーサプライの増加が必ずしも生産物への需要増加に結びつくわけではないことは、80年代後半の「バブル経済」に明かです。80年代後半の一般物価の上昇は2%から3%という低いもので、土地(不動産)や株式という資産価格の上昇が異常と言える上昇を見せました。これは、増加したマネーサプライ(預貸率が120%という“過剰「信用創造」”でもあった)の多くが投機的取り引きに投じられたことを意味し、マネーサプライの増加が必ずしも生産物への需要拡大につながるわけではないことを示しています。
マネーサプライの増加を通じてデフレを解消しようと思うのなら、銀行が貸し出しをスムーズにできる財務状況を実現し、貸し出しで増加したマネーサプライが生産物への需要拡大に結びつく経済主体に渡るものでなければなりません。(最大の需要層はGDPの60%を占める家計(個人消費)です)
これは、金融政策だけでは無理であり、国家の経済政策や税制変更、そして何よりも、総資本(企業全体)の態度変更を必要とするものです。
オニオンさん:「確かに生産の量に変化を起こすのは大変です。増やすだけなら生産性の向上や遊休資源の動員などによって可能ですが、減らすとなると災害や戦争などによって生産設備の破壊を起こすか、厳しい統制によって生産を管理するなど非常に難しい手段が必要になりますこの事から長谷川慶太郎さんや、渡辺昇一さんなんかは今の世の中はデフレ基調でそれは動かない。と言い切っています。」
あっしら:
供給量を減らすことは、同時に需要を減らすことでもあるという視点が重要です。
供給量を減らすことで、給与所得が減少し、原材料の需要が減少し、機械設備のメンテナンスや新規の需要が減少し、不動産賃貸収入が減少し、税収も減少します。
供給量を減らすことが現在の需要量に近づくわけではなく、需要量をさらに減らし、中期的には供給量>需要のギャップをさらに拡大するという論理を見失ってはならないと思っています。
もちろん、破壊的な供給量削減を行えば、そこから徐々に拡大していける可能性は大ですから、GDP拡大感覚=好景気にはなります。
しかし、それは、100のものをわざわざ10にし、その後に15、20、30と元に戻ろうとするものでしかありません。そして、その結果は、元の100に戻ることができないものだと確信しています。(中国など他の国民経済が、日本の穴を埋める動きに走るからです)
※ 参照書き込み
『“供給=需要”は「近代経済システム」を考察する根幹』
( http://www.asyura.com/2002/hasan15/msg/1173.html )
『「供給→需要」論理は国民経済だけではなく世界経済でも貫徹 − グローバリズムに乗っかったトヨタの末路 −』
( http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/343.html )
『論理としての「供給=需要」と現実形態としてのprosumer(生産消費者)』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/221.html )
★ 需要と供給をめぐるやり取り
ケイちゃん:『問題は、供給ではない。需要だ。』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/145.html )
あっしら:『妄言を吐く者からの反論』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/149.html )
あっしら:『【補足】供給と需要 − 「政府紙幣」発行論者の陥穽 −』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/154.html )
ケイちゃん:『供給が需要を作るのか、需要が供給を作るのか。』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/158.html )
あっしら:『超一級の経済認識力をお持ちのケイちゃんに』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/169.html )
ケイちゃん:『政府紙幣とデフレ下の需要=供給』
( http://www.asyura.com/2002/dispute4/msg/170.html )
オニオンさん:「ではマネーサプライの量に変化を及ぼすのはどうか。こちらは簡単だと思うのです。マネーサプライ、つまりお金は中央銀行による通貨発行残高か銀行貸出(信用創造)の残高によって成り立っています。このことから極端な話日銀が国民一人当たりに100万円くらいばらまけば合計で120兆円ほどのマネーサプライの増加に繋がります。他にも財政支出の一部を通貨発行で賄うなどしてもマネーサプライの増加に繋がります。もっとシンプルに買いオペを増やすだけでもいいと思います。また銀行貸出のを刺激する方法も簡単だと思います。現在銀行貸出が伸び悩んでるのは不良債権が邪魔して銀行が慎重にならざる得ないからだからでしょう。これはリチャード・A・ウェルナーさんの意見ですが、なら不良債権を別会計にでもして国民に気付かれないうちに日銀にでも買い取ってもらえば済む話だと思います(細かいことは忘れましたが、実際去年の秋あたりに四台銀行の一つが不良債権を別会計にすると発表していました)。
だらだら話が長くなってしまいましたが、このようなわけでデフレの解決は容易だと判断しています。」
あっしら:日銀が一過性のお金を撒いても「デフレ不況」を解消することはできない可能性が高いと思っています。
120兆円まいたとしても、それが1回限りのものであれば、それを全額消費に回したとしても、それを使い切った時点でものすごい反動が起きます。
新たに発生した120兆円のために物価が上がり、企業のなかには生産を増強するところもあるでしょうが、120兆円が使い切られた時点で、物価は急激に低下し、増強した生産設備は過剰になります。
一時の夢、ないしは、「祭りの後」になるはずです。
家計が継続的に増加していく所得を手に入れることが、実質的なGDP拡大がないハイパーインフレ(膨大な赤字財政支出)を別にすれば、唯一、現実性があるデフレ解消策です。