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(回答先: 2003.12.06 軍服姿で反戦を訴えるベトナム戦争復員軍人(フリーML山本史郎氏) 投稿者 竹中半兵衛 日時 2003 年 12 月 09 日 08:29:03)
ゲリラ戦
http://dolphin.c.u-tokyo.ac.jp/~suzuki8/viet/guerilla.html
1 ゲリラ戦とは?
ベトナム戦争を語る上で、「ゲリラ戦」に対する知識は欠かせない。
ゲリラ…遊撃戦,または遊撃隊.一般住民の支持を背景として,小部隊が奇襲,待ち伏せ,夜襲などの変則的な戦闘形式で敵を攻撃,その戦闘能力,戦意を低下させる戦法。またそのための小武装集団。(「ベトナム戦争とゲリラ」より)
ナポレオンのヨーロッパ征服時にスペインの民衆が抵抗するために用いた戦術のことを「ゲリラ」と言ったのが語源だが、もともとは 2000年以上前の「孫子」の時代からあった戦術である。
ゲリラ戦が通常の戦争と異なる点は「ゲリラの位置を捕捉し、攻撃場所を予想することが難しい」ということにある。通常の戦争の場合、それぞれの国の軍隊がどこに(厳密にはわからなくても大体は)いるかはわかっているし、軍事境界線に類するもの(いわゆる前線)がある。
ところが、ゲリラ戦に「前線」はない。ゲリラがどこから現れるか、どんな手段で攻撃するかはランダムだ。ゲリラは、できるだけ自分の所在、攻撃計画がばれないように準備し、自分に有利な時機、有利な場所で戦闘を開始する。だから、相対的に少ない人数で大きな打撃を与えることができる。
(ベトナム戦争の場合は「ゲリラ」と呼ばれるが、「テロ」と呼ばれる行為もそれに類似している。ゲリラとテロの区別が曖昧なケースもしばしば見られる。)
また、ゲリラが活動を続けていくためには、当然援助が必要である。非公式の軍隊であるために、食料、弾薬等の物資の補給、情報収集等の面では、ゲリラを支援する組織の存在が欠かせない。一般住民や、外国勢力がそうした存在になることが多いようである。
2・ゲリラ戦に勝つには
1 ゲリラの潜伏先を探し出して撃滅する。
2 一般住民の協力者が出ないように、物理的、経済的、宣伝工作的手法等をとる。
3 外国からの支援を阻止する。
ことが必要であるとされている。(P)
1については、通常の戦争と大差はない。敵を見つけだし、それに攻撃を加え、抵抗能力を失わせることを目的とする。
2、3は、ゲリラに対する援助を止めて、ゲリラ活動を困難にすることを目的とする。
これらの条件は相互補完的なものである。織的に行動できる軍事強制力がなければ、そもそも撃退できないし、いくら潜伏先を探し出そうとしても、住民がみんなでゲリラを匿っていたら探し出すどころか、こちらの動きが筒抜けになり、奇襲を食らう可能性も大きくなる。また、外国からの支援を止めることができれば、有利になる。
ここでポイントとして押さえて欲しいことは、
ゲリラ戦に勝つためには、行政部門、軍部ともに処理能力が高い、国民に信頼されている政府 の存在が欠かせないことであるゲリラ戦においては、単に軍隊を動かすのではなく、各種情報収集及び宣伝工作、国民の支持を取り付けるための政策、ゲリラと住民を隔離するための政策、といった、複雑な行政活動を執行できなくてはならない。軍事面でも、人数と武装で優位に立ってはいるが、どのようにその兵力を配備するか、といった問題は高度な作戦立案能力を要求する。
こうした緻密な活動を長期間(ゲリラ戦を鎮圧するのには長期にわたることが普通である。)展開し続ける能力を備えた政府が無いと、ゲリラ戦に勝つことは(ゲリラが自滅しないかぎり)難しくなる。
3・具体例〜ベトナム戦争の場合
ベトナム戦争の場合、
ゲリラの潜伏先…>農村、ジャングル、ラオスとカンボジアの国境地帯
ゲリラの協力者…>元ベトミン、南ベトナム農民、北ベトナム
ベトナムの環境概説
農村 ベトナムは農業国であり、南ベトナムの人口の90%が農村地域に住んでいる。 ジュネーブ協定締結後南に残ったベトミンが、農村に浸透(関わり合いをもち、 支援を受けられる状況になっていること)して組織を存続させていた。
ジャングル 熱帯に属するベトナムの国土は、ジャングルで覆われている。ゲリラの隠れ場所に適しており、逆にアメリカの軍隊には劣悪な環境が不利となる。
ラオスとカンボジアの国境地帯 南ベトナムと地続きの国であるラオス、カンボジアの国境地帯はゲリラの潜伏場所として格好の場であった。アメリカは基本的には「南ベトナム国内の反乱分子の鎮圧」にあたっているわけであり、ラオスやカンボジアまで軍隊を動かすわけにはいかなかった。一方、北ベトナム及びNLFはラオス、カンボジアに、「黙認してくれれば、何もしない」と言って、ラオス、カンボジアの国境沿い(ホーチミンルート)を北ベトナムからの人員、補給物資が通ることを黙認させた。
サイゴン政権の能力 官吏のレベルが低く、腐敗しており、政策執行能力が低い。また、農民を味方に取り込むことを軽視している。
当時のベトナムは地理的にも、政治的にも、きわめてゲリラ戦に適した状況であった。
ゲリラ戦あれこれQ&A
ゲリラ戦に対抗するにははどれくらいの兵員が必要か?
一説には、ゲリラ戦に対抗するためには10倍の兵力が必要だ、といわれる。この数字は、第二次世界大戦後のギリシアの共産ゲリラ1万5000人をギリシア政府軍が鎮圧するために動員した軍隊の人数が約15万人だったことによる。もちろん、これが必ず正しいわけではないが、ゲリラ戦に対抗する側は、「重要施設の警備」「広域警戒、警ら」「ゲリラ撃滅」といった部分に人員を割かなくてはならないため、ゲリラの10倍、という数字は、鎮圧側が大量の兵力を用意しなくてはならないことの一つの目安ではある。
ゲリラ撃滅にかかる期間はどれくらいか?
マレーでの場合は10年がかりだった。ゲリラ戦は長くなることが多く、特に国内、国外からの支援を断ち切らないと解決が難しくなる。
ギリシアの場合、共産ゲリラを支援していた隣国ユーゴスラビアが支援を打ち切り国境を封鎖したため、ゲリラが弱まり、政府軍が鎮圧に成功した。
ベトナムでは勝てなかったのになぜ朝鮮戦争ではゲリラに勝利できたのか?
原因として、次のようなものが挙げられる。
1 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国の間に地続きの部分が互いの国境線の部分しかないこと
2 北朝鮮の侵略という形で朝鮮戦争が始まったので、アメリカの姿勢を韓国の人々が支持したこと。
(逆に、ベトナムでは、アメリカ=南ベトナム政府に対する反感が強かった。)
3 韓国政府がゲリラ対策を粘り強く推し進めたこと。
これは決定的な答えを出しにくい問題である。他にも、マレー半島、フィリピン、ギリシアなどで、共産ゲリラの鎮圧に成功している。
ゲリラ戦術は必ずうまく行く、という戦術ではない。
ベトナム戦争前期戦略とその効果(1954〜1965)
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