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(回答先: 国境を越える自然保護(1)【ホーツク回廊を行く:Yomiuri Online 知床特派員】 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 1 月 30 日 12:49:29)
■ 北海道は自然の交差点
<沖津進 千葉大教授>
1954年、福岡県生まれ。北海道大農学部卒。極東ロシア、北極、南極など極限地での調査も多い。植生地理学が専門。
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極東のアムール川(黒竜江)、オホーツク海とそれをとりまく広大な自然……。学生時代には夢の世界でした。
1990年代、ソ連崩壊で状況はようやく変わったのです。ロシアの研究者からの誘いで、初めてアムール川源流のシホテアリン山脈の山頂に立ったのは、92年のことでした。
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シベリア大陸は、タイガ針葉樹林の単調な世界が続きます。しかし、アムール川を渡ると、針葉樹と広葉樹の混じった豊かな森に包まれる山脈になります。
チョウセンゴヨウという日本中部の八ヶ岳西南部にある針葉樹が中心の森で、原生的自然が残されています。ロシアでは、ヒグマは友達という感じですが、シホテアリンに潜むトラやヒョウは猛獣として恐れられています。
知床岬から千島列島をたどり、北千島から活火山が現れます。高山植物が広がり、大雪山が海から立ち上るような風景です。カムチャツカ半島は、活火山と湖がもたらす、風光明美な景観が素晴らしい。
サハリンを北上すると、北海道と似たミズナラとトドマツの森から、ツンドラの森へと変わります。グイマツというカラマツに似た落葉針葉樹と、ハイマツが姿を現します。
サハリンから、大陸に上陸し、オホーツク海の北の町・マガダンに至ると、低温のため夏でも平地に雪が残ります。
◇
10年以上、オホーツク海沿岸の自然を調査して見えてきたのは、北海道の自然の素晴らしさです。
知床半島では、アラスカ、カムチャツカ、千島列島から続く海洋性気候の植物が姿を現します。代表的な植物がガンコウランです。大雪山は、アラスカから続く海洋性気候の植物と大陸性気候の植物が、混じり合う特異な植生を示しているのです。
ですから、世界自然遺産の国内候補地選定で、シホテアリンと似ている大雪山の登録は難しいという指摘は、足で歩いた私から見ればおかしなこと。2つの自然は、異なった豊かさを持っています。北海道は、大陸と海洋の豊かな自然の交差点なのです。
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冷戦のため、日本、ロシア、中国などで研究が独り歩きしたため、植物の名前や近縁種の特定などは混乱しています。特に重要なのは、ロシア人研究者が足で歩いて集めた膨大な植物の標本です。いくら科学技術や遺伝子解析が進んでも、植生という世界は足で歩くしかありません。
オホーツクをとりまく地域には、我々日本人が忘れていた生活力や豊かな自然を見つめさせてくれる大きな遺産があります。知床の世界自然遺産推薦を機会に、極東の世界自然遺産、自然環境、そして人と文化の交流を進めていってほしいものです。(談)
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■ 海の生き物の楽園「オホーツク海」
カムチャツカ半島と千島列島で太平洋と、サハリン州と北海道で日本海と区切られる。面積約160万平方キロ・メートルの日露の大きな“湖”とも言える。
北半球の凍る海と凍らない海の境目であり、取り囲む陸地はオオワシ、ヒグマなど絶滅が懸念される貴重な生物の宝庫だ。 海氷に覆われるオホーツク海では、植物プランクトンの一種であるアイス・アルジーと呼ばれる小さな藻類が、光合成しながら細々と生命を保ち、春になると爆発的に繁殖する。
この植物プランクトンが、動物プランクトン、魚、オオワシなどの動物とつながる食物連鎖を支え、オホーツク海の水産資源を豊かにしている。
流氷研究の第1人者である、道立オホーツク流氷科学センターの青田昌秋所長(北大名誉教授)は、オホーツク海を「海の生き物の楽園」と呼ぶ。
[2004年1月1日]