現在地 HOME > 掲示板 > 地域7 > 300.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: 知床(1) 海鷲の未来【ホーツク回廊を行く:Yomiuri Online 知床特派員】 投稿者 エイドリアン 日時 2004 年 1 月 30 日 13:41:45)
■ 遡上妨げ、森壊すダム
知床半島は、オホーツク海の母だ。アイヌ語でカムイチェプ(神の魚)と呼ばれるシロザケやカラフトマス、サクラマスのふるさとだからだ。その母胎に異変が起きている。
◇
「森と川が壊れている」。2001年、斜里町の岩尾別川に10年ぶりに足を踏み入れたカメラマン稗田一俊さん(55)は、愕然(がくぜん)とした。
川岸が、ガケのように崩れている。ヤナギなどの河畔林が倒れている。あるところでは、トドマツやミズナラなど森そのものの崩壊も始まっていた。急峻(きゅうしゅん)な地形から増水しやすい川だが、崩れ方は異常だった。
しばらく上流に向かうと、治山ダムが現れた。「やはりそうか」。支流を含めると、岩尾別川の人工構造物は10か所を超える。
◇
長年、サケマスの生態を追って川の変化を見続けた稗田さんが、ダムの問題点を挙げた。
川は、常に上流から土砂の供給を受け、そのおかげで地形は安定している。しかし、ダムが出来ると、土砂の供給が遮られて川底はどんどん掘られ、川岸も削られ、やがて森のなかに浸食していく。そして、森の土壌が川に流れこみ、サケマスの産卵床は窒息する――。
「ダムが川と森を壊し、生き物たちを窒息させる」と稗田さん。
知床の魚類に詳しい野生鮭研究所長の小宮山英重さんも「河床低下が明らかに起きている」とダムの影響を心配する。
◇
かつて、岩尾別川はサクラマスが遡上(そじょう)する道内有数の川だった。サクラマスは、孵化(ふか)した後、1、2年を川で過ごし海へと向かう。しかし、ダムによって遡上を阻害され、荒れた川には帰ることができない。ダムが出来始めた1960年代後半から、その姿は消えた。 市民団体「しれとこ100平方メートル運動の森トラスト」は、99年から岩尾別川で絶滅したサクラマスを復活させようと、試験放流を始めた。だが、昨年、回帰してきたサクラマスの数は、7万の稚魚のうち7匹に過ぎなかった。
◇
「知床の河川で、ダムが遡上を妨げているところがあれば、必要な対応をしていきたい」。林野庁は2003年11月、斜里町で開いた世界自然遺産候補地管理計画の地元説明会で、ダムのあり方について語った。さらに、世界自然遺産の設計図となる管理計画にも、既存のダムなどについて「配置や工法上の検討を行う」という表現で、見直しへの可能性を示唆した。
100以上のダムなど、人工構造物で傷つく母なる知床。今再び、自然の力を再生させ、知床の夢のような姿を取り戻す時がきている。
文・写真 石原 健治
[2004年1月3日]