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日本とロシアに囲まれた《大きな湖》とも言えるオホーツク海。その海上を自由に羽ばたくオオワシ、豪快に潮を吹くクジラ、びっしりと海を覆い尽くす流氷……と、かけがえのない自然の宝庫だ。知床半島が世界自然遺産候補となったのを機に、環境省は環オホーツクの環境保全を目指すネットワークを構築することを決めた。オホーツク海を回廊のように取り巻く大自然と文化の営みを、国境を越えて守ろうという機運が高まっている。
■ 国境を越える環境保全
アジア極東の世界自然遺産の保全と交流を目指したネットワーク構築には、国内だけではなく、ロシア側からの期待も高い。
オホーツク海をとりまく貴重な大自然の調査研究は、第2次世界大戦後の冷戦構造のなかで、研究者などの交流が限られていた。民間レベルでの共同研究や経済交流の道が、徐々に動きだしたのはソ連崩壊後だ。
ロシア世界自然遺産のカムチャツカ半島やシホテアリン山脈でも、ロシア側ではエコツーリズムを導入し、日本からの観光客を誘致して自然と観光を両立させよう、という動きが出始めている。しかし、ノウハウや人材確保などは遅れているのが現状という。
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シホテアリン山脈など極東の自然研究で知られる「ロシア科学アカデミー生物土壌研究所」(ウラジオストク)には、膨大な標本など貴重な学術文献がある。オホーツク海沿岸の自然環境に詳しい千葉大の沖津進教授は「知床など日本の自然環境のすばらしさを再認識し、評価を深めるためにも、冷戦構造のなかで閉ざされた極東の研究機関との交流は欠かせない。極東の中核としての日本の役割が求められている」と言う。
また、石油天然ガス開発に沸くサハリンでも、オオワシの繁殖地など貴重な自然環境が残されている。元小樽商科大教授で、環境省の加藤修一副大臣は「オオワシの保護などに向けて、サハリンも世界自然遺産に登録してもらい、極東の自然保全に役立てることができるのではないか」と、夢を膨らませる。
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環境省は、知床の世界自然遺産登録を応援しようと、林野庁、道、斜里・羅臼両町、読売新聞社などと共催して、3月27日の東京を第一弾に知床リレーフォーラムの展開を予定している。同省は、このフォーラムでも「極東世界自然遺産ネットワーク」の構築を訴え、日露共同の環境保全の道を切り開く考えだ。
環境省自然環境局の小野寺浩局長は「知床だけでなく、これに次ぐ世界自然遺産推薦候補地として考えている小笠原諸島、琉球諸島、そして大雪山なども視野に入れ、日本として世界自然遺産の情報や手法などを蓄積したい」と話している。
■ 南ア先駆け「ピースパーク」
「私たちは保護地域を尊い遺産として、将来の世代に引き継ぐことを誓います」
2003年9月、世界から3000人が参加して南アフリカで開かれた「世界公園会議」。最終日、開催都市の名をとった「ダーバン宣言」が採択された。
この大会は、ユネスコ世界遺産条約委員会の審査機関である国際自然保護連合(IUCN)が主催。世界の貴重な自然環境を守るため、自然公園や世界自然遺産を守る国境を越えたネットワーク構築を目指そうと開かれた。
大会では、1979年に国境を越えた世界自然遺産はわずか1か所だけだったのが、2002年には9か所に増えたことが報告された。ポーランドとベラルーシでは、共同計画を立ててヨーロッパバイソンを保護する運動に取り組んでいるなど、具体的な事例も紹介された。
南アフリカは、国境を越えた自然保護の先駆的な役割を果たしている。その代表的な存在が、ネルソン・マンデラ前大統領の提唱で設立された「ピースパーク財団」。アフリカ地域で、紛争や開発のため生息地を失いつつあるゾウなどを保護しようと、国境を越えた9か所の自然保護区を設置している。
2003年11月には、財団のフォンリート副会長が来日。都内で開かれた「緑と平和の国際公園シンポジウム」に出席し、「ぜひアジア、極東地域でもピースパークを広げていきたい」と訴えた。
シンポジウムに先立つ研究集会には、環境問題に詳しい高円宮妃久子さまも参加し、ピースパークの活動を激励された。
[2004年1月1日]