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(回答先: ロシアの森と北海道の海の幸【シベリア・タイガの森(3) FoE Japan】 投稿者 エイドリアン 日時 2003 年 12 月 13 日 09:18:51)
■「まず第一に、広い」
タイガはマイナス数十度の酷寒の気候にも耐えることの出来るカラマツなどの針葉樹が主体の森林で、ユーラシア大陸北部を広く覆って世界最大の森林地帯を形成し、その森林地帯を領内に持つ旧ソ連/ロシアを世界最大の森林国の座に押し上げています。
下の地図は旧ソビエトの森林分布(被覆)を表したものですが、これらの森林の大きな部分が、タイガとよばれる森林だ、と考えていいでしょう。
この地図をご覧いただくと、カラマツ(Larch)やエゾマツ(Spruce)から成る森林森林が、日本の国土の数十倍に匹敵するほどの面積の地表を覆っていることがイメージしていただけるかと思います。
・ロシアの森林面積:世界の全森林面積の22%
(7億6400万ヘクタール)
・ロシアの森林蓄積:世界の総森林蓄積の21%
(821億立方メートル)
(参考までに:日本の森林は、面積2500万ヘクタール、蓄積31億立方メートルです)
ロシアの行政単位によれば西から東に向かってヨーロッパ地域/西シベリア地域/東シベリア地域/極東地域の四地域に分かれます。この区分に従うなら、タイガの最も多い地方は、この森林分布図にも見られるように東西シベリア地域と極東地域であると言えます。
左図で示したグラフはロシア連邦森林管理局年の1996年の資料に基づいて作成されたものですが、ロシアの森林の41%が東西シベリア(Siberia)に37%が極東(Far East)にあることを示しています。
以上、広さ−これもタイガの立派さです。タイガという森は一見して広大な森林であると考えていただいて結構です。
(・・・しかし、その広大な森林でさえも、人間の利用の仕方次第ではやっぱり壊れていく、というのが私達が現地の実態を見て得た実感です。)
http://www.foejapan.org/siberia/taiga/04.html
■「タイガは、針葉樹を主体とした“天然林”、“自然林”。そして “原生林” と呼べる状態の場所が多い
日本人であれば、人工的に作られたスギやヒノキの林を見ても珍しいとは思わないでしょう。日本の森林の場合、現在は4割までもが人間が木を植え世話をして作った森となっていますが、これとくらべるとロシアの事情は全く異なります。ロシアの場合、植林で作られた森林は全体の1%足らずです。残りは全て天然林で、大部分がカラマツやエゾマツなどの針葉樹を主体とする森、タイガです。
そしてタイガのかなりの部分が、いまなお "原生林"と呼べる状態にあります。
http://www.foejapan.org/siberia/taiga/05.html
■「タイガは、"北方林"の一形態」
東南アジアや南米の森林が熱帯林や熱帯雨林(Tropical forests/Tropical rain forests)と呼ばれるのに対し、北欧や北米そしてロシアなど、温・寒帯地域の森林は"北方林"(Boreal forests)と呼ばれます。北方林と呼ばれる森林の共通している特徴は、寒冷な気候に適応した針葉樹(カラマツ、アカマツ、エゾマツ、トドマツ、チョウセンゴヨウなど)が主体となっていることです。
この "北方林"という言葉は、ほとんどの人にとってまだ聞きなれない言葉であるかもしれませんが、これから徐々に新聞やテレビで目にするようになるかもしれない言葉です。というのも、これまでは一般に「森林破壊の問題、イコール熱帯林の破壊」と考えられてきましたが、近年では熱帯雨林の破壊だけでなく、北方林の破壊も深刻であることが明らかになり始めたからです。
では、北方林の破壊が進むことがなぜ問題なのでしょうか?その理由としては次のようなことが言われています。
1.北方林は、水や大気を浄化する働き、気候を安定させる働きなどを持っており、非常に広い範囲に渡って安全な環境を作り出し、維持している(たとえば、日本の気候風土にとってロシアのタイガの営みから受けている恩恵、影響は、ともにかなり大きい)
2.北方林には、森で獣を狩り、川でサケやマスを獲って暮らす様々な少数民族の定住している場所がある。アマゾンやボルネオのジャングルの場合同様、北方林においても森林の破壊によって少数民族の暮らしや文化が壊滅的な打撃を受けることがある
3.北方林は、様々な動植物から成る生態系の基盤となっている(生息する生物種の数は熱帯雨林より少ないが、北方林の生態系は熱帯雨林の生態系とは異なる独特の繁栄を見せている)
4.永久凍土の上に生育している北方林の破壊は、地球温暖化の進行につながる。
(永久凍土は、強力な温室効果ガスとして働くメタンガスを閉じ込めているため、永久凍土上の森林が破壊されると直射日光が永久凍土を溶かし、大気中に大量のメタンガスが放出される。メタンガスは同量の二酸化炭素の20倍の温室効果をもつといわれる)
以上、タイガは「熱帯雨林と並んで重要な"北方林"の、一形態である」と考えてください。これもタイガの立派さです。
http://www.foejapan.org/siberia/taiga/06.html
■「タイガでは木材を調達するための伐採が行われていて、タイガで伐り出した木材は日本にも輸出されている。そして、タイガはいま二十一世紀の森林資源として注目されている。だが・・」
タイガは、木材の供給源としての一面も持っています。極東ロシアの場合、数十%のタイガは人間の手の届かない場所にありますが(道路や鉄道などのインフラが達していないため)、街や道路、鉄道に近い場所では、木材を調達するためのタイガの伐採が盛んに行なわれてきました。タイガで伐り出された木材はソ連時代から重要な輸出商品として位置づけられ、東シベリアや極東ロシアのタイガで伐り出された木材が日本などに輸出されてきました。
さて、世界中で森林破壊や森林資源の破壊が問題となっている今日、北方林、とくにタイガの木々を二十一世紀の木材資源と見なして注目している人々がいます。
一口に木材といっても、種類によってそれぞれ用途が異なります。熱帯産の木は合板の材料となり、温帯産の広葉樹は紙やパルプの材料となっていますが、太くて真っ直ぐな寒帯産の針葉樹には、住宅建築の材料などとして圧倒的に大きな需要があります。そのため、真っ直ぐなマツの木の仲間が広い面積に渡って立ち並ぶタイガを、二十一世紀の森林資源と呼んで期待をかける人々がいるわけです。そしてそれらの人々の中には、「熱帯雨林から木材を伐り出すと環境破壊が起こるが、ロシアの森林では伐採を行っても環境破壊は起こらない。ロシア産の木材は"地球に優しい"エコロジカルな商品だ」と言っている人々もいます。
http://www.foejapan.org/siberia/taiga/07.html
■「タイガは、大部分がロシアの国有林となっていて、ロシア政府機関の管理下にある
これは制度の面での特徴ですが、ここで述べる問題には、ロシアの森林管理制度のあり方がかなり大きく関わっています。詳しくは後で述べますが(「破壊の実態」)、ここではまず、タイガがロシアの国有林として政府機関の管理の下に置かれているということを覚えておいて下さい。
http://www.foejapan.org/siberia/taiga/08.html
■「タイガは、木材の供給源となる以外にも、いくつもの働きを持っている」
タイガという森は、日本から非常に近い場所にあるのですが、今のところ日本の人々にはほとんど意識されていない森林であるかもしれません。しかしタイガは日本にとっても世界にとっても木材供給源である以外にいくつもの重要な機能を持っています。次項では、「私達にとってのタイガとは何か」ということに目を向けてみましょう。
http://www.foejapan.org/siberia/taiga/09.html
→「世界」と「日本」と「地元の人々」にとってのタイガ【シベリア・タイガの森(5) FoE Japan】へ