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(回答先: バブルマネーは何処へ行った? 預金増と負債増の等価構造 投稿者 TORA 日時 2003 年 11 月 27 日 14:37:40)
TORAさん、転載ありがとうございます。
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バブル形成とバブル崩壊の問題を単純モデルで説明した吉田繁治氏の部分にはいくつか錯誤がある。
資産問題を所得や収益というフローから切り離しては説明できないという大前提が欠落していることに要因があると思われる。
1)資産取引の損益は合算ゼロではない
>資産取引の損益は、買った人と売った人で同じ額です。損をした人と同じ金額の得を
>した人がいる。株も債券も同じです。等価取引です。 合算すれば利益+損失はゼロ
>です。
説明で使われている事例が合算すれば利益+損失はゼロであるだけで、現実がそうであるわけではない。
これは、高度成長期からバブル形成期にかけてという長期間の土地や株式の取引を考えればすぐにわかることである。
地価や株価が傾向として右肩上がりであれば、それらの取引で誰も損失を被らずにみんなが利益を手にすることもモデル的にはありえる。
100円で株式を取得したAがそれをBに150円で売り、150円で買ったBが230円でCに売り、現在Cが保有している株式の価格が300円という設定で損失を被った人はいない。
このような現実を支えてきたのがフロー概念であるGDPの拡大であり、拡大したフロー(お金)が、土地や株式という資産市場に拡大的に流れ込むことによって、損失を被るのなら愚か者だけで、それ以外は濡れ手で粟という資産取引実態を生み出したのである。
バブル崩壊でババを掴んだ人が大きな損失を被り、それ以降も、資産価格の下落傾向のなかで、現金を資産に替えた人たちの多くが損失を被り続けている。
利益を得るのは利口者だけで、それ以外は損失を被るという高度成長期からバブル形成期の逆状況が生じている。
2)バブル崩壊で消えたのは地価などの評価益だけではない
>ここを知っておくことです。 バブル崩壊で消えるのは、地価の評価益だけです。
>土地取引の代金はだれかの預金として残る。負債も、だれかの負債として後々まで残
>る。 つまり、実物(土地)はなんら変わらず、
>・金融、つまり預金(=マネーサプライ)、
>・および預金と同額のだれかの負債が増える、
>という結果を残します。 これが資産バブルと、その後のバブルの瓦解の、金融面で
>の本質です。
このようなまとめになってしまうのは、「信用創造」という“詐欺”についての理解が乏しいからだと思われる。
説明で使われたモデルであればこのようなまとめにしても間違いではないが、地価が10%程度下落しただけで金融機能不全に陥ったバブル崩壊後の現実を説明できないものである。
個別的な事案では地価の評価益が消えただけであるが、金融面での本質は、「信用創造」機能を抜きにしては見えてこない。
私の100億円の定期性預金があるとする。
銀行はこれを原資にAに融資を行い、AはBに土地代金としてそれを支払った。
Bは100億円を定期性預金にし、銀行はこれを原資にCに融資を行い、CはDに土地代金としてそれを支払った。
Dは100億円を定期性預金にした。
この取引をまとめると、(預金準備率など規制条件は無考慮)
●正味の通貨(ベースマネー)は私の100億円だけである。
●銀行は、AとCへの合計200億円の貸し出し債権と私+B+Dへの300億円の預金債務がある。
お気づきのように、銀行はこの時点で100億円の債務超過になっている。
これは、AとCから200億円をそのまま返済してもらったとしても、100億円の不足があることを意味する。
別に地価が下落しなくとも、地価が上昇するなかでの土地取引がなくなったり、債務者の利払いが滞っただけで、銀行は立ち行かなくなるのである。
Dが100億円を預金しなかったとしても、債権と債務が同額になったかのように“見える”だけである。
なぜなら、元々存在するお金は私の100億円しかないのだから、貸し出しを通じて発生した200億円の購買力のうち100億円は“架空”のものである。それを“架空”ではないようにするためには、さらに「信用創造」を行うか実体経済に回るベースマネーを増大させるしかない。それがない限り、“架空”の購買力は“架空”であったことが暴露され、“架空”の購買力を生み出した債権は不良債権となり、預金債務だけが大きく残ることになる。
100億円しかも“他人”のお金で200億円の貸し出しを行っていることに問題の根源がある。
銀行が自己資本を貸し出しした限りでは、銀行が損失を被るだけでこのような問題は起きない。
また、GDPが順調に拡大しているときも、この問題が問題視されるような事態は起きにくい。とりわけ、資産市場に流れ込むお金が増加し、資産価格が上昇しているときには見えにくい。
しかし、BIS自己資本比率規制とGDP拡大鈍化そして資産価格下落が同時的に発生すれば、この問題が否応なく浮かび上がってくる。
さらに言えば、同時進行した株式市場のバブル形成とバブル崩壊で膨大なベースマネー(正味のお金)が海外に流出したことが、この問題に拍車をかけている。
利払いや元本返済として銀行に戻って来たり、最悪でも預金として還流してくるかもしれないお金の多くが海外に流出してしまった。
金融面での土地評価額は、融資を受けているAとCが利払いと元本返済が不能になったときにはじめて問題になる。
資産価格が上昇していれば担保件を行使して債権を十全に回収できるが、下落していれば不満足にしか回収できないことになる。
そして、GDPが拡大せず資産市場に流れ込むお金も増えないなかで担保権を行使すれば、銀行自らが資産価格の下落に拍車をかけることになる。
(担保権行使を抑制しているから、現在のような地価下落で済んでいるとも言える)
バブル形成期は、“土地転がし”が横行したように、モデルのようなきれいな貸し出しと預金という構図ではなく、特定の者が借り入れ債務を膨らましていくものであったから、モデル以上の打撃を銀行は被っている。
もう一つ重要なことは、高給取りといわれる銀行員の給与や報酬の問題である。
銀行員の給与や報酬は、基本的に貸し出し利息から支払われるものである。
他人の100億円を原資にして500億円の貸し出しを行って利息を得るという“詐欺”を働いているとは言え、その20%から30%が利息どころか元本回収までままならないのでは銀行が赤字になるのは当然である。
銀行が今なおなんとか維持されているとすれば、他人の100億円で500億円の貸し出しを行って利息を得る“詐欺”に支えられているからにほかならない。
貸し出し金利と預金金利の落差にもよるが、貸し出し債権の60%くらいがきちんと債務履行されていれば、銀行はなんとか維持できるはずである。
(債務者は同時に預金者であることが多い)
土地神話や株式神話が、詰まるところ、GDP拡大神話に支えられていたということが理解されない限り、現在なお続いている経済的苦境を解消することはできない。