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CSR、重要戦略に――オランダ各社、取り組み進む(グローバル経営) 2003/06/16【日本経済新聞】
http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/258.html
投稿者 hou 日時 2003 年 10 月 21 日 20:40:06:HWYlsG4gs5FRk

(回答先: 必要なのは、産業全体での一国経済の全体的なマネーの質向上(デフレ・生産性向上) 投稿者 hou 日時 2003 年 10 月 21 日 19:46:11)


企業の社会的責任
ラボバンク、環境への配慮、融資の基準に
ハイネケン、社員のエイズ、本格的な対策
 【ロンドン=小平龍四郎】企業が人権や環境などへの配慮をビジネス上の戦略として位置づけ始めた。環境・人権団体などが世論形成に大きな役割を果たし始め、企業も政府の法律や規制を守るというだけではグローバルな競争力を維持できない。「企業の社会的責任」(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー、CSR)の先進国の一つであるオランダの実情を探った。
 「元利払いに問題なければ融資しても構わないではないか」
 「いや、外部の批判をかわしきれない」
 オランダの大手銀行ラボバンクでは今、融資基準の見直しで激論が続く。企業への融資に社会的責任の視点をどう盛り込むかが焦点だ。工場融資の際に土壌汚染を事前チェックするなど、環境に配慮した審査は米欧では常識になっている。ラボバンクはさらに複雑な問題に直面している。
 食品会社向けの融資が多いラボバンクは最近、遺伝子組み換え事業向けの基準を作った。「ヒトの遺伝子操作につながりかねない案件は融資を避ける」「遺伝子組み換えを使った食品事業への融資は貸し手責任として人体への影響を注意深く見守る」などが柱だ。
 こうした融資基準を作ったのは非政府組織(NGO)が「遺伝子組み換え事業が生態系を狂わしかねない」と強く抗議したからだ。ラボバンクでは軍事独裁が続くミャンマーへの進出企業に対する融資も人権派NGOに問題視されている。
 「民間の銀行が善悪の判断という政府の役割に踏み込んでいるような気もする」。ラボバンクのCSR担当者ダニエル・ディック氏は融資判断に生態系や人権などの要素が入り込む現実をこう表現する。
 ビール大手ハイネケンはエイズ感染の拡大が大きな問題になっているアフリカ大陸の従業員と家族四万人を対象にしたエイズ規約を作成した。「感染を理由に解雇しない」「廉価な治療薬を提供する」といった内容だ。
 同社のアフリカ事業の売上高は全体の一〇%強、従業員は二〇%強といずれも欧州外では最大の割合を占める。後手に回りがちな進出先各国のエイズ対策に頼っていてはアフリカ事業が成り立たない恐れがある。
 ハイネケンのポリシーマネジャー、ハンス・ヴェッセリング氏は「エイズ対策は慈善ではなく事業を続けるための戦略だ」と強調する。
 アムステルダム大学のアンス・コーク教授は「CSRは企業のグローバル化が生んだ概念」と指摘する。一九九〇年代に新興国や途上国に進出した米欧企業が現地で政府機能の一部肩代わりを余儀なくされ始めたという見方だ。
 オランダ企業は自国の経済規模が小さく、グローバル化が生き残りの必須条件となってきた。大手では全体の売上高に占める自国市場の比率が数%という企業がざらだ。自国政府の後押しも期待しにくい小国企業の最大の武器は長年かけて世界で築いたブランド力。国際世論を敵に回せば、その基盤は揺らぐ。
 オランダモデルとして知られる「敗者を出さない資本主義」の考え方もCSRの意識を高める背景になった。
 そんな風土を象徴したのが九〇年代後半に北海の原油貯蔵施設の海中廃棄を巡って欧州を揺るがす社会問題となった英蘭資本のシェルグループの“事件”。「英政府の認可を受けている」と、環境団体などの反対を押し切って廃棄を進めようとした英国法人に待ったをかけたのがオランダ本社だった。
 環境や人権への取り組みを記す「CSR報告書」。今や世界の千社強の大企業の三割がそうした報告書を作成、公開している。同報告書を公表するオランダの大企業の数は三十五社と米国並み。シェルグループをはじめ国際的にお手本となっている企業も多い。
 電機大手フィリップスは二〇〇二年のCSR報告書で、自社のエネルギー消費量の減り方など十七項目の環境関連の指標を公表。巻末には「記載された数値が誤りであることを示唆する形跡はなかった」という大手会計事務所KPMGの“適正意見”を添えている。
 フィリップスのアーサー・ヴァンデポール取締役は「CSR報告書への信頼感を通常の年次報告書並みに引き上げたい」と語る。そのために提出書類や管理システムの更新などを進め、将来は会計監査と同じチェックを受け入れる方針だ。
 フィリップスのブランド価値は同社の株式時価総額の一―二割に相当するという。CSR報告書の信頼性確保は毎期の決算を報告する年次報告書と同様、株価を維持・向上していくための前提という意識がある。
 環境団体などからの批判の対象になってからでは遅い。国際世論の厳しいチェックに耐えうる企業体制をシステムとしてどう確立していくか。グローバル企業にとって見過ごせない競争上の課題となりつつある。
【図・写真】社会的責任の情報開示にも監査の目が光る(オランダ企業各社のCSR報告書)
【図・写真】ハイネケンは社員のエイズ対策を経営戦略に組み込む(アムステルダム市)

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