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(回答先: bakaでもわかる「あっしら経済学」- その10 投稿者 baka 日時 2003 年 11 月 29 日 16:32:59)
bakaさん、こんばんわ。
国家破産の定義は、政府が債務を履行できなかったときと考えています。
国家破産に陥っても国家そのものは存続しますから、破産国家とは政府が自立的に国策を決定・遂行できない状態とイメージしたらいいでしょう。
外交政策ではほぼ自立性がないという状況が続いてきましたから、経済政策(財政・税制・金融)での自立性がさらに失われる状況になると考えたらいいかもしれません。
本題である日本が国家破産するかしないかということですが、国家破産する可能性はあると思っています。
但し、この間言われているような、政府債務が増大することで国家破産に至るということはありません。
それは、既に出来上がっている日銀と商業銀行で日銀券と国債のやり取りシステムでしのげる話です。最後は、政府紙幣の発行でも対応できます。
日本が国家破産に陥るとしたら、財務省官僚や日銀マンの手では対処できない経済条件が生まれたときです。
それは、日本の貿易収支と経常収支が赤字に転じた後にやってきます。
デフレ・スパイラルによる産業の破壊と製造拠点の海外移転による“産業空洞化”により、赤字に陥る蓋然性は高いと思っています。
これに対しては、日本は5千億ドルの外貨準備高があるとか、世界一の対外債権国だから問題はないのではと考えられるかもしれません。
しかし、第二次世界大戦を通じて世界の貨幣富(ゴールド)の大半を手に入れ、並ぶものない産業力を誇り膨大な対外債権を保持していた米国が国家破産の瀬戸際にある現実を考えれば、刹那(短期)的な支えでしかないことがわかります。
(米国は、日本が年間20兆円近くの“資金援助”(ドル買い介入を通じた米国債購入)をしなければ今すぐにでも債務不履行を宣言したい誘惑に駆られるような財政及び経済状況です)
米国は、自国通貨であるドルが国際基軸通貨であるが故に、他の国であればとっくにIMF管理下に入っているはずの経済・財政状況のまま今日まで生き延びてこられただけです。
政府債務残高の肥大化と経常収支(とりわけ貿易収支)の赤字が同時進行する状況になれば、国内の金融的手段だけでは問題を先送りすることができなくなります。
(経済実態や資本収支の赤字分を考えれば、貿易収支が赤字になることがポイント)
国際収支が赤字であれば、とにかく純輸入分の国際決済通貨(ドル中心)を手当てしなければなりません。
日銀券もハードカレンシーですからそれで国際決済通貨を買うことができますが、国際収支の赤字という基礎的要因と相俟って円安傾向が強まることになります。
円安になれば国際競争力が高まって貿易収支が改善されるだろうという見通しは、この場合“錯誤”です。
米国の産業が70年から続くドル安傾向のなかでも国際競争力を回復できなかったように、産業が空洞化したことで貿易収支が赤字に陥った国民経済は、自国通貨のレートによって赤字を是正することはできません。
供給力不足下の円安は、自国の財を安く売り外国の財を高く買うことを意味しますから、貿易収支の赤字をより悪化させ、そのために円安が進み貿易収支の赤字をさらに悪化させるという悪循環をもたらします。
国内の供給力が不足しているために貿易収支が赤字になった国民経済は、生活レベルを落とすことで赤字を縮小するしかありません。
(日本のように食糧自給率が30%から40%となってしまっていれば、生存のためだけでも輸入は維持しなければなりません)
国内供給力不足の穴埋めを輸入で行うのなら、米国のように、外国の財を安く買える自国通貨高のほうが得なのです。
意識的に生活レベルを落とさないでこの悪循環を断ち切る方法は、国際決済通貨の借り入れです。
しかし、借り入れた国際通貨は、利息をつけて返済しなければなりません。もちろん、利払いや元本返済は、日銀券ではなく国際決済通貨で行うことになります。
それは、貿易収支が赤字のなかで稼いだ貴重な国際決済通貨を債務履行に振り向けなければならないことを意味します。
このため、さらに国際借り入れが必要になるという悪循環にも陥ります。
世界経済支配層は、経常収支赤字国が対外債務を背負っていれば、いずれ債務履行に窮するようになることを知っていますから、借り入れ開始からほどなく、政府の経済政策に干渉するようになります。
(それがどんなものかは、通貨危機以降の韓国を見ればおおよそわかりますが、韓国の場合は供給力不足というわけではなかったので、韓国を超えた生活水準の切り下げが要請されるはずです)
※ 日本が経常収支赤字になり国際決済のために外貨が必要というのなら、5千億ドルの外貨準備を使えばいいじゃないかというのは当然です。
しかし、外貨準備はほとんどが米国債になっています。
日本に20兆円(約1千800億ドル)の国債購入(資金援助)をやらせている米国が、逆方向の売却を認めると考えることはできません。
本気でそれをやろうとしたら、米国がデフォルトを宣言する可能性もあります。(デフォルトがスケジュール化されていない段階であれば、その前に、とてつもないレベルの恫喝がなされるはずです)
日本が国際決済通貨不足に陥っても、借り入れ以外ではIMFのSDRが利用できる程度だと思っています。
膨大な政府債務を抱えながらも日本がここまでなんとか自立的な経済政策を採ってこれたのは、膨大な経常収支の黒字に支えられて、外国から借り入れをする必要がなかったからです。
上述までで既に破産国家の様相を呈することになります。
上述の過程で同時進行的に、意図せずデフレは解消され、今度は、国民生活の維持とインフレ率抑制のせめぎ合いから起きるハイパーインフレに直面します。
(これが資産に占める国債比率を高めている銀行などに大きな打撃を与えることは省略)多国籍優良企業が国難だからといって中国や北米に築いた製造拠点を日本に戻すことはほとんどないだろうと、昨今の言動を見聞きして悲観的に考えています。
貿易収支の赤字は国内供給力の不足を意味しますから、失業者や老人の生活を維持するために赤字財政支出を増加させれば、すぐにインフレ率の上昇に跳ね返ることになります。
インフレの亢進は、同時に円安を進行させます。(これが意味することは上述参照)
これ以上の説明をしなくとも、国内供給力の不足がもたらすインフレの亢進は、敗戦後の日本が経験したことであることを思い出していただくだけで十分でしょう。
そして戦後日本のハイパーインフレ期に実施された政策は、新円の切り替えであり国債のデフォルトです。
ここに至れば正真正銘の国家破産です。
このような可能性もあることから、デフレ・スパイラルの早期克服を訴え、そのための手法も提示してきました。
デフレ・スパイラルが製造拠点の海外移転や海外からの商品調達を誘発し、“産業空洞化”=供給力減少を推し進めている側面も多々あります。
個別資本の論理に従えば、物価が下落しているから安く製造できるところに拠点を移したり安く仕入れられるところから調達してなんとか利益を確保するというのは当然ということになります。
ここに書いた内容を現実のものにしたくないのなら、「構造改革」ではなく、デフレ・スパイラルを解消する政策を採らなければなりません。