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経済主体(ミクロ)論理は国民経済(マクロ)論理を超えることはできない [houさんへ]
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/303.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 10 月 31 日 22:46:50:Mo7ApAlflbQ6s


houさんの『供給 増→ 需要 増 ということですね。』( http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/295.html )へのレスです。

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houさん、こんばんわ。

国民経済(マクロ)的論理と経済主体(ミクロ)的論理が錯綜しているように受け止めました。

家計(個人)を含む経済主体が“順調”に利益(利潤)を上げていくためには、国民経済が供給額<需要額状況を維持したなかで活動できるという条件が必要です。
そして、これが、これまでのやり取りでの私の書き込み内容の基本的立場です。


国民経済が供給額=需要額や供給額>需要額であっても、特定経済主体は利益を手にすることはできますが、その副作用として、デフレ傾向・失業者増加・債務負担増大・企業破綻・投機損失などが発生します。
(生産性が上昇するのは常ですから、供給額>需要額ではデフレ圧力を避けることができません)

国民経済が供給額>需要額状況を維持しているなかであれば、特定経済主体がより大きな利益を手にし破綻する企業があったとしても、それで生じる問題を解消することができます。

マクロ(国民経済)論理を超えたミクロ総体の論理はないのです。
これを理解できない経済学者や企業経営者は、その名に値しないものです。


もちろん、国民経済から切り離して全経済主体の智恵と努力による利益拡大の可能性を語ることはできます。
それは、“全”経済主体が、国内市場にまったく依存しないかほとんど依存していない状況を想定したときです。

しかし、それがどれほど“非現実”的なことかはすぐにわかるはずです。
輸出及び海外拠点の強さで抜きん出ているトヨタやソニーとは言え、日本市場の縮小は痛手(利益減)につながります。
トヨタやソニーでさえそうなのですから、国内依存比率が高い企業や国内専業企業が、そのような想定のなかで存続するのがいかに“無謀”であるかわかるはずです。
(ちなみに、日本のGDPに占める構成比がもっとも高い産業は、ほとんどが国内向けである加工食品業です)

そして、そのような経済状況にある日本国民が置かれる生活状況をイメージしてみてください。
ある割合の人は供給活動に従事してそれなりの生活を維持します。
しかし、企業の利益は国内需要に依存していないので、他の人たちがどうなろうと知ったことではないという構えになり、供給活動に従事しているひとが従事できない人たちを扶助すればいいという政策を求めるようになります。

現実はそうではないのに、錯誤して、このような政策を偉そうに日本を救う正しい道だとして声高に主張しているのがトヨタ会長であり日本経団連会長である奥田氏です。

グローバリズムや国際自由主義取り引きが声高に叫ばれ、それが強権的及び内政干渉的手法を行使してまで追及されているのは、米英を中心とした支配的財閥が、米国市場などの自国市場に依存したままでは存続や利益拡大ができないことを認識しているからです。
(奥田氏などは、自覚しているかどうかは別として、そのような認識をもっともらしい理屈で政策化している連中に追随しているのです)

グローバリズムや国際自由主義取り引きが実現した世界を考えてください。
それは、世界経済が国民経済と同じ論理に規定されることが明瞭になる現実です。

(現在でも、世界経済が国民経済と同じ供給額→需要額の論理で規定されていますが、それが見えにくいだけの話です。それが見えにくい最大の要因は、国際金融(貸し出し)で需要額が創出されていることにあります。そのなかでも顕著なものは、国際基軸通貨の発行国である米国の借り入れです。日本が中心になって米国政府に貸し出しを行っていることで、世界経済の供給額→需要額論理をなんとか支えているというのが現実です)

国民経済(世界経済)が供給額<需要額であれば、特定経済主体は利益を手にすることはできても、その副作用として、世界規模でデフレ傾向・失業者増加・債務負担増大・企業破綻が起きることになります。

この論理を踏まえてミクロ(企業)論理も考えなければ、“短期”的な利益増加を達成できるとしても、中長期的には身の破滅につながり、国際金融財閥に超破格値で買い叩かれることになります。

● 間接金融と直接金融

この問題は、まず、株式市場で既発株式を購入することは直接金融ではないということを理解することが重要です。
そのような経済取引は、株式保有者と現金保有者の立場が入れ替わるだけで、事業活動を行なっている企業にお金が渡るわけではありません。

政府の経済政策や税制でもこの肝心な話がすっぽり抜け落ちています。

逆に言えば、間接金融を銀行の企業向け貸し出しとすれば、バブル崩壊以前の日本においても、銀行は、株式投機をしたり増資を引き受けたり社債を買ったりという“直接金融”を大量に行っています。
だからこそ、銀行は、株価が下落傾向にあるなかで株式評価損に苦しんでいます。

企業にとっては、間接金融と直接金融はいちがいにどちらがいいとは言えないものです。
間接金融(借り入れ)は、業績不振でも利息を付けて返済を続けなければならないというデメリットがありますが、インフレで実質金利が低く売上・利益が拡大を続けているのなら後腐れがないというメリットがあります。(後腐れとは、1株当たりの資産=企業支配権が低下しないこと)

直接金融(増資)は、業績不振であれば配当しなくても済むというメリットがありますが、既存株主の支配権は低下するというデメリットがあります。また、株価の上昇が期待しにくい状況では増資の引き受け手が思うように集まらないという問題もあります。

>護送船団方式のメリットは、金融危機を起こさないという点で極めて有効な手段ですが。
>どうじに、個人の資産リスク管理がおろそかになるというデメリットがあります。
>それは安全に資産を預けるなら、銀行か郵貯という選択するというリスク管理です。
>これによって、銀行も郵貯も個人も、最後には国のセーフティネットが助けてくれる
>と信じて資産が定期性預金や、銀行・郵貯を選好していきます。
>そのなかでも、銀行が個人資産に対する商品開発を積極的に作れる自由度を行政側も
>残しておけば、今日のような国まるがかえのリスクも幾分やわらげらたのではないか
>と考えます。

まず、80年以前の日本経済は、houさんが批判されている金融構造だったからこそ、それなりに順調に成長を続けたことを理解する必要があります。
損をしたり失ってしまうことはないと考えて預金されたお金が、銀行を通じて、融資や増資そして社債の引き受けに使われたから、企業は拡大を維持することができたのです。

前向きの資金需要がある優良企業は、80年頃から、条件がいいかたちの直接金融(社債を含む)で資金を調達することができるようになりました。
バブル期に銀行が不動産融資にのめり込んだ要因の一つがこれです。

私はペイオフを実施することに原則として反対ではありません。
1000万円を超える預金を持っている人は限定されています。

houさんは、国家が丸抱えのリスク負担をしているのを個人保護のように考えられていますが、本質的には、銀行保護であり企業保護の政策であり、国民経済維持政策なのです。

ペイオフを適用するということは、その銀行は破綻したということです。
それは、これまで抑え込まれていた過剰債務企業の破綻につながります。
大企業の破綻は、取り引き先の破綻及びそれらの企業に勤めていた人たちの失業をもたらすことになり、それから生じる需要減がほとんどの企業の売上・利益に影響を与えることになります。(このため、破綻しなかった企業でも首切りが行われることとなります)

そうなれば、雇用保険でカバーできる部分もありますが、生活扶助での財政支出が増加することになります。
一方で、所得税・消費税・法人税・年金保険料収入・健康保険料収入・雇用保険料収入が減少します。


「銀行が個人資産に対する商品開発を積極的に作れる自由度を行政側も残しておけば、今日のような国まるがかえのリスクも幾分やわらげらたのではないかと考えます」については、80年代以降多彩な金融商品が存在したなかで預金という選択が行われているので、それほどの違いはないと考えています。
80年代は、NTTの株式放出もあり株式取引にはじめて手に染める人も増えていますし、証券会社も中期国債ファンドなど個人向け商品の販売を伸ばしています。
銀行が払い戻しを保証しない商品の供給を行うことをよしとはしませんが、それをやったとしても、証券会社とのあいだでのシェアの奪い合いになる程度だと推測します。


>国内専業企業(特に雇用の大きい中小企業)は、中小企業が間接金融に100%依存
>しています。そして、其の借り入れを持ち合い株にまわしているため、純粋に本業の
>供給にまわらず
>潜在需要の発掘におろそかになっていたのではないかと思われます。

中小企業が借り入れ金を株式持合いのために投じたというのは本当ですか?
中小企業が、事業維持及び拡大のために借り入れをしたり上位企業に増資を引き受けてもらったというのならわかりますが...


>その結果、安定経営が主な理由だった株式持合いが、取引先との硬直的な商売、銀行
>との付き合い(不動産以外の信用獲得)、銀行を介した援助的なビジネスにより生産
>性の向上(需要の変化と対応)を図らなかったため、過剰有利子負債・過剰設備投資・
>過剰雇用(企業内失業なんて言葉もありました)この点が、国内における二重構造の
>問題点になったのだとおもいます。

上述のかたちで、中小企業も設備投資を行い生産性を高めたのがバブル崩壊までの日本経済だったと認識しています。

バブル崩壊後もこれまでのような経済苦境に陥っているのは、メインバンク制や上位企業の存続支援(ぎりぎりの存続条件ですが)があるからだと考えています。

現在の苦境は、バブル処理(銀行の過剰債務=不良債権)を遅らせてしまったことであり(「信用創造」機能不全)、膨大な貿易収支黒字でありながらデフレ不況のなかで優良企業が供給量を増加させないかたちで供給額の増加を行わなかったことに主たる原因があると考えています。

(バブル崩壊に伴う短期的な「信用創造」収縮やバブル反動の需要減退は避けられないものです)

「小泉改革」の方向性は、残滓としてのメインバンク制や上位企業の存続支援さえもなくそうとするものですから、それがデフレ不況下で追及されれば経済状況はさらに深刻になります。


● 拡大阻害要因


>大方の成長がとまり、物があふれる時代だからこそ、いままでの商品での供給を続け
>ても、輸入品や競合他社との比較が値段だけという状態に陥ってしまっており。
>そして、90年代からの貯蓄は増加し続けるのに、
>「売上増加」「仕入れコスト削減」「市場占有率上昇」「利益増加」「投資」という
>モデルが、日本の場合、特に中小企業(国内専売)において、
>「市場全体による売上増加」→「純利益の増加」→「剰余金」→「不動産・資産への
>投資」という具合にまわっており。現在でも中小企業での不良債権の処理の難しさ
>(政治や地銀・雇用など)などによりふくれあがった設備が処理できない状況にある
>のではと思っています。

物があふれていることは確かですが、贅沢ではない物にアクセスできない人たちや住環境を中心とした生活環境に満足できない人は数多くいます。
それは、供給構造を変えなければならないと言うことであり、そのためには、付加価値分配構造の変化が必要です。(そうでなければ、財政支出で供給構造を変える統制経済を行うしかありません)

物があふれて必要とする人がいないのなら、みんなでもっと余暇を楽しめばいいだけの話です。

流れ図が実現できない理由は、上述及びこれまでの説明で代えさせていただきます。


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※ これまでの経緯

houさん転載:『CSR、重要戦略に――オランダ各社、取り組み進む(グローバル経営) 2003/06/16【日本経済新聞】』( http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/258.html

あっしら:『↑の政策を採れば、現在の失業問題は大きく解消され、デフレもけっこう緩和される』( http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/261.html

houさん:『Re: ↑の政策を採れば、現在の失業問題は大きく解消され、デフレもけっこう緩和される』( http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/263.html


あっしら:『「日本の人件費が相対的に高いこと」は何ら問題ではない』( http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/276.html

houさん:『Re: 詳しく言うと「日本の国内需要に頼る企業群の正社員の人件費が相対的に高いこと」が問題なのです。』( http://www.asyura2.com/0311/hasan31/msg/282.html


あっしら:『輸出&国内優良企業を先陣とした雁行構造が崩れているのが不況深刻化の要因』(http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/205.html


houさん:『国内専業企業には、上述したような“自立して”利潤を得る機会はないのです。←ここがよくわかりません』(http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/218.html

あっしら:『Re: 国内専業企業には、上述したような“自立して”利潤を得る機会はないのです。←ここがよくわかりません』(http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/222.html

houさん:『供給=需要というのはGDP=GDEということですか?』(http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/241.html

あっしら:『違います』(http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/250.html


に続くものでした。

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